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魔王の真実4

翌日、一条春樹は学校を休んだ。誰にもなんの連絡もせずに姿を消した。


電話も通じなくなっていた。職員が自宅を訪ねても反応はなかったという。教師の多くは学園長がどこかで事故にでもあったか、事件に巻き込まれたかと心配していた。


「やはり、逃げたか」


騒然とする職員室の中で、魔王は落ち着いた口調で言った。昨日は明日美に監視を依頼したが、その時点で手遅れかもしれないと覚悟はしていた。


「こちらの動きは監視をされていた、ということでしょうか」


胡桃の言葉に、魔王は頷いた。


「それくらいなんでもないだろう。向こうも組織だ。こちらを追跡する人員くらいはいるだろう」

「じゃあ、わたしたちに出来ることはもうなさそうですね」

「逃げた、といっても学園長の座を降りただけで、この街から逃亡したとは限らないがな」


保管しているだろう人間の血液も、時間が経てば劣化する。せっかく集めたものなら一気に使いたいと考えるはずだ。


「儀式をするにしても、ある程度の舞台は必要になる。事前に祭壇を用意していたなら、遠くへと逃げることもないだろう」

「近いうちに動きがある、ということですか」

「だろうな」

「それを待つしかないというのは、ちょっと不案な気もしますけど」

「この街に滞在しているのなら、調べる方法はある」


魔王は学園長室に移動し、ケルベロスを召喚した。


「なるほど、学園長のにおいを追跡させるんですね」

「この街にいるなら、追跡は可能だと思うが」


しかし、ケルベロスの様子がおかしい。鼻をひくひくさせても、どこかに向かう様子はない。

においを感じ取ることができないようだった。


「部屋のにおいがきついな。香水でも振り撒いていったのかもしれない」


学園長室にはかぐわしいにおいが漂っていた。においが強すぎると、ケルベロスは微妙な違いをかぎ分けることができなくなってしまう。


「用意周到だな。いつでも逃げられるように準備していたとすると、他のものを頼ることもできそうにない」

「じゃあ、どうするんですか?」

「やつが動くのを待つしかないだろう。ここまでにおいを消すということは、やはり近いところにいる可能性が高い。不完全とはいえ、魔術らしき儀式を行えばわたしなら気づくはずだ」

「大事になる前に止められますよね」

「さあな。やつが何をするのか興味もある。さっさと事を起こしてくれないかという本音も隠せない」

「そんな無責任な」

「安心しろ。やつが何かをすればわたしがちゃんと対応する。これが先祖の残した遺産によるものなら、わたしにも責任があるからな」


これも運命か、と魔王はがらにもなく思う。刹那的な生き方をしてきたにも関わらず、こうして異世界で千年前の因縁に遭遇するとは、なんとも滑稽な気がする。


「こんな状況で笑うなんて不謹慎ですよ」


そう胡桃に注意されても、魔王は楽しむ気持ちを抑えることはできなかった。

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