第三十五話 レイス
ダンジョンで交戦中!
ポイズンスネークの次に出てきたのはボーンスケルトンだった。ボーンスケルトンとは霊体がスケルトンに憑依しているモンスターである。
ここは、クリスタルが前に出て初級の、
浄化魔法『セイアンデット』を放った。
うじゃうじゃいるボーンスケルトンを全滅させるのは無理だった。
もう一度、
浄化魔法『セイアンデット』を放つ
見る見る動けなくなったボーンスケルトンは、声を発することもなくバラバラの片になって地面に落ちた。
そこにいた全てのボーンスケルトンを全滅させたクリスタルは、
「次からは中級のセイレインを使った方がいいかな?」
と、クリスタルが言うと、
「二回目でもすぐ発動できるから大丈夫だよ」
「はい」
「このダンジョンは初心者用ダンジョン。初級魔法で倒せるモンスターしかいない。だから、一年生の授業で使っているんだよ。安心して魔法を使って感覚を覚えるといい」
クリスタルはワクワクしながら、
「中級、上級もあるのですか?」
「あるよ。初級・中級・上級・S級はギルド会館の周りに有るから訓練頑張ろう!」
「「はーい」」
「ボーンスケルトンの骨を集めてくれないか? 錬金術師の要請で骨が欲しいそうだ。ある程度集めたら残りは燃やそう」
「「「「はい」」」」
錬金術師に頼まれた骨をアイテムボックスに入れ、ギルドに納品する骨を集めたら残りの骨は燃やして片付けた。
オーウェンから、
「少し休憩しようか? クリスタルバリアお願い!」
「はい」
結界魔法『バリア』を展開してテーブルセットを出した。
創造魔法『ほうじ茶5』をみんなに渡しながら、
「何か食べますか?」
「そうだなぁ……カル、シアン、セシル何が食べたい?」
シアンは嬉しそうに、
「お菓子食べたい!」
セシルも、
「僕も!」
オーウェンはカールトンを見て、
「カルもお菓子でいいか?」
「いいよ」
創造魔法『イチコケーキ5』を皆に配った。
美味しそうに食べている皆を見てクリスタルは、
「シアン念話で教えてくれてありがとう」
感謝の気持ちを込めて行った。
「実戦経験のない事を悩んでいただろう? 僕で力になれるならと思って…」
「ありがとうシアン! とても緊張していたと思う」
「うん、最初少し硬かったかな」
「やっぱりわかっていたのね。シアンは私の最高のお友達だわ!」
シアンは友人と言われ愛想笑いを浮かべる。
カールトンは前の事を思い出していた。婚約話をしていた時クリスタルが「シアンと結婚する」といった一言にもやもやしていたのだ。今のクリスタルの言葉にカールトンは喜びを感じた。
「シアンはクリスタルの最高の友達かぁ。シアン僕とも友達になってよ!」
オーウェンはカールトンを見て、
「やれ、やれ、まだ、まだ、だな。当分は婚約できないな」
と、誰にも聞こえないように、小さな声でつぶやいた。
食事も終わりオーウェンの話を聞いた。
「最後はレイスというモンスターだ! 精神攻撃を得意としている。僕たちは精神攻撃無効があるから大丈夫と思うが、物理攻撃にも強いから気を付ける様に!」
クリスタルは、
「カル、私たち念話できること忘れていたわ。シアンは念話の事を教えようとしていたのかもしれない。私ったら………」
カールトンは慰める様に、
「僕も忘れていたよ。そうだね。念話で声掛けしていたら良い連携が取れていたかもしれないね」
オーウェンも頷き、
「互いに視野が狭まっていたのかもなぁ。実践中は冷静に視野を広く持つことを心がけよう」
「「はい!」」
レイスとの交戦に向けて歩き出したクリスタルは、
「お兄様今日使っていない全ての初級魔法試していいですか?」
「良いよ。カルもぶつけてみたらどうだ」
「そうします」
「さぁ、お出ましだ!」
クリスタルは、
火魔法『ファイア』を放った。
カールトンも、
火魔法『ファイア』そして、火魔法『ファイアボール』放つ、
レイスは人間と変わらない容姿をしていて、執事服のようにキチンとした服装をしていた。動きも早く躱されている。剣の捌きもなかなかのものだった。それに付け加え、知恵があり私たちの動きを観察しているようだ。
念話で、
≪カル、アクアビームにします≫
≪わかった≫
クリスタルは、
水魔法『アクアビーム』圧縮された水を放つ
カールトンも同時に、
水魔法『アクアビーム』で攻撃した。
これも避けられた。
≪カル、次はコールドゲイル≫
≪うん、僕はアイスで攻撃してみる≫
≪OK!≫
≪OK?≫
≪ゴメン。わかったと言う意味≫
≪うん、OK≫
カールトンとクリスタルは戦闘に集中する。
クリスタルは今度こそ決める覚悟を持って、
水魔法『コールドゲイル』レイスを冷気で覆い低下させた。
続いてカールトンが、
氷魔法『アイス』氷の飛礫で攻撃、クリスタルも続いて氷魔法『アイス』を放つが止めが刺せない。
二人同時に、氷魔法『アイスニードル』氷の矢をレイスに向ける。
氷の矢がレイスの身体中に刺さり、レイスの反応が無くなったのに気づいた。
静かにとてもゆっくり消えていく。
消えた場所には、今まで戦っていたモンスターよりも大きな魔石が落ちていた。
「お兄様、終わりました」
「ん、お疲れ、カルもお疲れ」
「うん、ありがとう」
そこに、レイスがまた現れた。
「君たち、宝箱回収した?」
「「えっ、えー、しゃべったぁー」」
カールトンとクリスタルは驚いて同時に声を出した。
「まだ回収していないなら早く回収して! 回収し終えたら何度も挑戦できるよ。宝箱も挑戦した分だけもらえるから宝箱回収しないと挑戦できない。それだけは覚えておいてね」
「そうなのですか?」
「そうだよ」
レイスが笑ったように感じた。
「カルもう一度お願いしてみない?」
「お願いしよう」
「レイスさん、もう一戦お願いしてもいいですか?」
「いいよ。じゃ、五分後ね!」
「はい、よろしくお願いします」
クリスタルは礼をした。
(日本人だった私は、癖のようにお辞儀をしてしまった…)
再度挑戦することになったクリスタルとカールトンはあれこれと相談をしていた。
カールトンは精神攻撃を何度も受けていたようだ。
クリスタルは全く気が付かなかった。
時間が来たようだ!
レイスは、さっきと同じ場所に立っていた。
「レイスさん始めます」
と、クリスタルが言うとレイスは手を挙げてOKサインをくれた。
先ず、クリスタルから、
風魔法『エアーシュート』空気の塊を放ち、続けて、風魔法『ウインド』疾風で攻撃した。レイスは少し後退したように見えたが、カールトンに殴りかかってきた。カールトンは何とかかわし足で蹴り倒す。レイスは壁にのめり込みそうな勢いで壁にぶつかった。
≪カル、少しは攻撃効いているかな?≫
≪効いていると思う≫
≪雷魔法のライトニング使ってみる!≫
≪わかった≫
雷魔法『ライトニング』でレイスの頭上に雷を落とした。
レイスは一瞬ピクッとして首を垂れた。
「………」
「お兄様? 倒しましたか?」
会話しているうちにレイスは消えていなくなった。そこには魔石が一つ転がっていた。レイスが居た場所は教会の祭壇に似ているが祭壇から色を無くしたコンクリートのようだった。その後もレイスが現れるのを待ったがレイスが姿を見せることはなかった。私たちは、宝箱を回収して地上に出る魔法陣の上に立ち、ダンジョンの入り口まで戻った。
「お兄様レイスというモンスターは人間らしいモンスターでしたね。カルも思わなかった?」
「そうだな」
カールトンとオーウェンはレイスが教師だと知っていた。カールトンはオーウェンの顔を見ながら、
「その、そう見えたね」
と、感情を含んだ目で答えた。
クリスタルは好奇心いっぱいで残念そうに、
「あぁ――、魔法剣使えばよかったかも!?」
カールトンはなぜかわからないが笑いを堪えるような奇妙な声を立て、
「そっ、そうだったね」
オーウェンは、
「そうだね。カル、クリスタル敵を目の前にして冷静に判断する難しさがわかってよかったよ。初級ダンジョンを二・三回経験すると、今日は見えなかったことが次は慎重に攻撃手段を選択出来て効率よく戦えるよ」
「「はい」」
初級ダンジョンを攻略できた喜びと反省が入り交じった感情を持て余していた。空を見上げると何もかも忘れさせてくれるような青空に、
「はぁー」「ふぅー」と深呼吸をして心を爽やかにした。
クリスタルは大空を優雅に飛ぶ鳥を見て飛行魔法で鳥と一緒に風に乗った。
「はぁー、きもちいいー、あっ、鳥さんいなくなったわ」
オーウェンとカールトン、セシルとシアンもクリスタルに続いて飛んだ。
「カルついてこられるか? シアン、セシル、カルの手を引いてくれ」
「オーウェン兄さんもクリスタルも手を繋ごう!」
とシアンが手を差し出した。
五人は手を繋ぎ空に向って飛び立った。
(クリスタルはいつまでも五人でいられますようにと祈った)




