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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第三十三話 魔力測定器と実技試験


 クリスタルは驚き過ぎて狐につままれたように呆けている。リアリティを失ったような表情だったが、現実に戻ろうとしている。

 ギルドマスターの声で我に返ったクリスタルは、

「ご用意が出来ました」

 オーウェンはクリスタルの頭をなでると、

「行こうか」

 クリスタルは気持ちが晴れるような明るさが戻り、

「はい!」

 と、気持ちを鎮静させた。


 クリスタルとカールトンは魔力測定器の前に立つ。カールトンから魔力測定器に手を翳すとカールトンの測定は『魔力量82000 火属性・木属性・水属性』と現れた。それ以上細かいスキルなどは表示されないらしい。

 次に、クリスタルが魔力測定器に手を翳すと、

『ピキッ、ピキッ、バリバリバリ、ガシャーン』

 と、割れ壊れてしまった。

 ギルドマスターは(やっぱり)と、事前に聞いていてよかったと思いながら、

「壊れましたね。鑑定宜しいでしょうか?」

「はい」

「では、」

『鑑定………………測定不能』

 ギルド職員が、

「ギルマス! 測定不能です!」

 カールトンも参加して、

「僕も鑑定してみたけど、測定不能だったよ」

 ギルドマスターは想像していた通りの結果に、なぜか、不思議な興味を持った。

「そうですか」

「あの、すみませんが口頭でお願いできますか?」

「360000くらいだと思います。成長するにつれてお兄様やカールトン殿下や私も増えていますので…」

 ギルドマスターを見ると、驚き過ぎて口をあけっぱなしで、声が出せない。

「アワヮヮヮヮー、」

 と声にならない音を出している。

 手振り、身振りで、何かを伝えようとしているのか……!?


 クリスタルは心配そうに、

「ギルドマスター?」

「…………そんなはず...が...あるわけない」

「アーロンマスター? 大丈夫ですか?」

「…………」

 やっとのことで、声を絞り出したギルドマスターは、

「さっ、さっ、さ、360000!?!! ですかぁ――」

 唾を飲み込んで、ギルドマスターは、

「びっくりたまげたなぁ――! 50000でAランクですよ!! 50000でAランクというのが常識です」

 興奮が冷めやらぬギルドマスターに困ったように、オーウェンは、

「このことは、秘密にしてください。わかりましたね。ウィルソン男爵! 陛下の命令です」

「ハァヮ――ヮァ―、……………………ハッ! 承知致しました」

 オーウェンは落ち着いた口調で、

「ギルマス、これからもよろしくお願いしますよ。学院の授業でもギルド会館とダンジョン使いますから」

 クリスタルとカールトンも軽く礼をした。

 ギルドマスターもぎこちない礼を返した。

 ギルドマスターが落ち着きを取り戻すと、実技試験場に向かった。


 クリスタルはミスリルの剣に闇以外の全属性魔法を付与している。その剣を納める鞘はオリハルコンで装飾した鞘だ。冷たく光る刀身は気品のある剣に仕上がっている。試験官とクリスタルは剣を構え向き合った。


「はじめ!」

 何処からか、ギルドマスターの声が聞こえた。

 試験官とクリスタルは歩み寄り剣が交差する。

 試験官は軽々とクリスタルの剣をかわす。

 試験官はオーウェンほど強敵ではない。

 最近ではクリスタルも剣技が身について中々の腕前になってきた。

 オーウェンとの訓練のお陰で、魔法剣を使うことなく見事合格できた。

 カールトンは言うまでもなく即合格していた。

 さすがに剣術ではオーウェンにもカールトンにも敵わないクリスタルである。

 でも、オーウェンは気づいた。スポンジのように吸収して成長していくクリスタル見て(来年は勝てるかな?)と心の中で思っていた。


 ギルドマスターについて行き、

「少々、お待ちください。シアン様とセシル様が実技試験をしていますので…」

「わかりました」

「お兄様、カル、シアンはSSSランク、セシルはSSランク……試験官大丈夫かしら?」

 オーウェンは笑いながら、

「殺さない程度に気絶させているかもなぁ」

 カールトンも、

「当たった相手は可哀想だけど、試験だからどうしようもない」

 益々、心配になってきたクリスタルは試験場に行こうと立ち上がると、シアンとセシルが入ってきた。

「シアン、殺さなかったよね」

「手加減するのに疲れたよね、セシル」

「はい、ホント疲れました。力入れすぎると試験場壊しそうだったので気疲れですね。コールマン城で大公騎士との訓練が役立ちました」

「そっ、そうなの? 手加減してくれたのね。ありがとう」

 クリスタルはほっとした。

 ギルドマスターがギルドカードを持って入ってきた。

「あの、皆さまはSランクでも申し分ないのですが、Sランクというのは規定がありましてギルドマスターの権限だけでは無理なのです。申し訳ありません。私の権限でAランクまでは発行することが出来ます。Sランク推薦として六名様をギルド本部に通知します。今回はAランクでギルドカードをお渡しします」

「ありがとうございます。兄さんはAランク?」

「Aランクだよ。上がるとしたら二学期に中級ダンジョンの実戦訓練の時かな?」

 と、ギルドマスターを見た。

 ギルドマスターは、

「もっと早いかもしれませんね。Sランク試験としてS級ダンジョン攻略してもらいますが問題ないでしょう」

 と、微笑んだ。


 ギルドカードを発行してもらいギルド会館を後にした三人と二人? は意気揚々とダンジョン向かっていると、コールマンパラダイス領でも見たことのない店が並んでいた。コールマンパラダイス領では武器屋は武器屋・道具屋は道具屋・装飾屋は装飾屋としてあったが、コールマン領では一つの店舗が武器屋・道具屋・装飾屋・鍛冶屋としてあり、店舗、店舗で其々が個性を生かし競い合っていた。冒険者はその中からお気に入りの店を見つけて懇意にしているようだった。

 そこに、パーティー同士が喧嘩を始めた。よく聞いていると、ダンジョンでの戦利品で揉めているようだ。

「戦利品で揉めているね」

「お兄様、激しく揉めていますね。止めなくていいのですか?」

「このパーティーはどういう配分にしているのか僕たちは知らない。パーティーのことはメンバーで解決するのが一番だよ」

「兄さん殴り合いしていますよ。ほんとにパーティーメンバー同士なのですか?」

「仕方ないなぁ。すみません。どうかしたのですか?」

「誰だ、お前」

「コールマン大公長男オーウェンです」

「はっ、えっ、大公? 大公令息様! すみません。失礼な物言いをしてしまいました」

「こんな場所で喧嘩とはどうしたのです」

「実は、今回臨時パーティーで、戦利品の分配で揉めていまして」

「そうでしたか。場所を変えて戦利品見せてもらえますか?」

「はい、どうぞ。どうぞ。大公令息様、あそこの店でも構いませんか?」

「いいですよ」

 冒険者たちはシアンとセシルを警戒している様子が窺えた。テーブル席に坐り戦利品をテーブルに置いた。

「戦利品はどう分配するよう決めていました?」

「何も決めずダンジョンに入りました」

「皆さんは何を揉めていたのですか?」

「この剣と防具とブーツが一人分足りなくて揉めていたのです」

「戦いに参加していない者がいたのですね」

「荷物持ちは戦いませんが、戦利品はもらえる。その他の者になる」

「貴方は誰を見ましたか?」

「俺は彼と掛け合いながら戦っていました。そうだろ?」

「ああ、そのとおりだ。それと、こいつも戦っているところを見た」

「サンキュー! 俺はこいつに治癒魔法をかけてもらった」

「そうだ。俺も治癒してもらったよ。ありがとな」

「俺も」

「では、君は何していたの?」

 とオーウェンが尋ねた。

「僕は武器が壊れて闘えなかったんだ」

「そうか。武器がなく戦えなかったんだね。どうかな? 彼以外は戦利品を受け取って解散するのは?」

「いいぜ。大公令息様、世話になったな」

「俺たちも帰るぜ」

 戦利品を持って冒険者たちは去って行った。

「君は剣がないんだね。クリスタル、さっきの戦利品と似通った武器、ないかな?」

「ありますよ」

創造魔法『剣・防具・ブーツ』創りだした。

「これを、お兄様」

「君、これで、冒険者続けられるね」

「ありがとうございます。ありがとうございます。大切にします」

 とても大切そうに剣・防具・ブーツを触っていた。

「君の名前は?」

「リーバイです」

「パーティーは組んでいるの?」

「パーティーメンバーはいません」

≪クリスタル、鑑定してくれないか?≫

≪鑑定します≫

≪彼は、治癒魔法、錬金術がスキルにあります。薬を創るのに適していると思います≫

≪そうか。コールランド病院で働いてもらおうか≫

≪いいと思います≫

「リーバイはどうして冒険者に?」

「僕は学がないので冒険者しかなかったというか...」

「リーバイを鑑定させてもらった。薬師になるのをお勧めするよ」

「僕には母がいますが、学院に通わせてもらえる余裕がありません」

「君の母はどんな仕事をしている?」

「よくわかりませんが、生活魔法を使う仕事をしていると言っていました」

「よし、冒険者は危ないから辞めよう。大公家が経営しているコールランド病院で働かないか? 住むところの心配もない。リーバイには薬師として働けるよう学んでほしい。君の母には生活魔法を生かした仕事を用意するよ」

「ほんとですか? 母に相談してみます」

「いい返事を待っているよ」

「はい。ありがとうございます」リーバイは剣・防具・ブーツに着替え、自分の着ていた防具を売り帰って行った。

「さあ、僕たちも行くか?」

「「「はい」」」

 

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