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娘として

派手な召喚魔術を使ったため、魔王が魔王であることはもはや隠せなくなった。


学園坂にできた森は限定召喚ですでにもとの世界へと帰っていたが、多くの人に目撃されていた。


消えたのは一瞬だったから何かのセットではないのは明らかだったし、実際に森の木に触れた人も多くいたので幻影魔法でないことも確認されている。


本人には最初から隠そうという気持ちはなかったので、学園長である一条春樹の調査にすべて認めた。


「なるほど、異世界から魂だけやってきた魔王であるということは事実であると」


フムフム、とうなずく春樹。学園長室で魔王と胡桃から説明を受けたばかりだった。


「以前にもそのようなことは聞かされましたが、あの森を見た以上、信じないわけにもいかないでしょう」

「貴様も学園長を名乗るなら一目で本質を見抜くべきだったな」


ほっほっほ、と春樹は笑った。


「いや、おっしゃるとおりで。わたくしもまだまだ修行が足らないようですな」

「棺桶に片足を突っ込んだような年齢の貴様が言うべきことではないな」

「いやいや、死ぬまでが修行ですよ。あなたのように一族の頂点に立ったわけではありませんから」

「自分の限界を見極められない貴様が愚かだと言っているだけだ」


ほっほっほ、とまた声を上げて笑う春樹。


「確かに以前の橘先生ならそのようなことは口にされなかったでしょうな。自殺未遂が原因で頭を打った影響かと思っておりましたが、まさか心そのものが入れ替わっていたとは」

「貴様は元の世界に帰る方法は知っているか?」

「いや、申し訳ありませんが、さすがにわたくしでもそのようなことは耳にしたことはおりません」


「安心しろ。最初から期待などしていない」

「ですが、協力はいたしますよ。あなたが元の世界に帰れるよう、情報収集につとめましょう」

「当然だ。学園の教師である橘悠太という存在を取り戻すことは、学園長の貴様の仕事でもあるわけだからな」

「ええ、わかっておりますとも」


高圧的な魔王の態度にも、春樹は朗らかな表情を崩さなかった。


「あの、学園長、橘先生はこれからも教師として教壇に立つことは許されるんですか?」


心配そうにそんな質問をしたのは胡桃だった。魔王などという一般的には物騒な存在が教師として認められるのか知りたかった。


「それは構いません。橘先生にはこれからは魔王教師として頑張ってもらいましょう」

「生徒たちは大丈夫でしょうか。先生が魔王だと知ったら驚いて登校拒否になる子供もいるんじゃ」

「わたしをなんだと思ってるんだ、貴様は」

「この世界では魔王というのはそういうものなんです。人間にとっては恐ろしく、そして忌むべき存在なんです」


「すべては物語の話だろう」

「でも、あなたの世界でも人間とは争っていたわけですよね」

「お互いに理由があっての対立だ。この世界のように魔王や魔族が悪という前提はなかった」


まあまあ、と春樹はとりなすように言った。


「とりあえず様子見、ということで。少なくとも、橘先生が暴力などを振るわなければ問題にはならないでしょう。学園は特殊ですから、生徒の親から抗議がくることもないと思います」

「わたしとしては教師をやめることにはなんの抵抗もないがな」

「お金はどうするんですか」


胡桃の言葉に、魔王はふむと考える。


「魔術を使った大道芸でもやるか」

「魔術は見世物ではないと言ってませんでした?」

「……」

「おや?」


春樹の座るデスクに置いてある固定電話が鳴った。魔力の影響でこの辺りは携帯が繋がりにくいので、固定電話が主流となっていた。


しばらく相手と話し込む春樹。なにやら深刻そうな顔でやり取りをしている。


「なにかあったんですか?」


電話を終えると、胡桃がそう聞いた。


「芹沢先生、あなたのクラスの来栖麗さんはご存知ですね」

「はい、もちろん」

「実はですね彼女、警察に補導されたようなのです」

「……え?」

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