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魔法と剣のダリア球  作者: 澪
第一章 ダリア球で生きて行く為の礎
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第十四話 浄化魔法

 

 クリスタルは学院長に視線を向け、

「学院長、授業で浄化魔法を披露するのはどうでしょう? 披露と同時に支配薬を解くのはどうですか?」

「いい考えだね。魔道具科に浄化してもらいたい穢れた魔道具があるそれを使おう」

「C校舎すべての学生を集めて浄化する必要があります」

「魔法訓練場を使いましょう」


 クリスチャン殿下が、

「授業に出るのは、クリスタル一人だと不安だ」

「兄上、僕が一緒に行くよ」

「オーウェン、それでいいか?」

「魔法訓練場は広い! クリスタルとカールトンとルークとオリバーだけでは不安だ。クリスチャン、ルーカスとメイソンを貸してくれないか? クリスチャンには僕がついている」

「わかった。

 四方にルークとオリバー、ルーカスとメイソン配置して警備して欲しい」

「「「「ハッ」」」」


 ………学院長と日程を決め、お開きとなった。


 食堂で食事をしていると、どこからか魔法攻撃の音が聞こえてきた。食堂の学生が慌ただしく出入りしている。魔法攻撃は問題のCクラスからだと報告が上がった。支配薬の支配を発動させたのか? 教師たちがCクラスに集まっていった。教師の許可なくC校舎の一部の男子学生対女子学生で対戦しているようだ。Cクラスの学生たちの魔法威力は大きくなく死人が出ることはないだろうと学院の教師たちは様子を見ていた。


 Sクラス専用食堂にステラが現れた。Cクラスの学生では、Sクラス専用食堂に入ること自体許可されていないのだが………陽動作戦で教師をCクラスに引き寄せて隙を狙ったのか? だが、ステラは知らなかった。Cクラスの担当はCクラスの教師、Sクラスの担当はSクラスの教師で構成されているこの学院では、このような陽動作戦は通用しない。


 ステラは私たちのテーブルに近づいている。

 急いでクリスタルはクリスチャン殿下とカールトン殿下、オーウェンの四人を包むバリアを張る。

「とうとう来たか」

 クリスチャン殿下はステラを睨みつけた。

 クリスチャン殿下とカールトン殿下の護衛がステラの前に立ちはだかる。

 それでもステラは、進むのを止めない。

 バリアに近づいた時、護衛がステラを取り押さえる。


「殿下と仲良くなりたいのです」

「殿下、このお茶をプレゼントします。どうか飲んでください」

 ルーカスは汚れた物でも見るかのように言い放った。

「飲むわけないでしょう。見ず知らずの者からもらったお茶など汚らわしい」

「ここはSクラスの食堂、貴方はCクラスの食堂に帰りなさい。先生お願いします」

 ルーカスは相変わらず汚いものでも見るような視線でステラを見ていた。


 教師が来て、

「クリスチャン殿下、カールトン殿下、オーウェン大公令息、クリスタル大公令嬢申し訳ありませんでした」

と、何度も何度も頭を下げてステラをひきずりながら出て行った。


 クリスタルはサンクチュリアを改良して、

創造魔法『ボードバリア』を創りだし食堂の出入り口に張った。

「これで王族を害する者は弾き飛ばされます」 


 そこに、学院長が入ってきて、

「クリスチャン殿下、カールトン殿下、オーウェン大公令息、クリスタル大公令嬢すみません。まさかCクラスからここまで来るとは………。まことに、申し訳ありませんでした」

「クリスタルがバリアを張っていたので大丈夫ですよ。今、食堂の出入り口にもサンクチュリアを張りました」

「クリスタル様ありがとうございます。それと、」

「クリスチャン殿下、カールトン殿下をお守りするのは従兄妹の役目です。

 ……学院長、何かありましたか?」


 学院長は、

「あっ、その………場所を変えて話したいのです」

 私たちは王族室に移動する。

 クリスチャン殿下が、

「学院長話とは?」

「しっ、死体が……クリスチャン殿下、カールトン殿下死体が発見されました。魔法攻撃ではなく短剣で胸を刺されていました」

「第一近衛騎士団を呼ぼう。メイソン行け!」

「ハッ」

 クリスチャン殿下は、

「付近の監視カメラを調べてください。学院長」

「わ、わかりました」



 クリスタルは衝撃を受けた。転生前も今も人が死ぬことは理解していたが、目の前で人が死んでいること、それが学院の中でおこっていることに大きな衝撃を受けた。……今……まさに……現実に死に直面して……。クリスタルは茫然自失となる。

 


 監視カメラの映像を持って学院長が入ってきた。

「これを見てください。C校舎の人目に付きにくい裏庭です。学生と男が何か話した後もみ合いになり、男に胸を刺されています。男は監視カメラがあることを知っているかのように背中しか映っていません」

「他の場所で顔は映っていませんでしたか?」

「門の出入りもフードで顔を隠していてわかりませんでした」

「そうか。この男この前一斉に監視カメラの映像を調べた時、映ってなかったか?」

「クリスチャン殿下、再度確認させます」

 と言い、学院長は王族室を後にした。






 魔法訓練場でC校舎の学生に浄化魔法を実習する日が来た。

 魔法訓練場に入ると学生たちから歓声があがった。


 学生たちを見ると、男子学生に囲まれたところにステラがいた。……何とも殺伐とした雰囲気を漂わしていた。


 壇上で先生がカールトン殿下とクリスタルの紹介を始めた。

「皆さん本日は、一年Sクラス、カールトン王子! 一年Sクラス、クリスタル大公令嬢をお招きして珍しい魔法を見せて頂きます。この箱の中には穢れた魔道具が入っています。クリスタル嬢に浄化魔法で穢れを浄化して頂きます。浄化魔法は大変貴重な魔法です。教会にお願いすると高額なため、殆どの方は浄化魔法を見ることはありません。この貴重な魔法は重要な意味があると理解してください」


 クリスタルは、Cクラスの学生を見て

(支配薬の影響を受けている学生が前より増えている)

 ことに気が付いた。


「初めまして一年Sクラス、カールトン・ロス・システィーナです。クリスタル大公令嬢の付き添い兼護衛です」

 学生たちは憧れの視線を向けカールトン殿下を崇めている。

「初めまして一年Sクラス、クリスタル・ロス・コールマンです。本日は、よろしくお願いします」

 華麗で美しいカーテシーをする。クリスタルを愛しそうに見つめる視線が溢れていた。

 挨拶が終わり魔法訓練場を見渡すと、やはり学生の瞳に覇気がない。焦点が合っていないのか……全体の雰囲気に異様なものをに感じた。


 ステラが行動を起こした。ステラが壇上に向かって歩いてくる。

 カールトン殿下が念話で、

≪来たぞ! 支配を発動させているかもしれない。ルーク、オリバー、ルーカス、メイソン頼むぞ≫

≪ハッ≫

「浄化魔法の前にお茶会をしませんか? 私が美味しいお茶をご用意します。いかがですかカールトン殿下、クリスタル大公令嬢?」

 担任がステラに、

「何を言っているのですか? 授業中ですよ! これだからCクラスは成長しない。クリスタル大公令嬢、カールトン殿下大変失礼いたしました。学院だから罪にはなりませんが、クリスタル大公令嬢とカールトン殿下に気軽に話しかけては不敬罪に問われます。よく学ぶように! ステラ、後で教職員室に来なさい」

「はい」


 ステラは小さな声で「近づけやしない」と誰にも聞こえないように言った。

 ステラは学生たちに指示している。

 支配薬に侵されている学生たちが壇上に迫ってきている。

 余りの人数で収拾がつかない。

 クリスタルはどうしたものかと考え、

(あっ、私が余りにも本を読んで寝むらなかった時、お母様が使った生活魔法『スリープ』を使おう)

生活魔法『スリープ』発動。

 その場にいた者はすやすやと眠りについた。

 カールトン殿下の傍に行き魔法『リィフトゥ』で、スリープを解除した。

 ルーク、オリバー、ルーカス、メイソンも解除する。

 

「カールトン殿下、『リィフトゥ』は使えますか? 生活魔法で母親が子供を寝かしつける時に使ったりする魔法です」

「どうかな? 使ったことがない。ルークで試してみようか? ルーク寝てくれない?」

「はぁ、仕方ありませんね」

「ゴメン」

 カールトン殿下はルークに手を合わせながら誤った。

「じゃ、行くよ! ルーク」

生活魔法『スリープ』ルークは眠りについた。そして、カールトン殿下が、『リィフトゥ』と唱えスリープを解除した。

「ルーク、おはよう」

「おはようございます。カールトン殿下」

 ルークはやれやれといった感じで起き上がった。

 クリスタルは、

「ルーク、お疲れ様。...カールトン殿下これだけの人数なので魔力を使いますが、カールトン殿下なら少しの魔力で大丈夫です。今『スリープ』で寝ている者をカールトン殿下に『リィフトゥ』で解除してもらったら、すぐに、浄化魔法を発動させます。ルーク、オリバー、ルーカス、メイソンは私の傍にいてください」

結界魔法『バリア』発動。カールトン殿下、ルーク、オリバー、ルーカス、メイソン、クリスタルの周りをバリアが包んだ。

「ではお願いします。カールトン殿下!」 カールトン殿下が、『リィフトゥ』と唱えた。

 学生たちが起き上がり、.....ステラの近くに集まっている。ステラが学生たちに指示を出している姿がこちらからも見えた。.....魔法科は魔法を発動させようと準備をして、.....剣術科は剣を構えこちらに向かって来ようとしている。

 クリスタルは、

浄化魔法『セイカース』を発動させた。

 真っ白な美しい魔方陣が、魔法訓練場全体を、温かく包み込んでいる。白く輝くキラキラの粒子が舞い落ちるさまは、とても美しく、魔法訓練場にいるすべての者が光輝き、その光は数秒続き収まった。



 支配薬の影響を受けていた学生たちは暫く呆然としていた……露わにして……

 キョロキョロと周りを見ている。

 正気に戻ったようだ。

 ステラも同じ状態だった。

(やはりステラも…)


 先生に目配せをして聞き取り調査をお願いした。


 翌日、全員の聞き取り調査の結果を学院長から詳細を報告された。

 毎日、紅茶を持って通学していたステラに、学生たちは紅茶とクッキーを勧められカップに口を付けた場面で記憶がなくなっていること。 支配薬に支配されている間の記憶が無い事がわかった。ステラにしてみても、なぜ学院に入学しているのか、わからなかったらしい。ステラの記憶は、両親と妹と仲睦まじく暮らしていた頃までの記憶で終わっていた。


 クリスチャン殿下は、

「厄介な……記憶がないだと……鑑定結果の記憶障害か。

 問題の支配薬は解くことはできたが…

 支配薬の影響は出ているが話せるようだし……ステラをもう少し探ってみるか。

 …サウルの姿見を見せ接触してないか聞いてみてくれ」

 

 クリスタルは、

「クリスチャン殿下、ステラの持っていた壺とクッキー鑑定してもらえませんか?」

「鑑定しよう」


 ステラへの聞き取り調査の結果、アタニル商会の仕事を進められた日に面接に行き、紅茶とお菓子を出され、紅茶に口を付けた場面から記憶が無くなっていること。サウルの姿見を見せると、アタニル商会の担当者が、サウルによく似ていることが判明した。アタニル商会の所在地を聞いてから聞き取り調査終わった。

 



 王族室にクリスチャン殿下、オーウェン、カールトン殿下、クリスタルの四人で昨日の話をしていた。やはり、ステラの壺とクッキーには支配薬が入っていた。ステラも操られていたとはいえ学生達に支配薬を飲ませたのはステラである。


 四人で話をしていると護衛のルーカスから、

「クリスチャン殿下、学院長がお越しになっています」

「入ってもらえ」

 ルーカスが案内する。

「どうぞ学院長、こちらへ」

 クリスチャン殿下が学院長を見て、

「何かありましたか?」

 学院長は、

「机の上に置いていたサウルの姿見を見た教師が、「アタニル商会の者だ」と、聞いて慌ててきたのです」

「しかし、サウルによく似ている者は、監視カメラに映っていないですよね。もう一度、監視カメラの映像をチェックしましょう。サウルによく似ている者が映像に映っていれば、陛下にお見せしてはっきりします。学生を殺した男性は、学生なのか業者なのか調べましょう」


 学院長はまだ話したいことがあるようだった。

 クリスチャン殿下が促すと改めて話し始める学院長

「浄化魔法を披露した日から三日遡り、監視カメラ映像を見直してみました。殺された学生と数人がステラとお茶会をしている映像を確認できました。そのお茶会に学生を殺した男も参加しています。それから、詳細に監視カメラ映像を検討したら、お茶会に参加した学生が行方不明になっているのです。一か月半学院に来ていない学生が五名おり、家族に話を聞いても寝耳に水で……。未だに学生から連絡はないそうです。五名の学生の在籍基本学科は異なりますが、皆Cクラスの学生です。こちらでも探してみましたが全く足取りがつかめませんでした。その男が学生を攫っているのではないかと……抵抗した学生は何らかの理由で殺されたのではないかと思われます」


 クリスチャン殿下は、

「学院長の推測通りだと思う。殺された学生は支配薬が効いておらず抵抗した故、殺されたと考えられる。五名の学生は何度も支配薬を飲まされ操られているのかもしれない。学院長、行方不明者の身分書の写しもらえますか?」

「はい、只今ご用意いたします」

 と学院長は王族室を出た。


「ステラはC校舎の行方不明の学生にお茶とクッキーを与え支配薬を蔓延させていた。魔法訓練場で浄化魔法を披露する前にも、C校舎で殺された学生と数人の学生、そして、殺人者とステラはお茶会をしている映像を確認できた。もう一度、監視カメラの映像を確認して行方不明者と殺された学生の行動を調べ犯人とどれだけ接触していたか確認しよう」

「「「はい」」」


 学院長が戻ってきて、

「サウルに似た者は「門の外でアタニル商会の馬車の前に立っていた」との証言がありました。殺した男の方はアタニル商会の使用人に聞くとアタニル商会に商品を納品している業者だと。なぜ学院に来たのか聞くと「学院に必要な物を見つけたい。学院を案内してくれないか」と会長に頼んだようです」

「会長サロスの取引相手が殺人者か」

 オーウェンも頷きながら、

「サロスに事情は聞かないといけないな」

 学院長も納得のようで、

「そうだ、ステラにもう一度聞いてみよう。」


 学院長

「クリスチャン殿下、行方不明者の身分書の写しです」

 クリスチャン殿下

「確かに預かりました。ステラは隔離しているのか? 学院長」

 学院長

「はい、隔離室に入ってもらっています。うろうろされてお茶をばら撒かれても困りますので…」

 クリスチャン殿下

「そうか。引き続きお願いします」

 学院長

「わかりました」


 王族室から出て行く学院長を4名で見送った。


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