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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第三十二話 ギルド


 なぜかわからないけど、クリスタルは心がウキウキして喜びが後から、また後から、溢れている感じがしていた。たまに泊まりに来るカールトンは本当の家族のように大公家に溶け込んでいる。クリスタルはその風景を見るとほのぼのとしたものを感じた。

 朝早くアーライとエルザに起こしてもらったクリスタルは、アーライとエルザの働きで防具服のマントを羽織ったワンピース姿になった。オーウェンとカールトンも騎士服姿にマントを羽織った姿に、シアン・セシルは騎士服姿に、五人の姿を見たメイドたちはウットリしていた。

 これからダンジョンに向かう喜びと、お揃いの防具服の出来とで体中に充実感が漲るような感じがしていた。


 外に出ると朝の最初の日光を全身に浴びて、馬車に乗り込みダンジョンを目指した。馬車が軽い音を立てて走ると、光の光線が入ったり、入らなかったりと瞳を楽しませてくれる。コールマン領の中心街を通り抜けて、ホワイトダリアの前を通り過ぎ、横切ると、今まで見たことのない風景が見えてきた。緑の木々が均等に並んで出迎えてくれる。その風景に相応しい建物がきちんと並んで見え、クリスタルはガラリと変わった街並みに、知らない土地に来たのではないかと思った。

 次に見えてきたのは、宿屋、武器屋、道具屋、酒場などダンジョンを利用する冒険者のために必要な店舗がずらりと並んでいた。冒険者の為の街だ。コールマン領にも冒険の街が、あったなんて知らなかった。クリスタルとカールトンは、期待に胸を躍らせてソワソワしている。その様子をオーウェンは大切なものを優しく包みこむような微笑みで、クリスタルとカールトンを見ていた。


 オーウェンからギルドの説明を受ける。

「クリスタルは学生証を見せて魔力測定器に触らないで。僕が説明するから心配しないで!」

「わっ、解りました」

「カルはギリギリ魔力測定器に触っても大丈夫かな?」

「はい、兄さん」

「もうそろそろ着くから準備してね。カル! クリスタル!」

「はい」「うん」


 ゆっくりと馬車が止まり、御者の合図で馬車の扉が開いた。オーウェンが先に降り、カールトンが下りるとクリスタルに手を差し出し、エスコートしてくれた。辺りを見回すと、鋭い視線が感じられ、今まで感じて見てきた景色と違ったけれど、ダンジョンを楽しみにしていた喜びで、気にならなかった。ここは、冒険者たちの楽園。


 オーウェンに案内されるがままギルド会館の前に立ってクリスタルは、

「この建物がギルド会館なのね!」

 心が躍っているような声で話した。

 カールトンもワクワクが抑えきれない様子を出さないように、少し、男らしく「僕に任せて、行こう」


 ギルド会館は、前世の大阪府立中之島図書館のような外観で中央の建物の正面奥に受付カウンターがあり、その両側の右にSSSランク・SSランク・Sランク・Aランクの依頼票、左にBランク・Cランク・Dランクの依頼票、F~の薬草依頼票、Fランク~の雑用依頼票がある。


 左側の建物の地下は平民用牢屋、一階は解体場と倉庫、二階は図書館と資料室、

 右側の建物の地下は貴族用牢屋、一階が納品所、二階は診察室と入院病室、

 三階の中央の建物はギルド長の執務室と会議室と応接室とギルド長の部屋があり、両側の建物は宿泊施設になっている。


 ギルド会館を出て右手はギルド経営の酒場、左手は売店になっていて、アイテムや武器や冒険者に必要なものを販売している。

 ギルド会館の裏の中央に実技試験場、右側は訓練場、ギルド職員の寮。

 ギルド会館の裏の左側は冒険者になる為の冒険者学校があり、寮付きである。

 ギルド会館だけで生活できる仕組みになっていた。


 クリスタルとカールトンはオーウェンに促されるようにギルド会館に入った。受付カウンターは多数あって、どの受付を選べばいいか迷ってしまう。オーウェンは、ある受付カウンターに真っ直ぐ進んでいくと、また、周りからの視線が……………

 激しく見つめる視線。

 好奇の視線

 愛情ある視線

 鋭い視線

 厳しい視線

 羨ましい視線

 妬ましい視線

 憧れの視線

 色々な感情の視線が見つめているのを感じた。その視線は私たちを取り囲み、

「カールトン殿下ですか?」

「オーウェン大公令息ですか?」

「クリスタル大公令嬢ですか?」

 と口々に問いかけてくる。オーウェンはその声に、

「今日は冒険者としてきました。カウンターに行かせてください」

 周りの冒険者は道を開け、冒険者に見つめられたまま冒険者の前を通りカウンターに向かった。


 受付カウンターの前でオーウェンがギルドカードの発行を頼み、身分証を見せると、受付嬢がすぐさま席を立って何処かに行ってしまう。そしてすぐ戻り、応接室に案内された。ギルドマスターが入ってきたと思ったら、左手を胸に当て右手を後ろに回して何度も何度も頭を下げている。


「申し訳ございません。コールマン大公様から伝言でカールトン王子、コールマン大公令息とコールマン大公令嬢がいらっしゃると聞き及んでおりました。不手際をお許しください」

「そうか。で、」

「はい。カールトン殿下、コールマン大公令息、コールマン大公令嬢。ようこそいらっしゃいました。お初にお目にかかります。ギルドマスターのアーロン・ヨン・ウィルソンです。本日のご用件はギルドカードの発行で、宜しいでしょうか?」

 オーウェンは困った様子で、

「ギルドマスター、ご丁寧な挨拶をありがとう。ギルドカード発行とダンジョンにこれから行きたい」

「はっ、只今、ご用意いたします」

「アーロンマスター、話がある」

「ハッ」

 オーウェンは悩ましい気持ちで、

「ギルドマスター、もう少し堅苦しくない感じにしてくれないか? カールトン殿下とクリスタル、オーウェンでいいから…」

「では、カールトン殿下、オーウェン様、クリスタル様と呼ばせていただきます」

 オーウェンは仕方なさそうに、

「仕方ないか、そのようにお願いする。それで、わが妹クリスタルだが、魔力測定器以上の魔力がある為、魔力測定器を壊してしまうのだ。学院でも、口頭申請になっていた。鑑定も多分できないだろう。レベルが高いのでな」

「わっ、わかりました。規則ですので壊れても構いません。鑑定できなくても構いませんので、鑑定させて下さい。よろしくお願いします。それが終わりましたら、魔法測定と実技試験でギルドカードのランクを決めたいと思います。

 あのォ…ステイタスボードは見せて頂けませんよね?」

 オーウェンはカールトンを見ると、カールトンが首を横に振った。

「陛下の許可がないと無理だな!」

「えっ、えっ、そ、そうですか。わかりました。」

 ギルドマスターは陛下の名前が出た瞬間、足の震えを感じ茫然としたが、海千山千を乗り越えてきたギルドマスターは表情のコントロールをして足の震えを止めた。

「それでよいか」

「はっ、只今!」

 ギルドマスターは用意の為、応接室を慌てて出て行った。


 念話でクリスタルは、

≪本当ですか? 陛下の許可がないとステイタスボード見せられないというのは?≫

 カールトンが、

≪陛下も叔父上も「今は秘密にしておくように」と、言っていた≫

≪そうなの。わかりました≫

 カールトンは付け加える様に、

≪大体の人は知っているから言うけど…近い将来、聖女の選定と勇者の選定が行われる。今までダリア球では魔族がでたことがないんだ。そのため勇者は街宣旅行して勇者の存在アピールをする。「勇者がいるから戦争してこないでね」が、メインらしいけど…これは人間に対して行う行為。そこで陛下は教会に聖女の権利をすべて渡す。陛下はクリスタルをミスティーナ国の代表として宰公と役職を付けるそうだ。宰相より上になるのではないかなぁ?≫

≪えっ、そんな話聞いていませんよ――!≫

 オーウェンは知っていたのか、

≪もともと僕は、クリスタルの護衛志願だとクリスチャンとカルの側近を断っていたのさ。父上から、「クリスタルは国を支える存在になるだろう。その時は、オーウェンに側近として支えて欲しい」と頼まれていたから≫

≪そんなぁ――、お兄様の人生なのに――≫

≪良いのだよ。カルも一緒に支えてくれるから!≫

≪カルも………?≫

≪兄さんと僕はクリスタルの側近になるよ!≫

≪はぁー≫

≪僕が側近になると、もれなく第二騎士団もついてくるよ!≫

≪そんなことに……………でも、まだまだ先の事だからわからないよね≫

≪うーん、どうかな? 本決まりみたいだけど、まだ先は、先かな?≫



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