第二話 洗礼式
もう直ぐ五歳になります。
洗礼式が終わると、通常は大公邸でのお披露目パーティーを開くのですが、クリスタルは事情があるためお披露目パーティーは中止になりました。
「創造神様、今日も一日幸せに過ごせました。ありがとうございました」
寝る前に毎日お祈りは欠かせません。
(おやすみなさい)
五歳の洗礼式が終わるとお部屋の改装を行います。成人用に改装を行うことで男性は品格ある洗練された紳士、女性は品格のあるしとやかな淑女になり健やかに過ごせるという儀式だそうです。
(七五三祝いのようなものかな? ちょっと違うかな?)
「クリスタルお嬢様おはようございます。今日は洗礼式です。ご支度の準備に入ります」
メイドのアーライとエルザが飲み物を持って入ってきた。
「おはよう。アーライ、エルザ」
朝からお風呂に入り、クリスタルのシルバーの髪をとかしてくれる。耳上から少しの毛束を左右から取りまとめ髪留めでとめた。クリスタルは色白の肌に、頬と唇はうっすらと桜色、瞳はお父様と同じライトパープル、まつげも長く可愛いお人形のようだ。愛らしく美しい目の前のクリスタルは、守ってあげたい、もっと大切にしたいという感覚が、芽生えてしまう容姿をしている。
ドレスは、高級感溢れる白生地に白地のシフォンを重ね、そのシフォンでダリアを作りドレスに散りばめている。靴も白いダリアの花がついていてとても上品で可愛い。
(大公の紋章にダリアあったわね)
「ありがとう! アーライとエルザのおかげよ! これからもよろしくお願いします」
「もったいないお言葉」
アーライとエルザは頬に喜びを浮かべた。二人を眺めているとスタンリーとフローレスが、迎えに来た。
「クリスタルとても似合っているわ! ダリアにして正解だったわ!」
申し分ないとばかりに満足げな笑顔でフローレスはクリスタルを見ている。
「フローレス、クリスタルは本当に妖精のように愛らしい!」
スタンリーも愛しそうに見つめていた。
「お父様、お母様、とても素敵なドレスありがとうございます。とても気に入っています」
お父様とお母様に手を引かれて、馬車までエスコートしていただきました。馬車に乗り親子水入らずたくさんの会話をした。お父様はお仕事が忙しすぎて、お食事の時に少しだけお話ができる日々でした。クリスタルは少し寂しく感じていた。
教会は白を基調に歴史を感じさせ秀麗を纏っているような建築物である。
本日、洗礼式に参加する親子が並んで待っているのが見えた。
「コールマン大公様でしょうか? ご案内致します。どうぞこちらに」
司祭様の案内で応接室に通していただいた。オーウェンも合流して、出された紅茶とお菓子見つめていると…
「準備が整いました。クリスタル様どうぞ」
「はい! お父様、お母様、お兄様行ってきます」
スタンリー、フローレス、オーウェン達はクリスタルの溺愛話に花を咲かせている頃…
祭壇の前に膝をつきお祈り始める。
「創造神様の信徒として洗礼を受けに参りました。創造神様の御心のままに」
視界が変った
前にもこの場面見たことがある
青空にダリア一面の世界
貴方は・・・?
前にお会いしたことがあるわ
声は聞こえなかったけど・・・
「久しぶりだね。りこ! りこのことは前から知っているよ。いつも一人で寂しそうだったね。だから、この世界に連れてきたよ!」
「そうだったのですね」
「犯人からひどい扱いを受けて、りこの心は殆ど死んでいたからね」
「それほどまでに酷かったのですね。ありがとう。心が壊れる前に救ってくれて、この世界に来てとても幸せです。心優しい家族に恵まれて、今はクリスタルと名前をいただきました」
創造神様は慈愛に満ちた表情で頷いた。創造神様もシルバーの髪に瞳はブルー秀麗な均整の取れたお顔立ちです。教会の建物に秀麗さが出ていたのは創造神様のオーラだったのですね。 すごい!
「では、クリスタル! 前に会ったとき起きてくれなかったから気付いていないね。洗礼式の前に力を授けていたんだよ!」
「えっ!! 知りませんでした。すみません」
「では、説明するね。
創造魔法は何でも創れる魔法! 想像力が豊かだと簡単だよ。限度はあるけどね。空間魔法はアイテムボックス・飛行魔法・転移魔法・時間魔法などだね。光魔法は治癒魔法・浄化魔法・結界魔法・光攻撃魔法など、これらは、クリスタルの努力次第で使いこなせるようになると思う。先の話だが訓練を怠ることがなければ特級や神級まで獲得できるから、アイテムボックス(小)をプレゼントするよ。このアイテムボックスに、創造魔法・空間魔法・光魔法の文献を入れてある。アイテムボックスは腕輪にしてあるから、頑張ってね! もう時間がない。ごめんね。ではまたぁ―ぁ――」
創造神様は、そう言って消えた。
(想像していた創造神様と違うなぁ。軽い感じがしたのは黙っておこう)
ゆっくりと目の前が明るくなって目を開いた。
ステイタスボードが開いている。
見てみると、
『名前』クリスタル・ロス・コールマン
『種族』人間
『性別』女性
『年齢』五歳
『称号』ミスティーナ国コールマン大公家の長女・創造神に愛される者・転生者
『レベル』60
『魔力』360000
『体力』βΘ?≡*ξ∴?
『能力』?
『魔法』創造魔法
空間魔法
光魔法
『スキル』アイテムボックス腕輪
『加護』創造神に愛される者
(私のステイタスはどうなのかな? 文字化けがある……? Lv.1ではない!? 何故Lv.60なのかな??? うーん、わからん…………? そう言えば「またね!」って、言われたけど、また会えるのかな?)
心地よい祭壇の間を出て応接室に戻る。
「クリスタル、洗礼は巧くいきましたか?」
待ちきれないのか、三人同時にクリスタルを真っ直ぐ見ている。
「ステイタスボードを出します」
ステイタスボードを見せると、三人は驚嘆していた。見せてよかったのか称号に転生者?
「創造神様にお会いしたのか?………そんなことはないか………すまない」
スタンリーは予想もしていない事態を前にしてどうしていいのかわからないようす。
「はい! お会いしました! とても素敵な神様でした」
「「「えぇ―――!!」」」 三人同時に声を上げた。
「なんと! 創造神様にお会いしたのか? どんなお姿をしていたのだ!!」
「はい、え―とっ、創造神様はシルバーの髪に、瞳はブルーで、秀麗な均整の取れたお顔立ちでした」
「そのようなお姿を……」
「「「…………」」」
「クリスタルは創造神様に愛される者! クリスタルは神に愛されているのだな! Lv.60 魔力360000と!! オーウェン魔力どれほどだ!」
「僕は80000です。これでも学院一位ですよ」
「お父様、お母様、お兄様、ステイタスの魔法、スキルなどの取得方法をアドバイスして下さい。よろしくお願いします」
「「「アドバイス―!?」」」
「あの、助言です」
「領地に戻って話そう。もう一つ称号あるが、今のアドバイスとやらも、関係ありそうだな。とにかく、クリスタルが話してもいいと決めた時に聞こう。ここでは駄目だ。聞かれるとよくないだろう」
スタンリーが、教会から出るよう促す。
(お父様、お母様、お兄様に教えを頂こう)