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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第二十八話 コールランド島


 スタンリーはクリスタルの部屋をノックした。

「クリスタル話がある」

 クリスタルは扉を開け、

「お父様お帰りなさい! お怪我はありませんか?」

「ありがとうクリスタル大丈夫だよ。それで……クリスタルにやって欲しいことがある」

「何ですか? お父様の頼みならなんだってしますよ!」

「昨日男女四人捕らえ、その男女は支配薬に侵されていて会話も通じない。叫び声が酷く意思の疎通もできない。普通の病院では管理できないだろう。そこでクリスタルに新たな病院を建ててもらいたい!」

「わかりました」

「周りに住居がない土地を探している。シアンに聞いてくれないか」

「シアンを呼んできます」

 扉を出てシアンの部屋をノックする。

「クリスタル?」

「シアン、部屋に来てくれない」

「良いよ」

 扉を閉めクリスタルの部屋に入る。


「スタンリーパパ!」

「シアン、少し恥ずかしいぞ」

「クスッ」と、可愛らしくシアンは微笑む。

「シアン何処が人気のない土地はないか?」

「ホワイトダリアの先に離島がある。誰も住んでいない」

「そこがいいな。シアン明日にでも連れて行ってくれないか?」

「良いよ」

「クリスタルも一緒に良いか?」

「はい、明日はシアンに乗せて貰いましょう。シアンに飛行の付与魔法を付けておきます」


 スタンリーは少し躊躇ったが、

「クリスタルだから何でもありだな。ハ、ハ、ハッ」

「お父様にも飛行付けますか?」

「明日何があるかわからないしお願いするか!」

「シアン、お父様こちらに来てください」


付与魔法『飛行』まず、シアンに! 続いて、お父様に! 付与魔法『飛行』


「シアン、お父様訓練場に行きますよ」

 クリスタルは二人の手を引っ張って飛行訓練をするため訓練場に楽しげに行った。訓練場に着いた三人は、最初にクリスタルの飛行を見てから訓練を始めた。シアンは飛んではいるがバランスがうまくない。


「シアン、何処行くのぉ――――――あっ、壁にぶつかる!」

 ゴォ―ゥ―ンと壁にぶつかる大きな音が響いた。

「いたたたたぁ―」

「シアン大丈夫? 打ちどころ悪くない?」

「平気」と言いながらこちらに飛行してきた。

「あっ、お父様シアンが……きたぁ――」

 シアンがクリスタルにぶつかりそうになった時スタンリーがシアンを抱きしめた。それでも衝撃でドンと音がした。

「お父様お怪我はありませんか?」

「問題ない。シアン一緒に練習するか?」

「うん、スタンリーパパお願い」

「先にお父様から練習しましょう。一緒に」

 クリスタルはスタンリーの手を握り飛行する。

「お父様も飛んでください」

「シアァ――――ン! また勝手に飛んで行ったわ」

 バランスを崩し、斜め横に、飛んで行った。


「お父様、こんな感じで飛行するといいですよ!」

 すぅーっと、自然に上に飛んで見せたクリスタルを真似、スタンリーは飛んだ。

「シアン! お父様! 私は部屋にいますから頑張ってください」

「クリスタル、二人とも飛行出来る様になったら部屋に行くよ」

「はい」


 お父様は運動神経の問題なのだろうか? 飛行を習得してみせた。シアンは相変わらずどこに飛んで行くかわからない。お父様はシアンを追いかけて飛行のコツを教えている。

(シアンはもう少し訓練が必要ね)

 クリスタルは自分の部屋に歩を進めた。


 二・三時間立っただろうか、やっとシアンとスタンリーがクリスタルの部屋にやってきた。

「お疲れ様でした。ベランダにコーヒーとエクレナ用意していますよ。疲れを癒してください」

「シアン、お疲れ」

「スタンリーパパありがとう」

「シアン、エクレナ何個食べる?」

「十個」

「はい!」

 クリスタルは多めにエクレナを出した。

「美味しい」「美味いな」

 シアンとスタンリーはエクレナに満足したようだ。


 スタンリーは、

「シアンがうまく飛行できるようになったし、明日行ってみるか?」

「そうですね。シアンの本当の姿も見たいです!」

「明日は、朝から出掛けよう!」


「はい、あの、お父様に報告があります。エイブラハムの店舗跡を日本国に咲いている桜を植えました。そこで、コールマンパラダイス領改名記念に桜を植えたとして毎年桜パーティーをしませんか? 日本では桜の下で花見をしていました。明日離島に行く前に見て欲しいのです。気に入ってくださればコールマン領にも桜を街中に植え桜の街として発展させていきたいのです」

「日本の花か。見てみたいものだ。花見とは?」

「桜の下でお料理やお酒を持って行って桜パーティーをしていたんです。私は経験ありませんが皆幸せそうでした」

「そうか花見か。今から行くか? クリスタルは経験がないのだろう。父と経験しようじゃないか!」

「良いのですか?」

「よし、皆を集めて賑やかに行こう!」

 クリスタルは嬉しくて涙が溢れた。スタンリーの言葉はクリスタルの心の奥にしまっていた悲しみを一つずつ取り除いてくれている気がした。

(創造神様本当にありがとう。ダリア球に連れてきてくれて)

「クリスタル泣くな。これから初めての花見に行くのだろう」

 スタンリーは優しい声で、クリスタルの頬に流れる涙を手で拭ってくれた。

「お父様ありがとうございます。クリスタルは幸せです」

「お料理とお酒、お茶は私が用意します。お父様は人集めをお願いしてもよろしいでしょうか?」

 少し鼻声でお願いした。


 クリスタルは花見の準備をワクワクしながら楽しんでいた。

 大食堂に大勢集合していた。

 スタンリーが皆の前に立ち、

「夕食の時間には早いが、今宵は桜パーティーを開催する。コールマンパラダイス領改名記念として毎年7月6日に桜パーティーを開催する。コールマンパラダイス大公執事長セバスチャンとホワイトダリア海の家統括責任者のブラットは互い協力をして来年からは領民も参加できるように開催してほしい」

「ハッ」「承知いたしました」

「今宵は桜まで歩くとするか」

 日本のお祭りのように皆で歩いて桜広場まで来たのである。

 クリスタルは看板とライトアップを設置するようにリアムとシリルに指示していた。その看板には毎年7月6日コールマンパラダイス領改名記念桜パーティー開催! と看板に記した。

「席が足らない人は花見シートを取りに来てください」

 クリスタルの元に桜の模様が描かれた花見シートを取りに集まってきた。

「席を確保したら花見弁当を取りに来てね。お酒類は奥に置いていますのでよろしくお願いします」

 暫くしてクリスチャン殿下とカールトン殿下、オーウェンも参加してスタンリーが挨拶を始める。

「この場所は先日まで領民を苦しめる忌まわしい場所であったが、これからは皆の幸せを願う象徴として桜が咲き誇ってくれるだろう。…………では、乾杯!」

「「「「「「乾杯!!」」」」」」


「お父様花見弁当です。クリスチャン殿下どうぞ、カールトン殿下も、お兄様もどうぞ。はい、シアン、セシル。シアンとセシルはこれ飲んでみて、オレンジジュースと言うの、花見弁当にはお茶の方が合うけど試してくれない?」

「おー綺麗な弁当だな。この入れ物が弁当というのか?」

(お重と言うけれど弁当箱でいいか)

「お弁当箱と言います」

「弁当が中身か」

「はい、持ち運べる簡単な料理ですね。食べてください」

「可愛くて色鮮やかな弁当は食べにくいね。叔父上、兄上、兄さん」

「では、また乾杯するか」

「「「はい」」」

 お酒が入りどんちゃん騒ぎは広まって街の人達も参加し、第一回桜パーティーは盛大に盛り上がった。


 スタンリーが、

「クリスタル桜とは可憐で美しい花だな。さっきのクリスタルの提案受けようと思う。ダリア球では国花としてダリアを大切にしているが、クリスタルの国の花とともにコールマン領は発展していきたい。桜の街としてやっていこう」

「ダリアと同様に桜も大好き。コールマン領で桜を見ながら暮らせることを幸せに思います。お父様ありがとう」

「クリスタル花見弁当に入っていたお米と言ったか? それを育てたいのだろう?」

「良いのですか?」

「構わない。我も最近は美味しく感じてもっと食べて見たくなった。お米も皆に流通して美味しさをわかってもらおう」

「はい、お父様」





 朝食をとり馬車に近づくと、スタンリーとコールマン大公騎士団長アダムとスタンリーの従者ローガンが挨拶した。

「クリスタル様おはようございます」

「おはよう。アダム、ローガン、今日はリアムとシリルも一緒によろしく」

「「はっ」」


 スタンリーとクリスタルは馬車に乗り込んだ。コールマンパラダイス城を出て、コールマンパラダイス領の中心街の大通りを抜けた先に、ホワイトダリアが見えてきた。ホワイトダリアの裏手に馬車を止め、崖に階段を創る。クリスタルは崖の上から浜辺に続く階段をイメージして…

創造魔法『階段』


「お父様、海辺まで行きましょう!」

「うむ、」

 スタンリーから降り始め、次にクリスタル、シアン、アダム、ローガン、リアム、シリルと続いて降りた。

 スタンリーが皆にシアンが元の姿に戻ることから説明した。


 クリスタルはシアンに、

「シアン、元の姿になって!」

 シアンが見る見る大きくなり二十メートルの海竜の姿になっていく。基本形はステゴサウルスに似ているが、ステゴサウルスの顔周りにはヒレはついていない。シアンの顔周りと背ビレには花のようにマーキスカットの美しいヒレが幾重にも重なって柔らかいヒレが優雅に揺れている。そのヒレと身体全体がブルーからライトパープルにグラデーションカラーになって神秘的で優美な姿をしていた。


「シアン!! 美しいー!!」

「クリスタルありがとう!!」

 竜の姿で美しく語った。

「シアンはこんなに美しい竜だったのね!! ずっと見ていたい!!」

 スタンリーも、

「ホント、美しいなぁー!! 見惚れてしまうよ!! なぁー!!」

「「「はい!!」」」


 スタンリーがここで、

「見惚れていたいけど、離島に行くとするか!」

「「「はい」」」


「シアン何処に乗ればいいかしら?」

「首の付け根辺りが乗りやすいと思う」


 クリスタルは転移魔法で皆をシアンの背中に乗せた。

「うわ――! 高いですね! 景色が違う!」

 シリルは興奮したように叫んだ。


「目線が変わるとこんな景色の情景になるのだな!」

 スタンリーも興奮気味に話した。

「シアン! 飛行がんばって!」

「うん! スタンリーパパに教えてもらったから大丈夫!」

「ハ、ハ、ハ、…」


 シアンが優雅に空に駆け上がった。木や山、大きな海、大きな空の輪郭が同じ速度で行き過ぎる。空を見上げると開放感があり鳥になったように感じる。青々とした空がどこまでも広がって空がこんなにも綺麗なことに初めて気づいた気がした。



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