第七話 入試試験と合格発表
アラバスター学院の前に立つと目に映る景色は歴史のある素晴らしい建物です。
……アラバスター学院に入ると、入試試験会場の看板が見えた。
(私、カールトン殿下しか知り合いいないのよね…お兄様とクリスチャン殿下もいるから大丈夫かなぁ?)
アラバスター学院の入試試験会場です。
大学の教室のようだ。
従者とメイドは教室の後方に控えた。
アラバスター学院は、国が管理経営する、典型的なエリート学院である。身分に関係なく、平等に教育を受けることができる総合学院です。騎士・魔法・商業・薬師・領地経営・魔道具等々、総合学院では、自分の学びたい選択科目を選んで学ぶことができる。クリスタルは基本学科の魔法科を軸にして選択科目を選び学ぶつもりだ。
魔法科の試験内容は筆記試験と実技試験。
予定の時刻になり、試験官が試験会場に入ってきた。試験官が前列の生徒に試験問題を渡していく。試験問題を前の者から後ろの者に渡していく。
「試験問題がない者はいるか?………いないようだな。では、はじめ!」
一斉に試験問題に取り掛かる。筆記試験は問題なく回答を埋めていくことができた。周りを見渡すとなかには考え込んでいる者がちらほら見えたが、大半の者は問題なさそうだ。
「はい、そこまで!」
「次は実技試験だ。実技試験は訓練場に集合!」
教室から訓練場に移動を始めた。実技試験は自分の得意な初級魔法を放って的に当てる。其の為、実技試験では相手の力量は分かりづらいと言われている。名前を呼ばれた学生が的になる大剣の前に立ち、試験官が合図すると初級魔法を放つ。魔法を放つと花火のように美しく見える。………次は、クリスタルが呼ばれ大剣の前に立った。周りからの期待を込めた声援が聞こえてくる。
「クリスタル様、こっちを向いてください」
「クリスタル様、頑張ってー!」
試験官の合図でクリスタルは氷魔法『アイス』を放ち、飛礫が大剣を壊した。その衝撃波はすざましかったが、訓練場を壊すことはなかった。試験官は魔法の衝撃波で「あれー」と、どこかに飛んで行った。
「カールトン殿下どうしましょう! 試験官が飛んで行ってしまいました」
「うん、物凄く飛んだね」
カールトン殿下はクリスタルの魔法の衝撃波を恐ろしく感じた。
「あの、試験官の方は大丈夫でしょうか?」
と、他の試験官に聞いてみる。
「教師が向かいましたから、心配はいらないでしょう」
「そっ、そうですか? 後でお見舞いに行きます」
「クリスタル大公令嬢、それも必要ありませんよ」
「では、私の代わりに「謝っていた」とお伝えください」
「わかりました。合格札です」
「ありがとうございます。カールトン殿下先に行きます」
他の試験官から合格の札をもらい訓練場から移動した。
飛ばされた試験官を心配して教職員が試験官のところに集まってきた。
「クリスタル様は大剣を壊しました。あの大剣はアダマンタイトで出来ているのですよ。それを壊してしまうとは恐ろしい魔法威力です。試験官を魔法の衝撃波で吹き飛ばし骨を折るとは末恐ろしいですね。学院長から「クリスタル様を傷つける発言はしないように」と通告がありましたので素知らぬ顔で対応してください。試験官を保健室に運び治癒してもらいます」
クリスタルに見つからないように保健室に運び込んだ。
次は、魔力量検査である。
(測定器壊さないかな?)
「クリスタル・ロス・コールマン大公令嬢、カールトン・ロス・ミスティーナ王子、こちらに来てもらえますか?」
「はい」
「はい」
(魔力量検査どうなるの?)
カールトン殿下と合流しついて行く。
学院長室に入ると…
「君たちは魔力量検査、受けなくてもよい」
「「えっ!!」」
同時に声を出した。
「どういうことでしょう?」
「クリスタル様の魔力量は陛下から「測定器を壊す恐れがある」と、お聞きしました。「クリスタル一人だと、何かと面倒だろうからカールトンにも付き合ってもらえ」とのことです。クリスタル様とカールトン殿下は口頭でお願いします」
水晶のような円柱の形をした測定器を前に、頭を抱えながらカールトン殿下は、
「78000です」
クリスタルも、
「360000です」
カールトン殿下と学院長は、驚いた表情でクリスタルを見た。
「なるほどそうですか。360000じゃ壊れます。100000まで測れる測定器ですから…カールトン殿下も素晴らしいのですよ。クリスタル様を除けば学院2位ですから!」
クリスタルはカールトン殿下を見て微笑んだ。
「陛下には「クリスタル様の、ステイタスを見せて頂けませんか?」と、お願いしたのですが「余が、確認してある。信用できぬのか!」と、言われてしまいました」
「私は見せても構いませんよ」
「良いのですか?…………いや、止めておきましょう」
「クリスタル駄目だよ。陛下が学院長に見せる許可をだしていないんだ。何か理由があってステイタスボードを見せないのだと思う」
「えっ、あっ、そうです」
「クリスタルしっかりしてよ。僕も理由はわからないけど陛下が身内のクリスタルを守らない訳がない」
「はい、反省しています」
学院長が、
「それでは、教室に行きましょう」
クリスタルとカールトン殿下は仲睦まじく教室に戻った。
……続々と生徒が教室に戻ってくると、試験官が、
「試験はここまで! よく頑張りましたね。合格発表までゆっくり休んでください」
試験官は書類を"トントン"と音を立て整えると教室から出て行った。
無事試験が終わり、カールトン殿下とクリスタルは教室を出ると、その後をクリスタルの従者とメイド、カールトン殿下の護衛二人が後からついて教室を出た。
……カールトン殿下と入学式で会う約束をして屋敷に戻った。
スタンリーとオーウェンとクリスタルは大公騎士団長と副団長・執事長・メイド長・料理長・御者長・庭師長を連れて書類審査をするために王城に来ていた。それぞれの書類審査室に入り、陛下・クリスチャン殿下・カールトン殿下を支える優秀な人たちに、まず挨拶から始めた。沢山の応募者がいて、まず、合格ラインの応募者を参考に審査基準を決めた。その審査基準より劣っているが一つでも秀でたところがある者は合格者と別にして、スタンリーに見てもらう予定だ。慎重に応募者を見て行く。書類審査は数日かかりそうだ。
試験の日から数日立ち書類審査もあと数日で終わる頃、合格発表の日を迎えた。
「お父様、お母様行ってきます」
「オーウェン、頼んだよ。我は書類審査に行っているから、合格を確認したら王城に来てくれないか? 連絡は念話で頼むよ!」
「わかりました。行ってきます! ……クリスタル行こうか」
「はい!」
馬車に乗ってアラバスター学院に向かう………
合格者が張り出されていた。オーウェンと名前を探すが見当たらない。
「首席合格だよ。クリスタル! 魔法科Sクラスおめでとう!」
まさか首席と思っていなかったので他のところばかり探していた。
「ありがとう!?」
「カールトン殿下は二位ですか……魔法科Sクラスです」
「心配ないよ。カールトン殿下は、気にするような方ではない。さぁ、帰ろう。父上と母上に報告してお祝いしよう」
「はい! あっ、王城に行くのでは?」
「あー、書類審査か……」