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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第三十九話 サロス


 オーウェン、カールトン殿下とクリスタルは中級ダンジョンの中で休憩をしていた。オークキングは倒せたがモンスター種族の頂点、キングとの闘いがこの後も続く。休憩を終え再び中級ダンジョンを進んで行く。


 ”ズー、ズズズー、ズー、ズズー、ズズズー、” ……オーウェンとカールトンは感知スキルを使い慣れていて、自然と感知できている。クリスタルは感知スキルを意識しないとまだ難しいようだ。

 ”ズー、ズズズー、ズー、ズズー、ズズズー、” ……初級ダンジョンのポイズンスネークのような気配を感じた。だが、ポイズンスネークよりも音が響き、地面が揺れた感じがした。そのモンスターはポイズンスネークキング! 胴周りが三メートルもあり、全長十メートルもある! 初級ダンジョンのポイズンスネークとは比べ物にならないほどの巨体だ。あの尻尾で攻撃されると露と消えるだろう。それに付け加えて皮は固く牙から毒を射出して巻き付いてくる、その巻き付きの力は計り知れない。飲み込める大きさも自身の体格の二割も大きな相手を飲み込めるのだ。


 オーウェンは皆に、

「僕たちには毒耐性があって死ぬことはないが、牙から毒を射出するから気を付けて! シアン、セシルは特に毒に攻撃されないように!」

 クリスタルは手を上げ、

「シアンとセシルに毒耐性付与しました」

「あっ、そうなの!? じゃっ、大丈夫かな!」

 オーウェンは、

雷魔法『サンダー』を放ち、ポイズンスネークキングの頭上に雷を落とした。

 巨体で強いと言われていたポイズンスネークキングは痙攣を始め、力弱く倒れてしまった。…………皆は呆気にとられた。雷魔法『サンダー』で、ポイズンスネークキングを一撃で倒せるほどの威力があると思っていなかったのだ。クリスタルとカールトンが一番驚いていた。

 そこに、オーウェンが、

「ポイズンスネークキングは、ホワイトベアと同等か少し弱い感じがした」

「そうなの?」心の中で、改めてそうなのかと納得した。

「カルも、そう思うだろ?」

「見てください! 魔法剣でなくても、簡単に首を斬り落とせました。でも、生きている時は、皮に強化魔法を掛けていたようです」

「そうだ。カル、良く気付いたな」

 カールトンは照れ臭そうに笑った。

 少しずつ、戦い方が様になってきたクリスタルとカールトンは先を急いだ。



 中級ダンジョンの奥に進むと、

 全長二メートル、翼開長七メートルの黒鳥キングだ!

 優雅に羽を羽ばたかせて近づいてくる。とてもかっこいい鳥だ。


 クリスタルは、

結界魔法『バリア』を張った。

 黒鳥キングの羽の振り幅が大きくなった途端、激しい突風が迫ってきた。バリアで何とかかわし、

 クリスタルも、

雷魔法『サンダー』を、放った。雷魔法『サンダー』が届く前に黒鳥キングは羽の矢を放ってきた。

 カールトンが、

結界魔法『ブレイズサークル』炎の結界を張り、羽の矢を焼き尽くした後、見事に雷魔法『サンダー』黒鳥キングに直撃した。     

 黒鳥キングもポイズンスネークキングのように、痙攣を始めると、焦げ臭いにおいとともに下に落ちてきた。

 オーウェンが近づいてきて、

「うん、よくやった。黒鳥キングの羽は人気があるから魔石と一緒に持って帰ろう! さぁ、次で終わりだ! 多分だけどホワイトベアとホワイトベアキングだと思う。気を引き締めて行こう!」

「「はい!」」





 ++

 サロスの母親は、小さい頃からスタンリーに憧れていた。隣国からアラバスター学院に入学したのもスタンリー見たさで試験を受けた。最初は、眺めているだけでよかった。眺めている内に、スタンリーと親しく会話している女の子を見ると、羨まし過ぎて激しい嫉妬を覚えた。そんな日々が続き、眺めるだけでは物足りなくなり、会話をするために近づいて行った。中々自分だけ会話に入れないでいると、内心に黒い嫉妬が育っていき、会いたい、話したい、触りたいと黒い嫉妬が心の中で渦巻いていた。それでも表立っては何もできず、ただ、同じ選択科目を選んで同じ教室の空間の中で一緒にいるだけで、その時はよかった。一年生が終わる頃には、スタンリーと恋仲になりたいと思うようになり、二年生の終わりに告白をした。スタンリーからは、「僕には婚約者がいる。僕は、その婚約者をとても大切に想っているから、君の気持には答えられない。」と、ハッキリ断られた。断られても、サロスの母親は諦めなかった。三年生になって、もう一度告白して断られ、四年生になっても告白したが恋心が叶うことはなかった。そんな時スタンリーの兄グレイソンが、婚約者候補選びを始めたことを知り、サロスの母親は路線を変え、スタンリーの兄グレイソンに目を向ける。グレイソンの傍にいれば、スタンリーと会える。その願いの為行動を起こした。サロスの母親は、婚約者候補選定試験に参加した。将来、王妃となる候補者の選定は厳しいものだった。サロスの母親は、ここでも挫折を味わうこととなった。それからというもの、グレイソンもスタンリーもミスティーナ国も、サロスの母親にとって憎しみの対象になり、年を重ねた年数分憎しみが深くなっていった。サロスの母親は、あの手この手を使って嫌がらせをしていたが、スタンリーやグレイソンの知らないところで、処理されていた為、スタンリーとグレイソンは知る由もなかった。また、稚拙な犯行故、捕まることはなかったのだ。そんなサロスの母親の親は、娘を哀れに思いながらも、適齢期になり婚姻させた。今思えば、サロスの母親の教育は稔ったのか? 教育のお陰で、サロスは犯罪者となった。その犯罪者の息子カーターは、母親の洗脳教育は免れたが、ギロリー王子と知り合ってしまった。何の因果か、危うい関係であるのは間違いない。




 エマの裁判から一週間後、サロスの裁判の日が来た。午後から裁判が始まる。

 裁判が始まる前にスタンリーは、今抱えている仕事を終わらせようと、執務室で奮闘していた。オーウェン、カールトン、クリスタルは中級ダンジョンに通っていた。中級ダンジョンにも慣れ、手際が良くなった。シアンとセシルは中級ダンジョンに行かず、大公騎士団に指導をしている。それぞれ今できることをして、サロスの裁判を待つ。


 クリスタルたちが、中級ダンジョンに向かっていると、スタンリーから念話が入った。

≪クリスタル、済まないが、裁判室にバリア張ってくれないか?≫

≪いいですよ。今から、行きましょうか?≫

≪頼む!≫


「お兄様、カル、裁判室にバリア張りに行ってきます」

 カールトンは、疑問符が浮かんだような顔をして、

「バリア? 何かあったのかな?」

 クリスタルは、カールトンを見て、

「理由は聞いていないけど、行ってくるわ! バリア張ったら、ダンションに行くわ!」

「わかった。待っているね!」

「行ってきます!」

 クリスタルは転移して消えた。


 クリスタルはコールマン城に転移して、スタンリーのところに向かった。

「お父様、只今、戻りました」

「悪いな、クリスタル」

「何か、ありましたか?」

「いや、念のためだ。ギロリー王子の配下が、手を出してくる可能性が出てきたからな」

「そんな情報があるのですか?」

「バーンスタイン領の国境警備隊から、ギロリー王子の友人、サロスの息子カーターが、半年前にミスティーナ国に入国して、岩山を購入したようだ。バーンスタイン領から出た報告は入っていないが、支配薬の利益を跡形もなく持ち去っている事実から、手練れの配下がいると見た。それ故、念のためだ!」

「わかりました。お父様もご一緒しますか?」

「行こう」

「では、裁判室に転移します!」

「クリスチャン殿下には、念話しておこう。ビックリされても困るからな」


 裁判室に転移すると、クリスチャンが待っていた。

「クリスチャン殿下、ごきげんよう」

「クリスタル、済まない」

「大丈夫ですよ。役に立てて幸せです」

「ありがとう」

「全体にバリア張りますか?」

 スタンリーは、

「王族席と、陛下、宰相、法理大臣の坐る二階席にバリアを張って欲しい」

 クリスタルはバリアを張り、ダンジョンに向かった。



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