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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第二十七話 支配薬


 クリスタル達は昨日迷宮の道具屋に行って驚いた。すべてのポーションに支配薬が入っているなど思いもしなかった。スタンリーには報告すると直ぐに動いてくれた。支配薬を売っていたエイブラハムが一番怪しい。道具屋の店主も取り調べを受けたが身の潔白が証明された。仕入先はやはりエイブラハムから仕入れていた。他のポーション売りよりも安くて効き目が良かったそうだ。領民は支配薬を知らず知らずのうちに飲まされ、相当蔓延していると思った。


 カールトン殿下は、

「回復ポーションに支配薬を入れても回復効果があるとは、エイブラハムは凄腕の錬金術師なのか?」

「そうだよな。ありなのか? …まぁ、…錬金術師に聞くしかないか。カル」

「商店は仕入れの時鑑定しないのかな?」

 と、カールトンは思い、

「普通の鑑定師のレベルはどれくらいだ。オリバー」

「はっきりとはわかりませんが、王城でもLv.10から採用しています」

「エイブラハムよりLv.が低い者は全てを鑑定できない。店主に聞いてみたいものだな」

 と、カールトンはオリバーをみた。

「ルーク店主に聞き取りを」

「行ってまいります」


「エイブラハムは指名手配されたが……」

「兄さん、エイブラハムは何処に逃げたのでしょう」

 クリスタルは、

「エイブラハムはカーターの元に行ったのではないでしょうか?」

 カールトン殿下も、

「カーターがミスティーナ国に入国していたら、アタニル商会に向かうかな?」

 オーウェンも、

「あり得るな。国境警備隊からの報告で、明らかになることを祈るよ」

 まだ、全ての捜索はしていないが、エイブラハムが支配薬をつくって売っていたことは判明した。エイブラハムはその支配薬でエマを使い殿下たちに支配薬を飲ませようとした。エイブラハムとサウルは繋がっているような気がしてならない。エイブラハムはサウルの商会を利用して前領地に禁忌薬を蔓延させているのではないだろうか。早く解決して領民の安全を守りたい。



 クリスタル達は魔石を取りに大通りに行く。とても良くできていて気に入った。カールトン殿下とオーウェンは別荘に向かった。クリスタルは早くリアムとシリルに魔石をプレゼントしたくて、その場でリアムとシリルの剣に魔石を取り付けた。先にはめていた魔石にバリアを付与して、「リアム、シリル、外した魔石にバリアを付与したから危ない時はバリアを発動させてね」

「ありがとうございます。大切に使います」

「危険な時は使うのよ! 何時でも付与できるからね」


 クリスタルはふと、

≪お父様、今宜しいでしょうか?≫

≪クリスタルか。何かあったのか?≫

≪エイブラハムの店舗を解体して、寛ぎの場にしませんか? いつまでも店舗があると印象的に悪いですから≫

≪待て、待て、すべての捜索がまだだ。大公騎士が隠し扉を探している。今から行くから店舗の前で待っていなさい!≫

≪はい≫


「お父様が今から来て下さるみたい。この店の捜索始めるようです。「店の前で待っていなさい」と、おっしゃっていました。それまでこの辺りをぶらりしますか?」

「シアン、何か欲しい物ない?」

「あの肉串食べたい」

「リアムとシリルは?」

「僕らは警護中なので結構です」

「じゃリアム、肉串十本買ってきてくれない」

「はい」


 お父様と合流してエイブラハムの店に入るとツンとした臭いが鼻を衝いた。科学の実験室のような設備がある室内で支配薬をつくっていた痕跡が残っていた。かなり大きなタンクの入れ物を見ると大量生産していたとわかる。その先を大公騎士の案内で隠し扉をスタンリーが開け覗くと、全く別の種類の闇が広がっていた。


 スタンリーの表情が変わり、

「クリスタル、外に出なさい!!」

 怒ったような困惑したような大きな声でクリスタルに言った。

(何かしら? 閲覧禁止!?)

 シアンと念話したのか、シアンがクリスタルの手を引っ張って外にでた。

 暫くしてクリスチャン殿下が、第一近衛騎士団を率いて来たと思ったら、すぐさま店舗の中に消えて行ったのである。

 スタンリーから念話で、

≪クリスタル、今日はコールマンパラダイス城に帰りなさい!≫

 厳しい口調であった。

 シアンには、

≪クリスタルを連れて帰ってくれ! 頼んだぞ!≫

 と念話した。


 店の中では、四人の男女が素っ裸で何か飲んでいる。この四人はここで生活していたのか、部屋は汚物まみれであった。四人の傍らには、大人の死体や子供の死体が散乱していた。この男女は食事もせず、支配薬を飲み続けた結果なのだろうか!?

 何年このような生活をしていたのか!?

 おぞましい臭いが漂って、息が詰まるほどの臭気……

 目を覆いたくなるほどの、あまりの惨状に目も当てられぬありさまだった。


 クリスチャン殿下は、冷静に店舗の内部を映像に収めていた。

「叔父上、やられました。学生が殺されています。アラバスター学院の制服です」

「なに! どこを探しても見つからないはずだ。コールマンパラダイス領まで連れ去られていたのか」

「学院長から、行方不明の学生の身分書の写しを預かっています」

「紋章で、わかるか?」

「はい、照合してみます。わからない時は、カールトンに鑑定してもらいます。他の遺体と四人も鑑定させます」

「わかった。早速、伝令する」

「すみません叔父上、エイブラハムの姿見アタニル商会の使用人に見てもらえますか?」

「よし、それも足し加えて伝令しよう」

 エイブラハムは、この四人と学生の遺体、その他の死体の事を知っていたはずだ。


 近衛騎士団が店に入ってから、たくさんの遺体が運び出された。その数分後、男女が布を纏って出てきた。近衛騎士団は男女を別荘に連行するようだ。

 スタンリーとクリスチャン殿下はあまりの悪臭に耐え切れず、

生活魔法『クリン』を使った。




 次の日、クリスタルは、昨日の惨状を知らないままエイブラハムの店舗を解体した。エイブラハムの店舗は贅沢なつくりに元タルニア邸よりも広い土地に建てられていた。そのエイブラハムの店舗を素材にあずまや風のテーブル席を何十棟も創り、周りに日本の桜を植え枯れないように付与して、この場所で花見を開催する予定にした。コールマンパラダイス領となった記念として毎年桜パーティーをすることを提案しようと思う。普段は自由に桜を鑑賞できます。

(悪用禁止です!)

 クリスタルとシアンは出来上がった公園で、ほうじ茶を飲みながら桜の景色を堪能して、コールマンパラダイス城に帰った。皆は出払っているのか静かだった。お互いの部屋でお風呂に入ることにして、お風呂で海の匂いをきれいさっぱり洗い流し、ベランダでシアンと羽を伸ばした。


 念話でスタンリーから、

≪オーウェンも今日は別荘から帰れそうにない。カールトン殿下と食事をして先に休んでくれ≫

≪はい、気を付けて≫

≪うむ、お休み≫

(何かあったのだろうか? お父様もお兄様もお強いから大丈夫と思うけど……うーん、閲覧禁止事項は気になるが、心配だわ)

 その頃、王家の別荘では、

「快楽ポーションをくれ―――――――!」

「ポーションをくれ―――――――――!」

「快楽ポーションをくれ―――――――!」

「ポーションをくれ―――――――――!」

「快楽ポーションをくれ―――――――!」

「ポーションをくれ―――――――――!」

「ポーションをくれ―――――――――!」

「くれ―――――――――!」

「くれ―――――――――!」

 獣のような叫び声が…

 切望的な鳴き声が…

 身体中の皮膚が焼かれるような唸り声が…

 牢屋の中で響いていた。


 スタンリーは諦めたように、

「どうしたものかな?」

 クリスチャンも疲れ切ったように、

「もう、人間社会では生きていけないだろう。病院に入れるにしても、これだけ騒がれると病院も迷惑でしょうね」

 スタンリーも肯定するように、

「迷惑だな。この四人で済めばいいが、支配薬はポーション類にも入っていた。この四人のような患者がまだまだ出てくる可能性がある。クリスタルを巻き込みたくなかったが、病院をつくるか!」

「叔父上、その方が宜しいかと思います」

 スタンリーは諦めたように大きなため息を吐き、牢屋の中の人間とは思えない得体のしれないものを見ると、考える力を無くした獣の叫び声しか聞こえなかった。



 スタンリーはコールマンパラダイス城に帰り今後の方針を伝えた。

 病院をつくって支配薬に侵された患者を隔離する。

 周りに住居がない場所を探す。

 心当たりがあるものは知らせる様にと伝言を残した。



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