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HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第八章 四蛇と句朗
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8-14

「次は私ですね」


 憑き物は解呪されたことを正直に言ったのだ。乞除は安堵した。


 こちらが促す前に、ノウマは乞除の足元に横になった。

 乞除はノウマにかかった、二つの呪術を解呪した。


 まずは魚冥不による幻覚の呪術。これが解呪されれば、人間が元の姿に見え、言葉も分かるようになるだろう。

 また、術をかけられる以前のように、魂も見えるようになるだろう。


 それからスムヨアによる記憶を消す呪術。蒼羽隊と同じように、真実を知ったら記憶が消えるように呪術がかけられている可能性があった。

 又旅や乞除のことを覚えていない様子だったため、少なくとも一度は消されているはずだ。消えた記憶は戻らないだろうが、解呪する必要はあるだろう。


 解呪が終わり、乞除はそれをノウマに告げた。ノウマは身体を起こしながら、仮面をはぎ取る。

 その顔は、間違いなくヘドリアだった。

 地面に座ったまま、乞除の顔を見て、それから倒れている四人を見た。


 彼女は左手をゆっくり上げたかと思うと、左目を覆い、右目だけで何かを見ている。


「あ……ああ……」


 ヘドリアは言葉にならない声を出し、呆然とする。


 賢い子なのだろう。この短い時間で、全てを理解したのだ。又旅の話が真実だったこと。それだけならともかく、自分の犯した罪にまで、すぐに気づいたのだろう。

 乞除は先ほどまでの不安とは、別の不安に襲われた。

 ヘドリアは、その罪の重さに、耐えられるだろうか。


「まずやることがあるんじゃないか」


 乞除はヘドリアを促す。

 慰めたり親切にしたりするのは苦手だ。さっさと又旅を起こさねば。幸い、憑き物たちは大人しく見守ってくれている。


 ヘドリアは狼狽しながらも、乞除に導かれるまま又旅のところへ来て、ハカゼの治療を始めた。乞除はヘドリアと親しかったわけではない。彼女をよく知る又旅の話によると、ヘドリアは庵或留やどんことは異なり、繊細な心の持ち主なのだそうだ。このままでは、彼女がハカゼになってしまうのではないかと思った。


 又旅の治療が終わると、乞除は彼女の頬を叩き、「はよ起きるんじゃ」と怒鳴った。


「は……なん……上手くいったのか?」

 又旅はようやく状況を思い出し、言った。


「それどころじゃない。ヘドリアを、繋ぎとめてやってくれ。わしには向かん」


 又旅はその言葉と、ヘドリアの顔を見て察した様子だった。ヘドリアは隣の茶々の治療を始めている。今はやるべきことが明確にあるから気が紛れているものの、自分がハカゼにして殺した人間のことを、まともに受け止めようとしたら、ハカゼになってしまうかもしれない。

 又旅は自分の無計画さを悔やんだ。ヘドリアを解呪さえすれば上手くいくと思っていた。こうなることは、当然予測しておくべきだった。


 四人分の治療が終わると、又旅は「しばらく二人にしてほしい」と告げ、ヘドリアをどこかへ連れ去った。ここは彼女に任せるのが良いだろう。


 四蛇は一瞬だけ、ヘドリアの素顔を見た。人間のものとは、かけ離れていた。皮膚がまだらで、ところどころ灰色になっている。センポクカンポクと人間との子なのは間違いないだろうが、上手く調和しないまま、それぞれの特徴が顕著に残っているような、そんな感じだった。


 四蛇は、地面に落ちたままのノウマの仮面を拾う。薄っぺらい。その薄さを確認することで、恐怖を克服できるような気がした。


 又旅がヘドリアを落ち着かせている間、佐治と、初めに解呪された憑き物が他の憑き物にも説明をした。

 おずおずと進み出た憑き物がいたため、乞除は一体ずつ解呪を進めた。


 又旅が戻ってきて、ヘドリアの様子を伝えた。急激な心労により、体調を崩し、眠っているそうだ。これから、ここにいる憑き物たちに説明の必要があると言っていた。

 まだ先のことは考えられていないが、ヘドリアは自分たちに、全面的に協力すると言ってくれたそうだ。


 山の麓で待っていた句朗は、落ち着かない様子で空を見上げた。

 木偶が、彼の膝の上に乗ってくる。中を開けて四蛇からの知らせを呼んだ句朗は、ヘドリアのことを思った。


 彼女のことは知らないが、自分の手で人を殺めていたのだと知った時、自分だったらどういう気持ちになるだろうか。


 手の中で、木偶が震える。四蛇はそれを強く握っていたことに気づき、力を緩めた。

 それから鞄から上着を取り出し、自分の肩にかけた。

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