第十一話 精神攻撃
クリスタルとカールトン殿下は選択科目の書類に領地経営・剣術・経済と書いて提出した。通常の授業をこなしクリスタルとカールトン殿下は、クリスチャン殿下とオーウェンと昼食をとるため食堂に向かい、和気藹々と食事をしていた。周りの学生たちからのチラチラとした視線を感じたが不愉快な感触はなかった。
「カールトン殿下、元サウル伯爵の事でお話があります。
食堂では話せませんよね?」
「そうだね。兄上とオーウェン兄さんと王族室で話そうか」
「はい!」
食事が終わり、場所を王族室に移した。
クリスチャン殿下から、
「クリスタル、サウルの事とは?」
との質問から打ち合わせが始まった。
「はい、サウルは今も精神操作薬を持って要ますよね」
クリスチャン殿下は、
「陛下も心配しているのだ。僕たちにその薬を使って傀儡にするつもりではないかと…ただ、サウルは平民だ。僕たちに近づきやすいのは学院だろう! サウルのもくろみはサウルの描いた王国をつくることだろうね。陛下は、全貴族に招集をかけ、サウルの危険性を説明し今後サウルと関わった者には厳罰に処する旨を伝えていた。僕たち以外が薬により傀儡となることは、ありえないとは思うけど・・・」
カールトン殿下とオーウェンは頷いていた。クリスタルは少し安心した。
「実は秘策があるのですが聞いてくれますか?」
「「いいよ」」
「精神攻撃無効の魔道具を創ろうと思います」
カールトン殿下は、
「創れるのか!?」
クリスチャン殿下は、
「それは良案だな! だが、できるのか!?」
と期待に満ちた表情になった。
「創れます! この指輪が精神攻撃無効の魔道具です。鑑定できる方いますか?」
クリスチャン殿下はカールトン殿下を見て、
「カールトン鑑定して」
『鑑定……………精神攻撃無効』
「精神攻撃無効になっています!!」
カールトン殿下は、心底驚いた様子で鑑定結果を告げた。
「今この指輪を持って要るのは私の家族のみです。クリスチャン殿下とカールトン殿下にもお渡ししたいのですが?」
「もちろん欲しい!! だが、こんな高度な……この世では誰も創ることのできない貴重な品をもらっても…いいのだろうか?」
「では、一度持ち帰って、陛下にお見せするのはいかがでしょうか」
「そっ、そっ、そうだな……そうさせてもらうよ」
そこで、チャイムがなり、私たちは教室に戻った。
カールトン殿下と経済の授業を受ける。
授業が終わった後、クリスタルとカールトン殿下は経済について語りながら王族室でほうじ茶を飲んだ。
クリスタルが、
「経済と聞いてなにを思い浮かべますか?」
と聞くとカールトン殿下は、
「国を治め、民を救済する政治。共同生活の維持、発展するために必要な、財貨の生産・分配・消費などの活動―――――――――――」
「国と領地運営に生かせそうだね」と答えた。
私たち四人は、今日も朝から王族室に集まり何気ない会話をしてから授業をうけ、授業の内容を深く理解するために、授業後王族室に集まる日々を過ごして居た。
「クリスタルから預かっていた精神攻撃無効の指輪の事だが、陛下も欲しいようで……「勲章と褒美を与える」との陛下からの伝言もあったよ。この預かっていた指輪は僕が着けていいのかな?」
「はぁー、ありがとうございます。はい、クリスチャン殿下の瞳色の指輪です。クリスチャン殿下大袈裟になりましたね」
クリスタルはクリスチャン殿下を可愛らしく睨みながら笑った。クリスチャン殿下も手のひらを肩まで上げ肩をすくめた。
クリスタルはカールトン殿下にも指輪を渡して、
「これはカールトン殿下の指輪です」
「ありがとう」
「では、エリーゼ殿下にも渡しましょう。王妃様はどうしましょうか?」
「母上の事は父上から聞いておらぬが、どうしたものか?」
「では、王妃様の事は陛下にお任せして後日用意しても良いですね。今回は陛下とエリーゼ殿下にお渡ししましょう。エリーゼ殿下の瞳の色は?」
「グレーだな」
「わかりましたグレーですね」
クリスタルは創りだした魔石にライトパープルの色を付けて指輪にはめた。それと同じようにグレーの魔石を創り指輪にはめた。その魔石に精神攻撃無効を付与した。
「できました!」
カールトン殿下は横で作業を見ていたので、鑑定をお願いした。
「うん完璧だ! 五人でライトパープルの指輪お揃いだね。エリーゼだけグレーは可哀想だったかな?」
「変えてもいいですよー」
クリスタルは柔らかく微笑んだ。
「渡すときにエリーゼ殿下の瞳色と説明下さると助かります。ライトパープルもそれぞれ色が違いますよ! 手を出してください」
四人が手を差し出すと
「「ほんとだー」」
陛下の指輪と見比べ、自分の指輪と四人の指輪とも見比べていた。
クリスタルは魔石を創る際、(陛下の瞳色の魔石)と心の中で唱え創っていた。四人の魔石も同じように創ったため、ほんの少しだが色が違うのだ。
今日は歴史・教養、お昼から乗馬・剣術・魔法だ。
ほとんどの学生が寮で暮らしている為、授業は朝から夕方まである。一授業は一時間三十分もあるが、歴史の授業のあと三十分休憩、教養が終わると一時間三十分のお昼休憩、乗馬が終わると三十分休憩、剣術の授業が終わると三十分休憩、最後に魔法の授業があり全て終わるのは午後6時過ぎになる。それから、選択科目の授業が始まるのである。選択教科が終わる頃には夜遅くクリスチャン殿下の護衛二人と、カールトン殿下の護衛二人がいると心強く安心感があります。
クリスチャン殿下が、
「今日はサウルの事で話したい事がある。サウルと思わしき者が三年間育てた女子学生を学院に入学させたと報告が上がった。騎士の話で「サウルとそっくりだった」という事が決め手になっている」
「側近狙いの男子学生と思っていましたが、女子学生でしたか」
クリスタルは嫌な予感しかしない。
「名前はわかっていないのか?」
オーウェンも嫌な予感がした。
「名前はわかっていない」
オーウェンは、
「クリスチャン殿下、カールトン殿下、接触はありましたか?」
「接触は、今のところない。カールトンはどうだ?」
「僕もありません。クリスタルもないよね?」
「はい、ありません。お兄様もありませんか?」
「ないな」
四人とも心当たりが無さそうです。
クリスチャン殿下が、
「学院長に報告に行くとするか!」
私たちは学院長に会いに学院長室を訪れた。
クリスチャン殿下にお任せして三人は後ろに控える。
「学院長、サウルと思わしき者が学院に平民の女子学生を入学させました。店員Aの話では、「三年前、会長がアタニル商会で面接をしていた女の子はいたかな。きれいな子だった。商会に働きに来てほしかったんだが、暫くして会長が女の子を連れ歩いているところを何度か目撃したから会長の愛人にでもなったのかと思っていたよ。その女の子は顔を見ればわかる」と、店員に女の子の姿見を見てもらう手筈になっている。店員Bの話では「三年前の女の子は「アラバスター学院に今年入学試験を受けさせた」と言っていたよ。僕も家庭教師をさがしたから覚えているよ」とのことです。騎士の中にも昔サウルとひと悶着あった者がいて「あれはサウルだ」と覚えていた。今はサウルと思わしき者だが、僕たちはサウルだと思っている」
クリスチャン殿下は、
「サウルと思わしき者が学院に入学させたのはその子ではないかと思う」
と学院長に報告すると学院長は、
「アタニル商会? 聞き覚えがある。アタニル商会と女子学生の名前こちらでも調べてみます」
との返事をもらえた。