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写真には、今より少しだけ幼い入と、古井が写っていた。古井は黒髪をあごのあたりで切りそろえている、背の高い女性だ。当然、見覚えはない。
句朗には、入に訊きたいことが山ほどあったが、まずは、句朗が拒絶したため聞けていなかった、入の説明を先に聞くことにした。入はお茶を淹れながら、「話、ちょっと長くなるよ」と言った。
ベッドに横に並んで腰掛けると、入は説明を始めた。
「私と句朗が青い手記の書き換えを疑うようになったのは、古井の影響なんだ。元々古井が、個人的な事情から蒼羽隊の身元を調べていて、名法師、リア、ヨアの三人が何か隠し事をしていると思っていたみたい。理由は詳しく覚えていないけど、白紙に返るのも事故ではなく、名法師たちの仕業だと考えてた」
「どういうこと?」
「名法師たちが、蒼羽隊の身元について何か隠し事をしていて、蒼羽隊がそれを知ってしまったら、呪術で記憶を消されている。それが白紙に返るってことだと、古井は考えていたみたい」
「蒼羽隊の身元って、白い手記ってやつに書いてあるんだよね?」
「本当にそんなものがあるならね。蒼羽隊に所属する人間は、記憶に残る形ではそれを見たことがないはずなんだ。まあとにかく、古井はそういうふうに考えてた。もちろん、そんなことを考えているとバレるのはまずいから、そういう話を表ではしていなかったけどね。私と句朗は、はじめ好奇心だけで古井の話を聞いていたんだけど、名法師たちの胡散臭さには気づいていたから、あながち妄想ではないんじゃないかと話していたんだ」
「名法師たちの胡散臭さ?」
「例えば、朱羽隊から蒼羽隊に入りたいと志願している人について、記憶を消せないという理由で入団させないという話がある」
「どうして記憶を消せないの」
「既に蒼羽隊や本部に知り合いがいるから、記憶を消すことで覚悟を証明できないだとか、誰が聞いても納得できない理由だよ。人手は多いに越したことはないのにさ。あとは、ノウマを殺そうとしないことだね」
入は話を中断し、飲み物を口に運んだ。
「憑き物はノウマが操っているとされているでしょ。それにノウマは数えきれない人をハカゼにして命を奪ってる。今の蒼羽隊であれば、多少の犠牲は出るかもしれないけど、みんなで戦えば、ノウマ一人くらい殺せるはず。でも、ノウマが現れるといつも撤退命令が出るんだ」
確かに、それはおかしい気がする。
「話は戻るけど、青い手記の手が加えられた部分を確認できれば、名法師たちが何を隠そうとしていたのか、分かる可能性があるというわけ」
「なるほどね。そしたら、ちょうど僕が白紙に返ったわけだ。青い手記の書き換えを確かめる手段はあるの?」
「ここからが、やっと本題。古井は、今みたいに私たちのどちらかが白紙に返った時に備えて、青い手記の写しを作っていたんだ。それは古井が持っていたんだけど、句朗が白紙に返った時に古井も逮捕されちゃったから、困り果てていたんだ」
「その写しがどこにあるのか分からないってこと?」
入がこっくり頷いた。
「逮捕されたのは、どうして?」
「古井は……自分の目的のために、名法師の屋敷に忍び込んだんだ。それで捕まった」
入の言葉の歯切れが悪くなった。
「僕が白紙に返ったのって、同じ時なのかな。古井さんと一緒に、僕も何かを知って、記憶を消された。そういうこと?」
なぜか、入の顔色が急に変わった。
「その話は、また今度の機会ね」
句朗は口を挟もうとしたが、「話すと長くなるし、今は体調が悪いから」と入がそれを遮った。そんなばかなと思ったが、本当に具合が悪そうに見えたので、口をつぐむ。
「それで、古井の持っていた写しを探したいんだ。古井の荷物が残っているかは分からないけど、リオコなら何か知っているかもしれない」
「僕、あの人は信用できる気がするな」
「私も」




