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HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第七章 六鹿と四蛇
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7-10

 村に留まった又旅には、やりたいことがあった。

 マツから、飼育していた憑き物を譲り受け、エノキの家で憑き物との共同生活を始めたのだ。マツはまた新しい憑き物を捕獲し、飼育を試みているらしい。


 又旅はその憑き物に喧々という名前を付け、眠るのも食うのも入浴するのも、共に行った。

 マツに捕まったばかりの時と比べて少しは落ち着いた様子の喧々だが、それでも初めは、檻の中で毎日のように暴れた。状況を理解して諦めるということができないらしく、長い間その様子だったが、時間をかけて少しずつ大人しくなっていった。


 喧々には頭部はなく、首の辺りが少し突き出している。そこに目と思われる黒いものが二つと、横に細長い切れ目ともとれる穴があった。耳の役割を担っているかもしれない。ただし、口は見当たらなかった。憑き物は食事をしなくても生きていけるようなので、作られなかったのかもしれない。

 喧々が大人しくなったのは身体が弱ったせいなのかと心配したが、試しに風呂場に放ってみたら、飛んで跳ねて大騒ぎだったので、そうでもないらしい。ものすごい勢いで又旅に頭突きをしてきたが、攻撃というよりも、自分でも何がなんだか分かっていない様子だった。一度出した喧々を檻に戻すのは大変な作業で、何度も破壊してしまおうか迷ったが、なんとか網を使って捕まえた。


 茶々が嫉妬するのには、困った。檻の前で喧々を挑発したり、又旅に意地悪なことをしたり、抗議の意思表示のつもりか、しばらく家に帰らなかったりした。

 茶々には悪いが、もうしばらく我慢してもらうしかない。


 又旅が喧々との仲を深めようとしている間に、四蛇とワロは、複数のワロドンを連れて無事に戻ってきた。

 又旅がほっとできたのもつかの間、しばらく各々の家に滞在すると、二人はまた待ち合わせて、旅立って行った。

 今度は、蒼羽隊が移送されていた方のイクチの巣穴を、庵霊院側へ行ってみるらしい。命の保証はなく、本当に庵霊院へ続いているのかも分からないため、又旅はひどく心配したが、数週間後、またしても二人は無事に戻ってきた。


 旅路は過酷なものだったらしく、成果を得られないまま途中で引き返してきたそうだ。しかし二人は諦めずに、間を開けてから、また挑戦した。二度目の挑戦も失敗に終わったが、三度目の挑戦で、とんでもないお土産を携えて帰ってきた。


 疲れ果てた様子の四蛇が背負って帰ってきたのは、同じ年くらいの女の子だった。


 三回目の挑戦で、二人はイクチの巣穴の端までたどり着いたそうだ。ただし、その巣穴は庵霊院と繋がってはおらず、ただの行き止まりだった。おそらく、庵或留が胎児の術で塞いだのではないかと思われた。


 肩を落として帰るしかない二人だったが、帰りがけに偶然、動く台車に追い抜かれたらしい。その時に運ばれていた蒼羽隊を、四蛇が思わず引っ張り下ろしたのだという。

 蒼羽隊へ引き渡す前なら、家族の元に返せるかもしれないと思い、とっさにやったことだったが、四蛇は既に後悔し始めているようだった。


 その女の子は、精神的にも体力的にも衰弱していた。怯えきっていて、食事や睡眠すら取れない様子だった。

 無理もないことだ。意識を取り戻したら、そこは真っ暗闇の中で、記憶もないのだ。そんな状態で、知らない男たちと何日も、裸足で歩かされたのだ。

 又旅はようやく眠った彼女を起こさないよう、慎重にベッドから離れた。可哀そうに思う。


 フッタチであるワロは、彼女の魂を見ることができる。


 彼女の名前はナツメというのだそうだ。

 ナツメには、又旅の口から、自分たちが知っていることを少しずつ説明した。信じてもらえるかは分からなかったが、巻き込んでしまった以上、そうするしかなかった。

 彼女が言葉を発することはほとんどなく、孤独や苦しみを感じるたび、忙しなく右手で左腕をこすった。それが彼女の癖のようだ。


 又旅は彼女がハカゼにならないよう、注意深く様子を見ていたが、一度落ち着いてからは、逃げ出したり泣き出したりせず、ぼんやりすることが多くなった。

 又旅は不安になったが、ワロによると元々そういう性格の子らしい。魂を見れば、彼女の人となりも分かるのだ。


 さらに、ワロが彼女の魂から得た情報には、驚くべき事実があった。


「顔と身体が違うんじゃ」

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