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HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第六章 句朗
56/124

6-2

『私たちは、蒼羽隊の出自の秘密を知っています』


 その文章が表れると、それを浮文紙に書くのを止めるよう、句朗は慌てて走り書きした。

 それから、蒼羽隊には、自分たちの出自に関することを知ると記憶が消えるような呪術がかかっているらしいと説明した。


『分かりました。先に確認したいのですが、古井の居場所は分かりますか?古井について、できるだけ詳しい情報をください』


 この質問には答えかねた。相手を信用できるだけの情報は、まだなかった。


『こちらも探しているんです。あなたは誰なんですか?』


『古井の身内の人間です。名前はまだ明かさないようにしますが、ヘビとでも呼んでください』


「ヘビ?」


 二人は顔を見合わせる。変な名前だ。


 返事に何を書くべきか、二人は悩んだ。相手は重要な情報を持っている可能性があり、やり取りを繋ぎ留めたい気持ちはある。

 ただし下手に情報を渡して相手に優位に立たれる可能性もあるし、相手が名法師側の人間で、古井や自分たちが危険に晒されるという最悪の可能性もあるかもしれない。

 こちらの迷いを受け取ったのか、ヘビが先に文章を書いた。


『油隠で一番の解呪の呪師が、知り合いにいます』


 もしそれが本当だとしたら、喉から手が出るほど欲しい情報だ。

 ヘビはそれから、その呪師を連れて来るので、どこかで落ち合わないかと提案してきた。

 二人は十分に考えた後、約束はできないと返事をした。これ以上ない話だが、あまりに都合が良すぎる。指定された場所に、のこのこと出ていくには、相手の情報が足りなすぎる。


『たとえあなた方が拒否しようと、拉致してでも解呪します』


 意外にも、挑発的な返事が来たので、二人は困惑する。相手の目的が、よく分からない。

 素直に、『あなたの目的は何ですか?』と書いてみたが、今はまだ話せないとのことだった。

 ヘビと名乗る相手は、本当に古井の身内なのだろうか。解呪の呪師を引き合わせるというヘビの言葉を信じてもよいのであれば、強力な味方になるだろう。この件については十分に考える必要がありそうだ。


 ヘビへ明確な返事をしないまま、二人はシャグという街を目指していた。


 新しい方の浮文紙には、『あなた、誰?』『入と句朗です』のやり取りの後、返事は来ていない。入が相手の文字に見覚えがあると言っていたが、結局思い出せなかったようだ。こちらの情報だけ渡して、相手が誰なのか分からないままなのは居心地が悪いが、仕方がない。


 今回の任務は、シャグに常駐している蒼羽隊と短期間交代することと、憑き物やノウマの被害者と交流する慰問会に参加することだった。


 シャグは、マルバの宮から少し離れたところにある、海に近い街だ。その海の向こうは、布雲という土地らしい。シャグは布雲からの旅人をたまに見かけることができる、珍しい街だと聞いていた。


 マルバからシャグへ向かう道中、大勢の憑き物に出くわしたところ、向こうに常駐している蒼羽隊が迎えに来た。二班で協力し、すべての憑き物に甘依の術がかけられた。


 桂班は蒼羽隊の宿舎へ案内された。今日は夜まで、自由な時間を過ごせる予定だ。

 宿舎に荷物を下ろすと、入は句朗を街へと誘った。シャグはマルバの宮ほど栄えているわけではないが、句朗は、なんとなくシャグの方が好きだと思った。雑多で、どこかほっとする雰囲気がある。

 仕事に備えて、街の外周の様子をまず確認した。それから大通りを歩き、最後に「面白い店がある」と言う入に連れられて、とある店に入った。

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