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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第三十一話 カールトン殿下のお泊り

 陛下の住むパレスダリア邸、クリスチャン殿下が住むウエストダリア邸、カールトン殿下が住むイーストダリア邸に転移魔法陣を設置してバリアを張り終えたクリスタルは、転移でコールマン城に戻り、スタンリーの執務室を訪ねた。

「お父様宜しいでしょうか?」

「ああ」


 王城でのことを説明して、

「コールマン城に転移魔法陣設置して良い部屋ありますか?」

「…連れて行くよ」

 クリスタルはスタンリーの後に続いて歩く。


「この部屋を使いなさい。広さはこれくらいでいいのか?」

「十分です。では、やっておきますのでお父様はお仕事にお戻りください」

「頼んだよ」

「はい」

 クリスタルは転移魔法陣を設置してバリアを張った。

 次に向かったのはクリスタル城だ。クリスタル城にも同じように転移魔法陣を設置してバリアを張り、6Fの創造神様のお部屋を確認してコールマンパラダイス領とホワイトダリアにも転移魔法陣を設置してバリアを張った。そして、別荘に転移し同じ作業をして、コールランド島に転移した。コールランド病院の従事者は寝静まっているようだった。


 念話でスタンリーと連絡を取り、

≪お父様!≫

≪コールランド島か?≫

≪はい。何処に設置しようか迷っています。病院の外に建物を建てた方がいいでしょうか?≫

≪…病院の中は…≫

≪あっ! 先ほどホワイトダリアを三階建てに増築して魔法陣設置したのですけど、病院も二階と三階は入院病棟として創っています。四階を増築して出入りできる者の名前を付与しましょうか? そうすると病院関係者や患者は入れません≫

≪そうしてくれ! 隔離病棟の患者が使えないよう細心の注意を払った方がいいだろう≫

≪とても広いので宿泊部屋も創りますか何部屋必要ですか?≫

≪そうだなぁ……視察に陛下や王族が最低人数の護衛を連れて来たとして、三十部屋あれば、陛下、クリスチャン、カールトン、オーウェン、クリスタル、我と最低人数の護衛たちは泊まれるだろう。その他の騎士団は寮に泊まれるか?≫

≪はい、寮に空き部屋が沢山あります。……お父様、帰りは王都のホワイトダリアとコールマン領のホワイトダリアにも転移魔法陣を設置してから帰ります≫

≪気を付けて帰りなさい≫

≪誰かいます。イチコ畑で何かしています≫

≪クリスタル気を付けなさい≫

≪カァレエクトォ使って捕まえます≫

≪クゥ―、転移魔法陣はまだ設置出来ていないか。必要な時に……≫

土属性魔法『カァレエクトォ』茨の茎で縛り対象者を引き寄せ空中に置いた。

「貴方はコールランド病院で働いているのですか?」

「そうです」

「仕事場はどこです」

「畑の管理をしています」

「夜に畑の管理ですか?」

「すみません。イチコをつまみ食いしていました」

「夜更けにつまみ食いとは……他の従事者と一緒にイチコ狩りをして食べればもっと楽しいのでは?」

「はい」 

≪お父様イチコを食べていただけでした≫

≪そうか。名前は?≫

「名前は何と言うのです?」

「マイケルです」

≪マイケルだそうです≫

≪マイケルか。畑に関してはプロだ。≫

≪では、少し話してから解放しますが、宜しいですか?≫

≪良いだろう≫

「マイケルは畑に詳しいとか?」

「好きなんです。育てることが」

「新しい苗を植えるので管理をお願いできますか?」

「任せてください」

「ここを畑に変えますね。まず土創りをして、海水に種を入れ沈んだ種を消毒して暗い所に置いて苗になるのを待ちますが、魔法で苗にして畑に植えます」

「水の中で育てるのですか?」

(私もパソコンで偶然見ただけだけど……)

「そうです。ここは魔法で水を吸い込ませ土がカラカラになるまで成長させる」

付与魔法をかけ常にお米が食べられるようにした。

「これは精米機と言う魔道具です。ここに入れるとこのように要らないものは左に、お米は右に分けられます。お米を持ってきてください。この釜でお米を炊きます」

「お米の炊き方を書いていますのでこれを参考に炊いてください。魚料理や肉料理と一緒に食べると美味しいですよ。私はやることがあるのでまた後で……」


 クリスタルは四階を創り魔法陣と宿泊部屋を創り終えてからマイケルの元に戻った。

「出来上がりましたか?」

「海水を生活魔法『クリン』で綺麗にしてください」

 クリスタルは焼いていたレインボーマスナの欠片と海苔を出し、

「海水を手になじませ、お米を手に乗せ、ほぐしたレインボーマスナを真ん中に入れて握り、海苔を捲いてください。食べてみて」

「お米の程よい塩加減がよく中に入っているレインボーマスナとの調和がすごくいい。そこにふんわりと海苔の香りとパリッとした歯ごたえがあり美味しい」

「でしょう。忙しい時などおにぎりとおかずを入れ持ち運べるでしょう。これはお弁当箱です。これに入れて釣りでも楽しんでください」

「ありがとうございます。クリスタル様」

「では、私はこれで帰ります。残りもおにぎりにして皆さんで食べてください」


 すべてに転移魔法陣を設置し終えたクリスタルは転移でコールマン城の部屋に戻ると、綿が水を吸うように重く感じる身体をベッドに置いた。瞼が重く夢とうつつの間を彷徨い続けていた。




 トロンと眠気の残った瞳に飛び込んできたのは、カーテンの隙間から見える青空だった。ベッドから起き上がりベランダまで歩いた。透き通る空の青さと太陽の光がダイヤモンドのように輝いて目に染みる。

 メイドのアーライとエルザに身支度をしてもらい家族用の食堂に向かうと、パンの焼けた匂いと点てたばかりのコーヒーのほろ苦く甘い香りがしてきた。 充実した一日が始まりそうな朝食を食べて部屋に戻った。


 念話でオーウェンに連絡してみる。

≪お兄様、今宜しいですか?≫

≪いいよ≫

≪コールマン領にダンジョンか迷宮はありますか?≫

≪あるよ。領主によって名前が違うだけだよ。元サウルは迷宮と名付けたのだろう。コールマンパラダイス領では迷宮、コールマン領ではダンジョンと呼んでいるだけ≫

≪あるのですか? 行ってみたいのです!≫

≪そうだな、一度経験するのも良いかもしれないね。父上に聞いてみるよ≫

≪お願いします。カールトン殿下も誘います。二学期は実戦訓練があるので……≫

≪わかった≫


 オーウェンとの念話を終え、カールトン殿下に念話してみる。

≪カールトン殿下、お時間宜しいですか?≫

≪クリスタルなのか?≫

≪はい!≫

≪ビックリしたよ。クリスタルが念話してくれるなんて!≫

≪そうですか? お誘いです。お兄様とコールマン領のダンジョンに行きませんか?≫

≪行きたいよ! 一度経験してみたかった。兄上とオーウェン兄さんは経験済みだから、二人が話していたダンジョンの話羨ましかったよ≫

≪一緒に行きましょう≫

≪クリスタル、これからはカルって呼んで!≫

≪カル……カル。呼んじゃった! 少し恥ずかしいのはなぜでしょう?≫

≪あはっ、これからもよろしくクリスタル!≫

≪こちらこそありがとう。カル!≫

≪日時が決まったら教えて≫

≪はい、カル!≫


 今日は、珍しく理想的な時間に夕食を食べている。

 近頃は、解決することが山のようにあって家族が揃って夕食をとれなかった。

 ゆっくり顔を合わせて会話する機会もなかったのだ。

「お父様、お母様、家族揃ってのお食事は久しぶりですね。

「そうだな、しておかなければならないことが、限りなくあったからね」

「お疲れ様です」

 少し重荷を下ろしたように柔らかい顔になったスタンリーは、

「クリスタル、ダンジョンに行きたいのか?」

「はい、訓練はしてきましたが経験がありません。学院でも実戦訓練が始まりますので習熟を図りたいと思います」

「そうか……この時期が来たのか。オーウェンは従者のヘンリーとマシュー、クリスチャンと護衛のルーカスとメイソンと六人でダンジョンに行ったのは去年かぁ。

 早いものだな。

 もう一年立つのだな。

 オーウェンとクリスチャンたちも何度か挑戦しているから教えてもらうとよい」

「はい、お父様」

「オーウェン守れよ」

「はい、父上」

「よし、オーウェン頼んだぞ!」

「はい、父上、カールトンも連れて行きます」

「うむ、」

「お父様、ありがとう」

「シアンとセシルも連れて行けよ」

「はい」


 夕食を終え、カールトンに念話する。

≪カル、今いいですか?≫

≪クリスタルいいよ!≫

≪明日の朝からダンジョンに行くことになりました。カル、行けそうですか?≫

≪うん。大丈夫だよ≫

≪カル、夕食終わった?≫

≪さっき食べ終わったよ≫

≪明日早いからコールマン城に泊まらない?≫

≪いいの?≫

≪もちろんよ! 泊まりに来てくれると嬉しい≫

≪じゃ、設置してもらった転移で行くよ≫

≪転移室で待っているね≫

≪うん、あっ、用意があるから三十分後に≫

≪はい≫


 クリスタルも明日の準備をあれこれ考える。

(回復ポーションはいるわね。いくら治癒魔法があっても魔力がなくなっては意味が無いものね。あっ、魔力ポーションもいるわ。そうだ、体力ポーションだ。

あ――、解毒ポーションもね。

…………………………………………………………うん! お兄様に相談しよう)


 クリスタルはオーウェンの部屋を訪ねた。

「お兄様、明日の準備のアドバイス頂きたくて…」

「いいよ!」優しい微笑みで出迎えてくれた。

「回復ポーション・魔力ポーション・体力ポーション・解毒ポーションは創ろうと思っています。他には何が必要ですか?」

「クリスタルらしくないなぁ…去年の事思い出してよ。クリスタルが僕たちの準備してくれたじゃないか? 覚えてない? 「剣も魔法剣にしないとダメです」と言って、クリスタルとカルも去年一緒に属性魔法剣にしたよね?」

「はい、しました」

「自動完全修復と自動防汚洗浄も付与しました」

「でしたら、防具服創りましょうか? 去年制服で行って「制服で行くと目立ってしまった」と、お兄様言っていましたね」

「そうだった、いろんな人に話しかけられてダンジョンまで中々行けなかったよ」

「そうでしたの」

「ああ――、苦労したなぁ――、思い出したよ! 制服はやめた方がいい!!」

 オーウェンは気づかない。目の前に大公家嫡男オーウェンと第一王子クリスチャンが現れた。皆、お近づきになりたいと思うだろう。


「わっ、わかりました」

「よし」

「セシルとシアンに協力してもらいましょう」

「どうするのだ?」

「シアンの皮? 皮膚? を鑑定して同じ革を創造魔法で創ろうかと思いまして…」

「セシルとシアンを傷つける訳ではないのだな?」

「もちろんですよ! 大事なシアンを傷つけると、思うなんて……そんな酷いです」

「ゴッ、ゴメン、クリスタル。謝るよ。機嫌直して!」

「うふっ」

「後で、シアンとセシルにお願いしましょう。三十分経ったのでカルを迎えに行きます」

「そ、そうだな、僕も行こう」

 クリスタルとオーウェンはカールトンを迎えに転移室に向かった。

「まだ来ていませんね」

「もう、来るだろう……………ほら、来たよ」

 転移魔法陣が白く美しく輝くとカールトンの姿が現れた。

「カル、いらっしゃい!」

「こんばんは兄さん、クリスタル。お世話になります」

「よく来たなカル」

 カールトンがクリスタルの顔を見ながら何か思い出したように、

「あ――、兄さんにも前に「カルって呼んで」って、言ったね」

「そうだな」カールトンを見つめ優しく笑った。

「談話室に行きますか? お兄様」

「そうするか、カルはどうだ。荷物整理するか?」

「大丈夫です、クリスタルから貰ったアイテムボックスに入れてあるから」

 クリスタルも優しく微笑み、

「お茶にしましょうか?」

 談話室に向かった。


 クリスタルはカールトンに、

「防具服は学院の制服?」

「違うよ。王家の騎士服、第一近衛騎士団の制服に似ている。知っていると思うけど、僕のお守り役は第二近衛騎士団、第二近衛騎士団の王家の制服持ってきた」

「今から防具服創ろうと思いまして」

「どんな?」

「昔から考えていたの。ねっ、お兄様!」

「約束の防具服だね」

「はい! あの頃は火属性魔法を習得して、ご褒美に街に出て武器屋に行ったの! その時に思いついて白竜の革にシルバーの蜘蛛糸で刺繍をしてお兄様は騎士服風とマント、私はワンピースでマントを羽織る。もちろんマントにもシルバーの蜘蛛糸で刺繍をして・・・・・・etc. 頭の中ではお兄様が防具服を着たイメージはあるのに――――!」


「わかった、わかった! 今回はカルと三人でお揃いにしよう。シアンとセシルを呼んでくるよ」

「はーい!」


 オーウェンがシアンとセシルを連れてきた。

 シアンがクリスタルに抱きついた。

「シアン寂しかったの?」

「うん、何処にいたの?」

「お兄様に相談していたの」

「シアン、明日からダンジョンに行くでしょう。防具服を創るのにシアンにお願いがあるの!」

「なに? どうしたの? クリスタル!」

「シアンとセシルの体の強度とか鑑定させてほしいの。参考にして創造魔法で防具服を創りたい」

「何だぁ――、いいよ! セシルもいいよね!」

「はい」


 クリスタルとカールトンがシアンの皮膚? 皮? を鑑定する。

『鑑定……………水・風属性。全属性に耐性あり』

『鑑定……………測定不能』


 カールトンは、

「僕は鑑定できなかった」


 セシルの鑑定をする。

『鑑定……………水属性。火属性に耐性あり』

『鑑定……………水属性。火属性に耐性あり』


「お兄様シアンは水と風属性で全属性に耐性あり! セシルも水属性だけど耐性が火属性に耐性ありと鑑定出来ました。シアンを参考に創ります。」

「そうだね」

「僕も賛成!」

「では、シアンの綺麗な色も取り入れて騎士風防具服とマント二セットとワンピースとマント一セット創ってきます」


 クリスタルは自身の部屋に行き、出来上がりの騎士服とマントをイメージする。次に、ワンピースとマントを羽織った自分をイメージ…

創造魔法『騎士服・マント・ブーツ2セット』

付与魔法『自動サイズ修正・自動完全修復・自動防汚洗浄』


創造魔法『ワンピース・マント・ブーツ』

付与魔法『自動サイズ修正・自動完全修復・自動防汚洗浄』


 オーウェンとカールトンの騎士服は王族と大公家に相応しく豪華で上品に、この世界では見たことのない仕上りにした。シアンとセシルのも、私たちと基本は変わらないが上品さはなくさず創った。白をメインに、シアンの皮色をエリや袖口にアクセントにして刺繍をいれ、肩章はシルバーで大公家とわかるようにした。マントの外側には細かなシルバー色で刺繡を、マントの中心に大公家の紋章を入れた。

(転生前、アニメにはカッコイイ騎士服いっぱいあったなぁ――――!)

(はぁー、アニメ見たい…)


 気持ちを切り替え、出来上がった服を持って談話室に向かう。

 和やかに過ごしていたようだ。

「防具服出来上がりましたよ! カルは大公家の家族にしました」

 防具服を渡す。


「おォ――! 素晴らしい出来だよ!こんな意匠見たことない! カル」

「うん、いいね!」

「カル、大公家の紋章だけど大丈夫かな?」

「嬉しいよ。ずっとこの騎士服着るよ!」

「お忍びに良いでしょう」

「そういう意味ではないよぉ。クリスタル」

「はい、はい、お二人さん。セシルとシアンの騎士服も見せてくれないか」

「シアン、これどうぞ!」

「セシルもどうぞ!」

「また、このシンプルで上品な騎士服の意匠もいいな!」

「私たちとほとんど同じですが、シアンとセシルはマントがあると動きにくいと思ってマントなしにしました」

「第二近衛騎士団に着せたいですね」

 クリスタルは思いついたように、

「少し意匠を変えてコールマン大公騎士団に用意するのもいいですね」

「まっ、父上と要相談だな」




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