第三話 コールマン城とクリスタル城
馬車に揺られながら王都の街並みを見ていた。
(コールマン領とあまり変わらない街並み、人の出入りはコールマン領よりも多いかなぁ)
コールマン領は王都に近いためタウンハウスは必要ない。だが、政治的意味合いで必要なのです。
華やかで清雅な建物に近づき贅沢な門をくぐると大公邸である。執事長筆頭に、執事、メイドたちが、見事な整列を見せ出迎えてくれる。
部屋で寛いでいると、ノック音がした。
「衣装替えを始めさせていただきます」
「アーライ、エルザ、お願いします」
大公家の夕食にふさわしい衣装に着替え、豪華な家族用食堂に案内されると、食欲をそそるいい匂いがします。スタンリーは既に坐っており、フローレス、オーウェン、クリスタルと、順番に席に坐った。季節感のある料理は、洋風料理のように色合いよく清潔に食卓に盛られていた。
スタンリーが皆の顔を見て…
「大公邸で行うクリスタルのお披露目パーティーは中止にしようと思う。お披露目パーティーで鑑定されステイタスがばれると国と教会に一生閉じ込められる可能性もある。先程、ステイタスボードを見たが自分の予想を遥かに超えたステイタスを見て驚いている。司祭から「鑑定できませんでした」と報告があった。まだ、教会にはステイタスがばれていないという事だ。家族でクリスタルの成長を見守っていきたいと思う。どうかな?」
同意を促すように、スタンリーは平和的な解決を探そうしている。
「僕も国か教会に目を付けられ、クリスタルをとられるのはごめんだ! 心配しないで! 可能性があるだけだよ。領地で過ごすほうがいいと思う。僕もクリスチャン殿下のお披露目パーティーでお披露目をしただけで大公邸でのお披露目パーティーはやらなかった。だから中止にしても心配ないよ」
スタンリーとオーウェンは対策を講じてくれて、クリスタルを守ろうとしている。
「そうだな。クリスタルを怖がらせるわけではないが、力がある者は国や教会に匿われて利用され続けた歴史がある。今の陛下はそのような非人道的なことはしないと思うが、教会は隠し事が多く、我々が全て把握できていないのが現実だ。いずれ陛下には話すことになるが今ではない。我も対策を立てたい。それまでクリスタルのステイタスは秘密にする」
「お父様お願いがあります。創造魔法で訓練場を創りたいのです。クリスタルはそこで個人訓練をしたいと思います。お父様、お兄様には教えを頂くと思いますが、なるべく目立たず取得していきたいと思います」
「そうだな…」 スタンリーは顎に手を添え考え込んでいる。
「よし、そういうことなら陛下と教会に暫くは秘密にできるな! 近い将来、陛下には話をして協力してもらうつもりだ。オーウェンとクリスタルは王子のお友達枠で王城に呼ばれているが、当分はオーウェン一人で踏ん張ってくれるか?」
「クリスタルの為です。父上! 人に頼られるということは有り難きものなのですね」
「男とはそういう生き物なのだろう。オーウェンにも、これから大切に想う相手に出会うだろう。クリスタルを大事に思う心が、また未来の大切な相手にも繋がるだろう」
スタンリーは、目を細めて穏やかな表情でオーウェンに微笑んだ。
クリスタルは感謝の気持ちを伝えるために、今回も、白いダリアとメッセージカードを、贈ることにした。
食事が終わり部屋に戻ると改装が終わっていた。
(えっ! ………いつ改装したの? ………食事中? ………すごすぎるぞ! 大公メイド!)
部屋の様子は洗礼式のドレスのイメージ!
天蓋のベッドのまわりを白のシフォンで覆い、そのシフォンには刺繍のダリアが咲いている。ベッドカバー・枕カバー・カーテンも、白生地に白銀糸でダリアの刺繍が施されている。全体的に白のイメージで、フラスコ画ととても合っている。所々にクリスタルの瞳色の調度品が置かれて、アクセントになっている。
「わぁぁ! 素敵! 物語のお姫様になった気分だわ!」
クリスタルの瞳は、嬉しくて堪らないというように輝いていた。早速、スタンリーにお礼に行く。
「お父様、素敵なお部屋ありがとうございます。大切に使います!」
「そうか、気に入ったか! 白いダリアの花束を、家族にプレゼントしてくれただろ。三人で話し合って、白いダリアに決めて良かったよ」
「まぁ、あの時のプレゼントを覚えてくれていたのですね。ありがとうございます」
「少しは、甘えてくれんか。そんなに頼りにならないか? 甘えてくれることで幸せを感じられるんだよ」
優しく微笑んでクリスタルの肩を触る。幸せな気持ちが込み上げてきて心が温かくなった。
今日は家族でお出かけです。お母様はお留守番。この間お願いしていた訓練場を建設できる日です。
私のイメージは、写真で見たフランスのシャンボール城の写真を参考にイメージを膨らませます。
(よし! 頭の中でイメージはできた)
「クリスタル、すぐ着くよ。コールマン領で働いていた人達の寮が老朽化して解体したばかりの土地だ。この寮に住んでいた従事者は新しい寮に移動も終わった。どうだ?」
「ここで、お願いします」
スタンリーの領主としての、資質を尊敬している。
「お父様は働いている人達の環境も考えているのですね」
(前世でいう福利なんとかだったかな? お父様は、王子ではなく、領主になったのですね)
「どんな訓練場つくるの?」
(それに、お兄様とずっと一緒に居られるのも、あと数年…)
「騎士団も訓練できるような大きさになると思います」
「そ、そうなのか」
「充分広い土地ですのでイメージ通りの建物が出来ると思います」
お父様は領地の皆様を他の場所に誘導しています。
オーウェンに見守られ、
創造魔法『お城!』
「えっ――! 今、なんて言ったぁ――!! お城って言わなかった!?」
オーウェンは驚き過ぎて唖然としながら見ている。徐々に下からお城が出来上がってくる。壮麗でありながら高雅な建築物が建っていた。
「あっ! そっ! 父上ぇ――!………呼んでくるよ」
クリスタルは、お城の出来に満足している。
二人が戻って、お父様は開いた口が塞がらない状態です。
「父上、いいのですか? 領主邸より豪華になっていますよ!!」
オーウェンのいうこともわかります。
「お父様ダメでしょうか?」
お願いの動作で甘えたような顔をし、スタンリーを見つめる。
「これほどの物が出来るのか! すごい魔法だな! 領主邸も同じ城頼めるか? クリスタル城とお揃いだ!!」
「コールマン城はクリスタル城よりも拡大しましょう。いずれはお兄様が継いで暮らしていくのですから内装は家族で相談しながら創りましょう!」
三人でお城の中を探索します。天井は高く! 城の天井は創造神様を思い出してフレスコ画のように描きました。
1F
●応接室
●会議室
●大食堂
●シャワートイレ室(日本の公衆トイレの豪華版)5室
●魔法の訓練場に、執務室・更衣室・大浴場・シャワー20・シャワートイレ10(男女別)
●剣術・弓術の訓練場に、執務室2・更衣室・大浴場・シャワー20・シャワートイレ10(男女別)
●体術の訓練場に、執務室・更衣室・大浴場・シャワー20・シャワートイレ10(男女別)
〇騎士団の寮は1Fの外庭に創る予定
●執事と従者と従事者とメイドたちの寮、一部屋に、シャワートイレ・お風呂にシャワー・小さい調理場
2F
●王族関係者用の部屋だけにしました。ゆったり大きめの部屋を20部屋。部屋の中に、シャワートイレ・お風呂にシャワー・調理場
●会議室
●談話室
●応接室
●執務室
●中食堂
●(日本の公衆トイレの豪華版)シャワートイレ室(男性用と女性用各2室)
3F
●多目的ホールを創る予定
4F
●お客様専用部屋を50
王族関係者よりも小さめの部屋に、シャワートイレ・お風呂にシャワー・調理場
●会議室
●応接室
●談話室
●(日本の公衆トイレの豪華版)シャワートイレ室(男性用と女性用各2室)
5F
●パーティーホール
●個室20・王族専用個室5
●(日本の公衆トイレの豪華版)シャワートイレ室(男性用と女性用各5室)
●パーティー専門調理場
6F
〇?
エントランスを入った中央の奥に創造神様の銅像を置き祭壇を創った。その両側にエレベーターと階段を使えるように設計しました。
(てへっ、教会より豪華に創ってしまった。エレベーター魔石で動くかなぁ?)
スタンリーとオーウェンは驚き疲れて、落ち着いた状態のようです。
「今日はここまでにして、明日からは調度品・装飾品諸々を創造魔法で創ります。お兄様明日もお付き合いお願いします」
「いいよ! 楽しいから!」
「そ、そうしようか。今日はここまでにして帰ろう」
お父様は動揺しすぎて疲れているようだ。
………三人は無言のまま帰路についた。
屋敷に着いて、部屋のなかで何を創るかあれこれ考えていると、アーライとエルザがノックした。
「クリスタル様、夕食の準備が整いました。衣装替えしますか?」
「これでいいわ」
スタンリーはもう席についている。 フローレスとオーウェンはまだのようだ。
(先に坐ったら駄目よね)そう思っていると、
「クリスタル、今日は疲れただろう。先に坐っていいよ」
「はい、では失礼します」
皆が揃って夕食が始まり、フローレスにお城の話をしたが、信じていないようです。
……疲れ切っていたクリスタルは、早々と眠りについた。
そして、一週間かけてクリスタル城の調度品・装飾品諸々用意したのである。2Fのクリスタルの部屋は、領主邸のクリスタルの部屋を広くした部屋になっている。内装は領主邸のクリスタルの部屋と殆ど変わらない。他の王族の部屋はコールマン大公の紋章が刺繍されたもので統一している。4Fのお客様用の部屋は花をモチーフにして創りました。
次に、領主邸を建て直す前にアイテムボックス無限を創ることから始めます。領主邸は荷物が多過ぎなのです。それらを一時的にアイテム腕輪の中に入れます。今の領主邸は材料にして無駄が出ないようにします。領主邸の皆が身分も関係なく勢ぞろいしてアイテム腕輪に調度品や装飾品・ドレス・装身具・食器諸々入れていく。
さて、準備はできた。
コールマン城の完成を願います!
がんばるぞ――!
旧コールマン邸は飲み込まれてなくなった。
創造魔法発動! クリスタルが手を翳し『お城』と、唱えるとお城が徐々に下から出来上がっていった。
「「「「「コールマン城の新築! お祝い申し上げます!!」」」」」
執事長筆頭に執事、メイド達が声を合わせた。
「お父様、コールマン城の新築おめでとうございます! ですが…もうひと踏ん張りですよ! 頑張って予定通り調度品などの配置をしましましょう」
コールマン城が完成し、執事やメイド達も間取りを把握したのか、テキパキと職務に励んだ。