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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第四十五話 王子ではなかった者


 オルコット領の国境境界線近くに転移して、国境警備隊に出国審査を行う場所に案内してもらった。そこにはアルフィー辺境伯がいて快く出迎えてくれた。早速、王族用の出国審査室に案内され、あっという間に出国審査は終わった。フリットウィック王国のサンダース領にも入り、王族用の入国審査室で待っている。

「ミスティーナ国の王子様も、ギロリー王子の死刑執行を見にいらしたのですか?」

「そんなところだ。何時から始まる?」

「我々も朝としか聞かされていません」

「そうか」

「はい、終わりました。入国審査はこれで終わりです」

「フリットウィック王城までの地図は、何処で購入できる?」

「この建物をでたところに店にあります。ご案内します」

「悪いな」

「いえ、いえ、とんでもないです。昨日から、他国の重要人物がフリットウィック王国に入国しています。皆さんギロリー王子の死刑を見に来ているようです」

「ギロリー王子は、どのような王子なのだ」

「まぁ、死刑になるようなお方でした」

「何をやらかした」

「あくまでも噂ですが、殺人は何度もやっていると思います。教会預かりになったのも、子供の頃友達を殺してしまったからだと、噂になっていました」

「子供の頃に…」

「はい、「ギロリー王子を見たら逃げろ」という歌もあり、子供たちが悪いことをすると、平民たちは歌って聞かせていました」

「そこまで、恐れられていたのか?」

「はい、ギロリー王子が国王になるようなら、ミスティーナ国に逃げようと思っていました。ここだけの話ですよ。これが地図になります」

「ありがとう。帰りも出国審査頼むよ」

「はい、気を付けて」

 クリスタルは安心したように、

「あっという間に終わりましたね」

 カールトンも、

「そうだね、でも、他国も見に来るとは…他国でも支配薬売っていたのか?」

 オーウェンも、

「他国も、僕たちと同じ目的かもしれない」

 クリスタルは地図を手に、

「他国もギロリー王子ではないと思っていると…」

 オーウェンも地図を見ながら、

「あぁ、そうだ」

「お父様、お兄様、カル、この辺りはどうですか?」

「クリスタル、カル、店主にそこから王城までどのくらいかかるか聞いてくる」

 オーウェンは出て行った。

スタンリーは三人を見ながら、頼もしくなったものだと安心していた。


 クリスタルは、創造神様の話を思い出していた。

(……空間魔法は、アイテムボックス・飛行魔法・転移魔法・時間魔法などだね。……………………頑張ってね)

(空間魔法は…………あっ、時間魔法があったわ)


 オーウェンが戻ってきて、

「王城まで五分で行けるそうだ。クリスタル地図みせて! ここは人通りが少なくて馬車も止めやすいそうだ。ここにしよう」

「はい、お兄様、カル、間に合わなかった場合は、時間魔法を使います」

「その手があったかクリスタル! 僕も忘れていたよ。すまない」

「お兄様が、謝る必要はありません。本人が忘れていたのです。創造神様を思い浮かべて思い出したのです」

 私たちは人通りの少ない場所を探して、

「お父様、お兄様、カル、皆さん、私の近くに集まってください。転移します」

 クリスタルの周りに集まったのを確認して、

転移魔法『転移』

 フリットウィック王城の近くまで転移したクリスタルたちは馬車をアイテム腕輪からだし、カールトンはアイテムボックスから馬をオーウェンも馬を出してフリットウィック王城に向かう。

 フリットウィック王国も観光したくなるような素敵な街並みだったが、路地裏に入ると闇に誘われそうな気配が漂っていた。

 フリットウィック王城の門番にミスティーナ国王の親書を渡し、応接室で待機していた。


 フリットウィック国王が入ってきて、

「スタンリー大公、カールトン王子、オーウェン大公令息、クリスタル大公令嬢よく来てくれた。ギロリーの死刑執行を見にいらしたのですね」

 カールトンから、

「陛下ご無沙汰しております。ご健勝でありますか?」

「よい、堅苦しい挨拶はなしだ。ミスティーナ国には不出来な息子が迷惑をかけ申し訳ない」

 オーウェンも挨拶をする。

「洗礼のお披露目パーティー以来ですか? ご健勝でなによりです」

 クリスタルも続いて、

「陛下、ごきげんよう」

「うむ、王弟殿下のご子息、ご息女であるな。よく似ておるな。スタンリー大公」

「陛下お久しぶりです。今日はお願いがありまして…オーウェン」

 オーウェンが、

「確認の為、ギロリー王子との面会は叶いますか?」

「なぜじゃ」

「はい、犯人の顔はここにいる三人とも見ております」

「そうか、最後の慈悲か」

「もしも、違っていたら…と思いまして」

「うむ、だが、フリットウィック王国でも民衆のいる前で人を殺しておる。死刑は免れないのだ」

「そのようなことが…」

「そうだ。顔を見るくらいなら構わんか?」

「ハッ、」

「そのように手配します」

「陛下、ありがとうございます」

「では、執行刑場で会おう。後は頼んだぞ」

「ハッ、長旅でお疲れでしょう。お部屋をご用意していますので、ご案内いたします」

「ありがとう」「ありがとうございます」「うむ」


≪兄さん、巧く行きましたね≫

≪そうだな。これで鑑定できるな≫

≪はい、ついでにDNA鑑定して親子か鑑定してみます≫

≪出来るのか?≫

≪出来るの?≫

≪先程、陛下のDNA鑑定は済ませました≫

≪いつの間に≫

≪カル、お兄様、お部屋にバリアと盗聴防止を張りに行きますから…合言葉はDNAです≫

≪わかった≫



 それぞれの部屋にバリアを張り終え、生活魔法『クリン』で躰を清めてメイド騎士に身支度をしてもらい昼食用のドレスに着替えた。ノック音が聞こえドアを開けると、オーウェン、カールトンと衛兵が立っていた。


「クリスタル、ギロリー王子の面会に行くよ。父上は陛下と話があるようです」

「わかりました」

 衛兵の後をついて行く。フリットウィック王城は、趣味の良い調度品が飾られ、古き良き時代を彷彿させる壮麗な王城だ。

 今まで歩いた王城と異なる場所に来ると、ここからが、捕らえられた者たちがいる場所だろう。やはり、牢がある所はどの国も頑丈につくられている。地下に続く階段を降り、他の牢とは様子が違う部屋があった。その中にいるようだ。


「こちらにギロリー王子が入っています」

 衛兵が鍵を開ける。クリスタルは三人だけは入れるバリアを展開した。

 オーウェンがギロリー王子に声をかける。

「おはよう。ギロリー王子」


 クリスタルとカールトンは鑑定を始める。

『鑑定………………

『名前』ギロリー

『種族』人間

『性別』男性

『年齢』二十八歳

『称号』転生者

『レベル』36

『魔力』40000

『体力』3600/4000

『能力』B

『魔法』闇魔法・変身魔法

『スキル』弓術・加速・隠ぺい・錬金術

『加護』創造神に嫌われた者

 ………………鑑定終了』


 クリスタルは、カールトンに念話する。

≪鑑定映像を見せる。やはり錬金術がありました。名前もギロリーだけ、称号にフリットウィック王国第一王子とありませんでした≫

≪僕も同じ、それに、転生者だったのか≫

≪私の前世の国には、サイコパスという反社会的人格の持ち主がいたのです。前世では病気と診断されていて、罪を犯しても精神病院に送られ病気を抑えることしかできませんでした。ギロリー王子はサイコパスかもしれません≫

≪そうか、気になる〈創造神に嫌われた者〉とあるが…≫

≪ありますね。創造神様に嫌われるようなことをしたのでしょう≫

≪よっぽどだね≫

≪はい、DNA鑑定してみます≫


『DNA鑑定…………フリットウィック国王と親子関係がない』


≪陛下の子供ではありません≫

≪えっ、誰の子だよ≫

≪陛下は知っているのかしら≫

≪死刑、陛下は知っているのではないか?≫

≪お兄様、ギロリー王子に間違いありません。しかし、陛下の息子ではありません。それと、ギロリー王子は転生者です≫

≪わかった。ご苦労≫

≪こっちも成果があった。学院に行き抵抗した学生を殺して、その他の学生たちを巧みに誘い、支配薬漬けにして、大人の世界を味合わせたと言っていた≫

≪大人の世界ですか?≫

≪学生たちを助けることができず悔しいが……これで用は終わったな≫

≪はい、残念です≫



 フリットウィック王国の刑場は一棟の建物があり、その建物の前方に四角形に柵を立てていた。柵の中央に処刑台が置かれ、観衆はその柵の外側に立ち処刑を見る形になっていた。王族や来客者は一棟の建物から立会います。今日の罪人は、フリットウィック王国第一王子ギロリー王子である。人々の興味がない訳がない。しかし、民衆の前で人を殺すとは、自分を見失っているとしか思えない。何か、引き金になる出来事でもあったのではないか? スキルに隠密もあり、変身魔法も使えるギロリー王子らしくない。何かずれているような、何とも言えない感じがした。


 カールトンとオーウェンとクリスタルは部屋で待機していた。スタンリーは刑場にある建物の中に案内され刑の執行を待っていた。ギロリー王子が衛兵に連れられ処刑台の横に立った。それに合わせてゴイル国王も建物の中に入ってきた。


 法理大臣がギロリー王子の罪状を読み上げていく。その中には、アラバスター学院でも殺人を犯し、コールマンパラダイス領で見つかった死体の中に、アラバスター学院の学生も含まれていた。その者たちに支配薬を飲ませ支配すると、乱交や殺し合いをさせていたことが語られた。子供たちは、乱交の結果、生まれた子供たちであった。子供たちをどのように殺害したか聞いた後、全身がザァーと粟立った。フリットウィック王国内でも、数々の殺戮を繰り返していたことがわかった。そして、ミスティーナ国第一王子クリスチャンに支配薬を飲ませようとしたことも罪状で読み上げられた。


 陛下が立ち上がり、

「平民ギロリーの罪名は、死刑!」


「「「「「「「「「「ウォ――――!!!」」」」」」」」」」


 群衆から、

「ヤッター!」「やったぜ!」

「あんな奴が国王になってみろよ。ころされるぞ!」

「あぁ、陛下ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

 民衆は大喜びで陛下に感謝していた。


 法理大臣が、

「死刑執行人!」


 死刑執行人が、ギロリーを処刑台に固定する。


 ギロリーが、

「父上、この茶番はいつまで続くのです?」

 陛下が前に出て、

「処刑が終わるまでだ」

「母上はどうしたのです?」

「お前の母は、先程、毒を飲んで自害した」

「なぜです。父上、母上を殺したたんだ!」

「お前に父と言われる筋合いはない! お前の母と護衛の間に生まれた子供がお前だ。お前の母と私は性交渉を一度もしていない。お前たちの企みは知っていたからな! 年月はかかったが…余の子供はすくすくと育っている。お前とはお別れだ! 法理大臣!」


「おい! ダレンはどうした!? ゴイル! おい、何とか言えよ!」


「死刑執行人! ………死刑執行」

 執行人の手がレバーから離れた。


 その時、あちらこちらから魔法攻撃が始まった。あまりの攻撃でバリアが壊れそうだ。

 スタンリーは念話で、

≪クリスタル今すぐ刑場に転移してバリアを張ってくれ≫

 クリスタルは急いで転移してバリアを張り強化を付与した。

 攻撃をしている者を鑑定してみると支配薬に侵されていた。

「支配薬ですか?」

 クリスタルは創造魔法で魔法を発動した者にその魔法を返す魔法を創りだした。

創造魔法『リターンオリジナル』

『リターンオリジナル』を発動。

 バリアに当たっていた魔法は、バリアの手前で折り返し発動者の元に帰っていく。その魔法を追跡して拘束していった。

 首謀者はギロリーの弟ダレンだった。今回の攻撃は支配薬を飲まされた者の集まりだった。ダレンも支配薬に侵された挙句、陛下の子供ではなかった。

 ダレンはその場で処刑された。




 ++

 ギロリーの前世は、子供の頃、何度も何度も母親に殺された。母親はギロリーの首を絞めて殺した。息をしていないことを確認すると、心臓マッサージと人工呼吸をして生き返らせた。そんなことを繰り返しされ、生き延びてきたのだ。この経験は、ギロリーに衝撃を与えた。

 最初の殺人は五歳、近所の赤子の首を絞めて殺した。幸い、事故として処理された。母親だけはギロリーが殺したと気づいていた。母親はギロリーを精神病院に通院させていたが、診察の際、母親がギロリーに行っていた罪が、露呈し刑に服すことになった。一人取り残されたギロリーは、孤児院に行くことになる。ギロリーは孤児院でも殺人を繰り返した。孤児院にも居場所がなくなり、ギロリーは病院送りになった。そこでも殺人を犯す。そんなギロリーは、精神病院の一室で一生を終えた。

 それを見ていた創造神は、母親との出会いがなければ、(ギロリーは精神病院で一生を終える運命ではなかったろう)と慈悲を与え、前世の記憶を消しダリア球に連れて来たのだ。だが、彼は変われなかった。悲しい怪物がこの世を去る。

 ++




 ダリア球で生きて行く為の礎はできた。

 まだ、カーターは捕えていない。カーターの学園がどのように、クリスタルたちに関わってくるのか……

 罪のない人が亡くなり…学院の学生も亡くなって、支配薬の後遺症で苦しんでいる人達が沢山いる。もう、そのようなことはさせない。私たちが守ってみせる。これからの学院生活は沢山の仲間と誰も傷つかず笑顔でいられる学院生活を送ろう。どんな戦いにも仲間と力を合わせ、協力して挑んでいくことを心に決めた。人々が幸福に過ごせる国を目指して!



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