第四十四話 フリットウィック王国
スタンリーに地図を用意してもらい、フリットウィック王国の転移先を探す。
「フリットウィック王国はここだ」
クリスタルは好奇心を発揮させ、
「他にも沢山の国があります! 帝国はないのですね! どの国も~王国です。国としての規模が同じということでしょうか?」
スタンリーは、
「帝国とは?」
「はい、このダリア球の国を征服や併合によって、帝国の支配下にすること。前世では大昔の話ですけど、そういう時代もあったのです」
「そうかぁ、心配はない! 創造神様が創られたダリア球はダリア球ができた時に国々に分け隔てなく平等に土地を与えた。それは創造神様がそのように創ったのです。そして、すべての国が創造神様を国教として国造りをしている。ダリア球の歴史は学んだね? まあ建前はそうだけど、長い年月の間に争いを好む国も出てきていたよ。今は治まっているがね」
「はい、学びました。地球では理解していても、欲望を抑え切れない者がいました。私のように転生者がいて、その転生者は〈地球の昔の概念を持って転生してきたら〉と心配しています」
「転生者はミスティーナ国では、クリスタル一人だよ」
「他国には転生者、いるのですか?」
「それは、わからない。クリスタルのことも他国には秘密だからね」
「あっ、はい」
スタンリーは話を変え、
「今は、フリットウィック王国の地図を見ようか?」
「はい、すみません! お父様」
「気にするな」
オーウェンが、
「転移場所をどこにするかですね」
クリスタルが、
「出入国審査は受けて入った方がいいですよね」
オーウェンは忘れていたのか、
「出入国審査せずに入国すると、痛くもない腹を探られるな! フリットウィック王国外に転移して馬車で入るか?」
クリスタルは、
「あの、入国手続きは何処でしているのですか?」
スタンリーが、
「クリスタルはミスティーナ国から出たことがなかったね。フリットウィック王国の国土と隣接している境界線が多いのは、アルフィー・サン・オルコット辺境伯が治めているオルコット領だ。ほんの僅か、境界線に隣接しているのはバーンスタイン領かオルコット領で出国手続きをし、隣国のサンダース領で入国手続きをして、フリットウィック王国に入る」
「ではお父様、オルコット領かバーンスタイン領に転移するのですね」
「今、バーンスタイン領には、捜索隊が出ているから行かない方がいいな」
「オルコット領に転移、出国手続きを終え、サンダース領で入国手続きをして、フリットウィック城の近くに転移しなければ間に合いませんね」
「ここにある地図は三年前の地図だからなぁ…街並みが変わっているかもしれないな。国境で購入することをお勧めするよ。クリスタル」
「はい! そのようにします」
その時、カールトンが参加して、
「王家の紋章が入った馬車を用意したよ! 王命親書も、もう直ぐ出来上がるから要望があるなら宰相に伝えて欲しい!」
クリスタルは日本人気質を出し、
「ゴイル国王に進物を持って行きますか?」
スタンリーが、
「本来なら必要ない。が、ホワイトダリアの美容系を用意するのはどうだ?」
「それいいですね。宣伝も兼ねて」
「はい、如何程ご用意しますか?」
「ん、国王、王妃、ダレン王子は王家に納めている商品を、愛人二人と愛人の息子には、貴族用の商品を用意してくれ」
「お父様、愛人の息子も貴族用でいいのですか?」
「あぁ、王位継承権はないからな」
「では、そのように包装します」
オーウェンが、
「父上、学院が始まるので直ぐに帰ってもよろしいのでしょうか?」
スタンリーも納得したように、
「だが昼食は避けられん。その後なら問題ないだろう」
「「はい!」」
クリスタルはカールトンに、
「明朝早いから、カルもコールマン城に泊まりましょう」
スタンリーがクリスタルに、
「クリスタル馬車を頼むよ。カールトンいいか?」
「叔父上、大丈夫です」
「クリスタル、イーストダリア邸に寄っていくよ」
「はい」
スタンリーは、護衛とメイドの事を考えていた。
そこにオーウェンが、
「あの父上、罪人がギロリー王子でなかった場合助けますか? ギロリー王子を発見したらこちらで取り押さえてミスティーナ国に連行してもよろしいでしょうか?」
「構わぬ!」
「僕はギロリー王子の得意な生まれつきの性質では、死刑を見に来ないはずがないと思います」
「ふむ」
「確信があります」
「よし、陛下にその旨伝えよう。安心して捕えてこい!」
「はい!」
オーウェン、カールトン、クリスタルはコールマン城で夕食を食べていた。
三人はあれこれと、ギロリー王子をどの魔法で連れ去るか意見交換していた。
先ず、オーウェンから、
「カル、クリスタル! ギロリー王子が身代わりなら助けようと思う」
「いいですね! 無実の罪で罰せられるのは良くありません」
「それから、ギロリー王子をミスティーナ国に連行することになった」
「捜索するのですか? 兄さん」
「執行刑場にいると思う」
「あー、「人の絶望する姿・壊れて行く姿を見るのが楽しい」と、言っていた王子だからですね」
「そう! 見ていない訳がない」
クリスタルは戸惑いながらも、
「ギロリー王子を捕らえるのですね?」
カールトンも自信があるように、
「偽物のギロリー王子も一緒に連行しますか? 兄さん」
「その方がやりやすいのだが……どう思う? クリスタル」
「一緒の方がいいです。土魔法のソーンバンドで捕えても、近衛騎士団が傍にいるとやりにくいですね」
「新しいバリアも必要かもしれない」
と、オーウェンは提案した。
クリスタルは、
「風魔法のハイランドガーデンは上空に転移でき、そのバリアの周りは強い風が吹き荒れていて、近衛騎士団や魔法騎士団が攻撃しても無効化できると思います。ハイランドガーデンのまま、ミスティーナ国に転移して連行しようと思いますが、どうでしょうか?」
カールトンが、
「問題は、偽物と本物をバリアの中に入れないといけないよね」
クリスタルが、
「土魔法のソーンバンドを改良して、対象の者を引き寄せる魔法にすればいいのでは? どうでしょう? 味方も引き寄せて、全員でミスティーナ国に転移します」
創造魔法『カァレェクトゥ』茨の茎で縛り対象の者を引き寄せる魔法を創りだした。
オーウェンが、
「その案で行こう!」
「「はい!」」
「明日は早いから、これくらいにして休もう!」
「「はい」」
「カル、足りないものはないか?」
「兄さん! アイテムボックスに詰め込んできました」
「そうか」
「お兄様、昼食会のメイドが必要です」
「そうだな、連れて行こうメイド騎士を。カルの第二近衛騎士団の中にもいたな?」
「はい、第二近衛騎士団にはメイドも執事もできる者がいます。多種多様な場面を想定して全近衛騎士団には必ず入れています」
「クリスタルもちろんコールマン大公騎士団にも配属されている。心配しなくていいよ」
「安心しました。お兄様、カル、おやすみなさい」
「「お休み」」
「あぁ――、お兄様、カル、アイテムボックスに生き物は入れていいのですか?」
「馬車はあるけど、馬が……問題だな。カル」
「創造神様の文献、文献…………ありました。お兄様」
「何々、空間魔法………あった! クリスタル、〈空間の中に収納空間を創り、生き物を育てることができる〉とある」
「私は収納空間を創って、馬が住みやすい空間にします。馬の手配できますか? お兄様、カル」
「兄さん王宮に行って手配してくるよ」
「僕も父上に話してくる」
早朝、アーライとエルザに起こしてもらい、お風呂に入れられて、ほんのり唇に紅をさしてくれた。昼食用のドレスと靴、装身具をアイテム腕輪に入れて、クリスタルは、ダンジョン仕様のワンピースとマント着て、ブーツを履いて朝食に向かった。朝食を済まし、スタンリーの元を訪ねると、コールマン大公家の馬車が用意されていた。
「クリスタル御者も騎士が務める。安心しなさい」
クリスタルはコールマン大公家の馬車をアイテム腕輪に入れお母様抱き着いた。
「お母様、行ってまいります!」
「スタンリー様、オーウェン、カールトン殿下お気をつけて」
「はい、母上!」「はい、伯母上!」
シアンが、
「クリスタル、僕も一緒に!」
「シアンはセシルとクレオと一緒にお母様とコールマン城を守ってくれないとダメでしょ?」
「分かっているけど………僕は」
「うん、うん、お願い! シアン!」
「うーん、わかった」
「皆さん、私の近くまで来てください!」
「「「はい!」」」「「「ハッ!」」」
「全員集まりましたね! 転移しますよ!」
転移魔法『転移』その場にいた者は、最初からいなかったかのように消えた。




