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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第二十三話 エイスパイン

 シアンは三百年以上一人で過ごしていたなんてクリスタルには想像もできない事柄だった。

「シアン、エイスパインはどんなモンスターなの?」

「全長十メートルで、平べったい大きなヒレがあって、大きな鳥のようにも見えるかな…全身に逆立った棘があって、その大きなヒレで何でもなぎ倒すよ」

「そんなにー!? 十メートル…」

「まだ子供だから小さい」

「ちなみにシアンは?」

「僕は二十メートル位かな」

「にっ、にっ、二十メートル――!?! どうなの!? その大きさは・・・」

 クリスタルは愕然とした。苦笑いというか……どう微笑んでいいのかわからないような顔をしていた。


 そんな時アダム達が帰ってきたのである。

 スタンリーから、

「クリスタル、シアン、こっちにおいで――」

「「はーい」」

「お父様?」

「アダム達の話を聞こう!」


「報告いたします。イルナは頭がよく、記憶障害の患者に効果があると噂があり、薬の素材としてイルナを殺したようです。その噂を調べたところ全くのデマだとわかりました。どうもエイスパインを暴れさせたい者に誘導された模様。誘導した犯人は既に、この地を離れていると確認が取れました。その犯人の人相ですが、人によって姿形が異なり人相書きも難航しております。イルナを殺した犯人だけ捕らえました。申し訳ありません」


「イルナを殺した犯人は記憶障害の患者を抱えているのか?」

「そのようです」

「患者は支配薬に侵されているのではないか?」

「ハッ、患者は確認しませんでした。エイドリアン、アルバート」

「患者を連れてきます」

「カールトン後で鑑定してくれないか」

「叔父上お任せてください」


「アダム話を戻そう。イルナの死骸はどうした」

「はい、心臓はなくなっていますが、証拠品として押さえています」

「よくやったご苦労! …クリスタルどうだろう?」

「構いません。問題は魂ですから、魂が残っていれば蘇生できます」

 シアンが、

「クリスタル、魂はイルナの頭の上にあるよ」

「ほんとシアン! 早く、エイスパインに会いに行きましょう。魂が消滅しないようにバリアを張ります」

結界魔法『バリア』

 イルナと魂だけを包むバリアを張った。

 スタンリーは、

「そうだな。よし、シアン、オーウェン、それからリアムとシリル、一緒に行ってくれ!」

「「ハッ!」」


 カールトン殿下が前に出て、

「僕も行きます叔父上」

「カールトン危ないから駄目だ」

「叔父上お願いです! 行かせてください」

 スタンリーは少し考えたが……止めても無駄だと、

「危ない時は後方に控えるように…約束できるな!」

「はい! 叔父上ありがとう」

 スタンリーは硬い面持ちで、

「成功させて来い!」

 と、奨励してくれた。

 クリスタルもシアンと自分に拍車をかける様に、

「シアン、エイスパインの所まで連れて行って!」と、

 シアンは、強く「うん!」と答えた。

 早速、シアン、クリスタル、オーウェン、カールトン殿下、従者のリアムとシリルでエイスパインに会いに行った。スタンリーは、言葉に出さず表情だけだが激励してくれた。


 クリスタルは、(相手が人間だったら殺した張本人を連れて行って謝罪させるが、モンスターにはそのような感情が薄いと、シアンが言っていたけど…エイスパインは、どんな感情で暴れているのかしら? 仲間を殺されたことに対して? ただ殺されたことに対して? 仲間が死んだ事実だけ? ………解らないわ?)



 馬車の中で頭を切り替えたクリスタルは、

「エイスパインもシアンみたいに誰かと契約したらどうかしら? 今回の事でイルナは薬の素材として適していないと周りに広がったし…」

 シアンが、

「それ、いいかも!」

 クリスタルはオーウェンの方を向いて、

「お兄様、契約者になってくれませんか? シアンとも仲いいですし…」

「良いよ、シアン交渉は頼めるか?」

「オーウェン兄さん、エイスパインに聞いてみるよ」

 クリスタルは安堵した様子で、

「ありがとうシアン!」


 馬車はホワイトダリアに着いた。

 シアンがクリスタルの手を引いて、

「クリスタル、あの浜辺…」

「初めてシアンを見たところね」

「うん」


 崖に近づくにつれ磯の香りが強まってきて、頬や手に潮風が触れ少し粘ついた感触があった。

 シアンが念話でエイスパインを呼んでいるようだ。

 私達は浜辺に転移した。


「エイスパインと連絡取れたけど、まだ、興奮しているよ。危ないから後ろに下がって!」

 遠くの方から大きなうねりが盛り上がって浜辺に向かってくる。波頭が白くきらめいたと思うと、凄まじい音が聞こえ津波は目の前に迫ってきた。波が分散され落ち着いたと思ったら、波は引き潮のように波を攫って力を蓄え、遠く先に見える蜃気楼からまた大きな波が浜辺に迫ってくる。

クリスタルは、結界魔法『バリア』を、展開してそれを防ぐ。

(津波よね。街に被害が出なければいいけど……)

バリアを波が埋め尽くし、崖上のホワイトダリアまで波が届く勢いだった。

其の激しさに……数秒なのに長く感じられた。

うねりの中から巨体のエイスパインが見えてきた。

波でシアンが見えない。波の中からシアンが見え隠れしている。さすが竜、波に身体を取られていないようだがシアンに波が幾度も迫る。波がなかなか収まらない。

ゆっくり優雅にエイスパインが近づいてきてシアンと話しているようだ。

それでも、波が収まらない。

 

 暫くしてやっと波が落ち着いてきたところで、クリスタルはシアンに呼ばれて、エイスパインを紹介してもらった。

「私はクリスタルと申します。イルナの蘇生をするためにエイスパインに会いに来ました」

 シアンとエイスパインは念話で会話している。

「エイスパインが了承してくれた! クリスタル蘇生してくれる?」

「はい」


 アイテムボックスからイルナを出し

蘇生魔法『リサシティション』

 白銀の美しい魔方陣が現れイルナは白銀の光に包まれ蘇生していく………最後は眩しいくらいの大きな光が広がり、その後イルナを強い光が包み終了した。……クリスタルは蘇生したイルナを海に返した。喜んでいるのか何度も何度も飛び上がり去っていった。

「ふぅ、成功したわ! お兄様、カールトン殿下」

「よくやった!」

「うん、クリスタル!」

「後で、お祝いしよう」


 シアンはエイスパインと、まだ念話している。クリスタルはオーウェンとカールトン殿下のいるバリアの中に入ってシアンとエイスパインを待つことにした。


 シアンから、

「クリスタル、オーウェン兄さん!」

 手招きしている。

 クリスタルはオーウェンと顔を見合わせバリアから出るとシアンの所まで歩を進める。

「エイスパイン、私のお兄様オーウェンです」

「オーウェンと言います。よろしく!」

 シアンから、

「オーウェン兄さん、エイスパインと契約するから手を出して、エイスパインのこことここを触って名前を付けて、名前が決まったら「名前は○○とする!」と言って!」


 オーウェンは名前を決めていたようだ。

「名前はセシルとする!」

 眩い光を放って契約が成立した。

 エイスパインが人間の姿を取り始め……中世的で性別がわからない。

 髪はシアンとほとんど同じ色合いで瞳はインディコ色、

 シアンもセシルもクリスタルのように髪が長い。

 シアンが、

「はい、契約成立!」


 セシルはオーウェンの元に行き、

「オーウェン様よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしく」

 クリスタルが、

「セシルは女の子? 男の子?」

「私達はどちらにもなれます」

「えっ、そ、そうなの!?」

 とシアンを見る。

「うん、僕も女の子になれるよ。クリスタル女の子がいい?」

「その姿に慣れているから今はそのままがいいかな。…必要な時はお願いするかも!」

「わかった。オーウェン兄さんは?」

「僕も男の子がいいかな。友達として良き相談相手として付き合いたい」


「セシル良いのか?」

 シアンは含みのある言い方をした。

 セシルは女の子が良かったようだ。

「良いよ。いつでも変更できるから」

(今は男の子だがいつか女の子になるつもりだな)

 と、クリスタルは思った。


 クリスタルは、

「お兄様の隣の部屋を使ってもらったらどうですか?」

「そうだな。城に帰ったら案内しよう。セシル」

「はい、オーウェン様どこまでもついて行きます」


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