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第182話「ウエディング・ポンちゃん再び」

 はじまりがあれば、おわりがある……

 ポンと村おこしも、いよいよ最終回です。

 わたしと店長さんの結婚式!

 その前に、コンちゃんとシロちゃんを亡き者にしないといけません。

 最終決戦、今、開幕です!(そんな話じゃないです)


「ポンちゃん、結婚しよう!」

 おお、タキシード店長さん登場。

 わたしの腰に腕をまわし、引き寄せて、キス!

 そうそう、わたしだっていつの間にか「ウエディング・ポンちゃん」なんだから。

「ちゅー!」

「……」

「ちゅー!」

「……」

 大体わたしが迫れば「代わり身の術」で逃げる草食店長さんが……

 でもでも、これが夢でキスがレッドでも、ちょっといつもと違います。

「ちゅー!」

 むう、いつもなら「むちゅー」みたいな感じで吸い付いてくるのに、今日はなんだかちょっと「ムーディー」かな?

 ま、レッドのキスをいつまでも受けているわけにもいきませんから、さっさと起きて引き剥がすとしましょう。

 目を見開けば、レッドの顔がいつものように「0距離」です。

 そんなレッドの顔を「ガシッ」とつかんで引き剥がすの。

「おはよう、レッド、キスはいらないです」

「おめざめのきっすゆえ」

「キスはいらないです」

「てれやさんゆえ」

 わたし、口元をパジャマの袖で拭いながら、

「ほら、レッド、そこに大好きなコンちゃんがいます、キスして起こせば?」

 そう、わたしの隣にはあられもない……ホントにすごい寝相のコンちゃんがいます。

 どうせギリギリまで朝寝するのでほっときますが……

 レッド、コンちゃんを見て頬染めすると、

「はずかしいゆえ~」

「ほら、恋人なら、熱々のキッスで起こす! ほら!」

「はずかしいゆえ、できないゆえ~」

 なんでしょうかね、わたしにはしつこいくらいキス。

 コンちゃんには「恥ずかしくてできない」ってなに?

 わたし、コンちゃんに布団をかけながら、

「でも、今日のキスはなんだかちょっと違いましたよ?」

「おお、ポン姉もわかるゆえ?」

「そりゃ、毎日キスされてればですね」

「ちよちゃにおしえてもらったゆえ」

「千代ちゃんか……」

 今日、学校でお説教しないといけませんね。

 千代ちゃん、小学生なのに、なんだか危険な予感します。

 むう、お説教決定です。


 さて、朝のおつとめ「祠掃除」を済ませて朝ゴハン。

 それが終ったら配達です。

 って、配達の準備をしているんですが……

 今日はレッドがしっぽをつかみに来ませんね。

 どうしたんでしょう?

 って、言ってるそばからレッドがやって来てしっぽを引っ張ります。

「ポン姉ポン姉!」

「しっぽを引っ張らない!」

「ポン姉、ちょっと! みるゆえ!」

「見るゆえ?」

 レッドがあんまりしっぽを引っ張るんで、ちょっと行って見ます。

 って、朝のドラマをやっていますね。

 レッド、その画面を指差して、

「あれ! あれ!」

「あれ?」

 テレビ、ドラマをやってるんですが、ちょうど結婚式のシーンですね。

 塔のようなケーキ……ウエディングケーキを見てレッド、すでに獣耳状態なの。

「あのケーキ、おおきいゆえ」

「ですね、おおきいですね、それがどうかしたんですか?」

「たべたいゆえ」

『またか~』

 この間、ホールのケーキを食べたがったのが、今度はウエディングケーキですか。

「レッド~、あんなに大きなの、食べれませんよ」

「食べるゆえ」

「いや、ゴハン入らなくなりますよ」

「むう! ごはん! どうしよう!」

「ごはんはいいからケーキ」とか言わないのはいいですね。

 レッド、モジモジして、

「でも、どーしても、たべたいゆえ!」

「はいはい、学校行きますよ、ウエディングケーキは大人になってからですよ」

「えー! おとなになってー! そんなー!」

「ほら、キリキリ歩く、学校遅刻しますよ!」

 わたし、レッドの手をとって出発です。

 ウエディングケーキ、確かに大きいですね。

 でもでも、あれ、噂で聞いた事あります。

 全部食べれるわけじゃないんですよ。

 むう、レッドに言われて、ちょっと気になってきました。

 あれだけのケーキ、何人くらいで食べたらいいんでしょうね?

 一人では、絶対無理です。

 テレビの大食い選手権の人くらいなもんですよ。


「暇じゃの」

 コンちゃん、いつものテーブルでポヤンとして言います。

「ほほう、じゃあ、トング拭きます? トングどーぞ」

「嫌じゃ」

「なにが『嫌じゃ』ですか、まったくモウ」

「暇じゃの」

 コンちゃん、やる気ゼロなのは変わらないみたいです。

 でもでも、トングを拭いたり、トレイを拭いたりはやりたくないみたい。

 これはこれで、結構時間がつぶれていいんですよ……

 時間がつぶれて……

 そんなトレイやトングも全部拭き終わっちゃいます。

 次のお仕事はどうしようかなぁ。

 売れ残りを見越して袋詰めなんてのがあるんだけど、どうしようかなぁ。

 って、レッドの帰って来る足音がしました。

 走ってますね、どうしたんでしょ?

 後から着いて来る足音はきっと千代ちゃんにみどりといったところでしょう。

『千代ちゃん……』 

 そーいえば千代ちゃん、レッドに変な知識を教え込んだから、ちょっとお説教しないといけませんね。

 まぁ、まず、おやつにしてからですね。

 レッドの足音は感じましたが、まだお店から見える所じゃないです。

 わたし、台所に行ってミコちゃんに、

「レッド帰ってきます、おやつは?」

「おやつは、今日もケーキよ」

「ケーキ、多いですね」

「なんでも配達人さんのお店の売れ残りなんだって」

 今日のケーキは全部モンブランみたいです。

 種類が一緒ならレッドも悩んだりしないでしょう。

 って、ケーキの入っている箱に「半額」のシール。

「ミコちゃん、半額って書いてあるけど」

「うん、半額どころかタダでもらっちゃったの、どうぞって」

「そうなんですか? 大丈夫ですかね?」

「さっき店長さんがお先してたから、きっと大丈夫よ」

「店長さん、実験台です?」

「スーパーではよくやってるって言ってたわよ」

 ともかくモンブランを……トレイにのっけて戻りましょう。

 ちょうど良い感じでレッドが見えてきましたよ。

 カウベルがカラカラ鳴って、レッド&千代ちゃん&みどり入店……ってか帰宅です。

「ポン姉! ポン姉!」

「レッドおかえり~、おやつするから手を洗う」

「ポン姉! ポン姉!」

「早く手を洗う!」

 わたし、モンブランをレッドの鼻先に。

 レッド、我に返ると、

「わかったゆえ!」

 ダッシュで手を洗いに行きました。

 みどり、並んだケーキを見て、

「おいしそうね」

「はい、みどりも手を洗う」

「わかってるわよ」

 千代ちゃんもみどりと一緒に行こうとします。

「待たんか!」

「え! 私だけ! なんで?」

「千代ちゃんレッドに余計な事教えてるでしょー」

「?」

「キスの仕方とか」

「ああ、私、いつもレッドにキスされるから教えた」

「いつもキスされるなら拒否してください」

「子供のやってる事だし」

「いや、わたしが迷惑なんですけど」

「ふふ、優しいキス、ドキドキした?」

 ニヤニヤしながらわたしを見上げる千代ちゃん。

 わたし、そんな千代ちゃんのほっぺをつまんで左右にビヨーン。

「千代ちゃん、余計な事教えない」

「いたいー」

「痛くしてるんですよ」

「ポンちゃん照れ屋さん」

「ほほう、いいですよ、わたし、ミコちゃんに言いますよ、レッドに余計な事教えてるのは千代ちゃんって」

 途端に千代ちゃん青くなるの。

「うわ、ミコちゃん怒ると『お尻ペンペン』痛そう」

「千代ちゃんも知ってるんですよね」

 千代ちゃんびびり顔でコクコクうなずくの。

 ってか、千代ちゃんの顔色がさらに青く、暗くなるの。

 レッドがミコちゃんを連れてやってきたから?

 ってか、ミコちゃん、怒ってます、髪がヘビみたいにうねってますよ。

 ミコちゃん、怒ってるのわかるけど、口元は微笑んでいるの。

 でも「笑顔」で「怒」は正直こわい~

 スタスタやってきたミコちゃん、千代ちゃんを連れて奥に引っ込むと、なんか叩く音が……「おしりペンペン」が聞こえてきました。

 帰って来た千代ちゃんは、叩かれて痛いよりも「おそろしいなにか」を見てやつれた感じ。

『千代ちゃん、大丈夫ですか?』

『ミコちゃんこわい』

『そんなの前からわかってますよね』

『う、うん……』

 って、レッド、千代ちゃんの手とミコちゃんの手を取って引っ張っていくの。

 一瞬わたしを見たような気がしましたが、気のせいかな?

 ミコちゃん達はパン工房でお話してます。

 わたしはコンちゃんやみどりのマグカップにコーヒーや牛乳を注ぎながら、

「レッドどうしたんですかね?」

「さてのう」

 まぁ、わたしもなんとなく聞いただけで、返事を期待したわけじゃないんですけどね。

 でもでも、見えるところで「ひそひそ話」をされると気になってしょうがないです。

 ガラス越しに話している3人。

 レッドがピョンピョン跳ねてなにか言うと、千代ちゃんが引きつり、ミコちゃんの髪がうねるの。

 千代ちゃんが引きつっているのが、なんだか見てて楽しいかな。

 むむ、なんだか話がまとまったみたいですよ。

 レッドは獣耳で出てきます。

 ミコちゃんはニコニコで、千代ちゃんは疲れた笑顔になってるの。

 レッド、わたしに一直線。

 嫌~~~な予感しかしません。

 ジャンプするレッド。

 わたしそんなレッドを「はしっ」と捕まえるの。

「なんですか、レッド」

「ポン姉、すきすき~」

 ああ、いつもの「すきすき~」です。

 キスしようとしているレッドをにらんで、

「コンちゃんにキスしたらいいじゃないですか、わたしよりコンちゃんが好きなんでしょ」

「そんな事ないゆえ」

「はいはい、じゃあ、わたしと結婚しますか! ええ、結婚できますか? ああん、結婚ですよ結婚~♪」

 レッド、まっすぐな目でわたしを見て、

「ポン姉とけっこんするゆえ、すぐけっこんするゆえ!」

「!」

「ちゅー!」

「むー!」

 わたし、瞳孔開きっぱなし。

 目の前にはキスしているレッドの顔のどアップ。

 わたし、レッドを引き離してにらみます。

 そんな視線にもレッドはニコニコで、

「ポン姉とけっこんするゆえ! だいすきゆえ! すきすき!」

 って、すぐにキスしようとするのはブロック。

 わたし、みんなを見ます。

 ミコちゃんが、千代ちゃんが、コンちゃんが、みどりが拍手してくれるの。

「「「「おめでとー!」」」」

「え? あ? ええ!」


 えっと、あっという間に「結婚式」なんですよ。

 タワーのようなウエディングケーキもあるの。

 パン屋さんは本日「結婚式・貸切」の看板。

 お客さんは常連さんとかご近所とか。

 わたしは体操服の上にウエディングドレスを着せられて、ひな壇に。

 そんなわたしのお隣には、子供タキシードなレッドがニコニコしているの。

 目の細い配達人が、

「本日はお日柄もよく、ポンちゃんとレッドの結婚式に……」

 みんなニコニコしてるの。

 店長さんがニコニコは、あとで折檻ですね、あの草食男子はまったくモウ。

 って、一人泣き濡れているのは、幼稚園の先生・レッドスキーさんです。

「レッドちゃん、ポンちゃんと結婚するの~」

 幼稚園の先生、どこまでレッドスキーですか、まったくモウ。

 ひな壇の上でわたし、全員を確認するの。

 店長さん・ミコちゃん・千代ちゃんはなにか話していますね。

 コンちゃんシロちゃんは料理をつまんで黙ってます。

 花屋も娘も食べまくりですね。

 そんな花屋の娘を遠くからイケメンさんが見ています。

 たまおちゃんは、コンちゃんを見ながらジュース。

 帽子男と長老はなにか身振り手振りで盛り上がっているの。

 豆腐屋のおじいちゃんとおばあちゃん、村長さんとお話してニコニコ。

 ポン太はみどりとウエディングケーキを見上げています。

 ポン吉は食いしん坊でいそがしいみたい。

 小学校や中学校のみんなも、ワイワイ食べているよ。

 現場監督は遊園地の職員さんとお話中。

 太っちょとやせてる職人さんはジュースが不満みたい。

 そうそう、そんな職人さんの横にははじめさんも不満顔でジュースです。

 保健の先生はポヤンとした顔で料理をつついていて、吉田先生も大人しくしています。

 麓の幼稚園の先生はさっきから泣きっぱなし。

 幼稚園の園児たち、テーブルでわいわいやってますね。

 専門学校の生徒さん達もなにかお話で盛り上がってる様子。

 って、駐在さんが牧師さんの格好でわたし達の前まで来ると、

「ポンちゃんとレッド、二人は永遠の愛を誓いますか?」

「ちかうゆえ!」

「やだな~」

 って、わたし、拒否してるのに拍手です。

 特に店長さんと配達人の拍手、大きいのをにらみます。

 駐在さん、顔色一つ変えずに……

 わたし拒否してるのに……

「では、誓いの口付けを」

「チュウ!」

「むー!」

 会場のみなさん、盛大な拍手です。

 泣いているのは幼稚園の先生くらい。

 駐在さん、あとで折檻です、わたし「やだな~」って言いましたよね!

「ではでは、ケーキ入刀です」

 レッド、ニコニコでプラスチックのナイフ持ってます。

 うーん、嫌な気持ちでいっぱいですが、流れで一緒にケーキを切らないと……

 って思ったら、レッド一人でケーキ入刀!

 わたし、立場なし?

 ってか、わたし、いらなくないですか?

 それもレッドが一人で切っちゃってるのに、みんながクラッカー鳴らす始末。

 パンパン鳴って、紙吹雪が舞って、そして拍手。

 レッド、ナイフを置くと、

「たべるゆえ!」

 万歳してから、席に着くの。

 すぐさまミコちゃんが

「ゴッド・ソード」

 光る刀が現れて、漫画みたいに一瞬でケーキを切り分けるの。

 ミコちゃんが刀を振り終えると、みんなの手元の皿に魔法のように切り分けられたケーキが着地。

「ご結婚おめでとー!」

「おめでとー!」

 配達人が言った後、みんなが続いて、そしてケーキを食べ始めるの。

 うわ、さっきのタワーみたいだったケーキ、全部食べられるバージョンだったんだ、すご。

 レッドにはほかの人より3倍くらいのケーキ。

 でもでも、レッドには大きすぎるくらいでしょ。

 レッド、そんなケーキをニコニコ顔でパクつきますよ。

 この仔キツネは本当に甘いもの好きですね。

「ほら、わたしのもあげますよ、でもでも夕飯たべられますか?」

「ポン姉~」

「はいはい」

「やっぱりポン姉とはけっこんできないゆえ」

「はぁ!」

「ポン姉はたぬきさんゆえ、きつねさんとはけっこんできないゆえ」

「な・ん・で・す・とー!」

「ざんねんゆえ」

「またんか!」

「ふえ?」

「結婚してすぐに離婚ですか? ああん? そんなの許されるとお思いか!」

「たぬきときつねゆえ」

 レッド、ニコニコです。

 うん?

 そーいえば「ヒソヒソ話」してましたよね。

 ミコちゃん・千代ちゃんをにらみます。

 千代ちゃんもニコニコで、

「あー、タヌキとキツネは結婚できないよねー」

 ミコちゃんもうなずきながら、

「あらあら、残念ね」

「二人とも、はかりましたねっ!」

 わたし、固めた拳が震えるの。

 でもでも、会場は今までにない拍手はくしゅ。

 目の細い配達人が、

「ポンちゃん残念賞!」

 みんなドカンと大爆笑です。

 わたしの殺意、後で配達人は血祭りなんだから。

 うん?

 でも!

 レッドと結婚解消なら!

 今のわたしはウエディングドレスですよ。

 そして目の前には「のほほん」と拍手している「草食店長」さんがいるんです。

 わたし、今までにないダッシュ。

 店長さんを確保。

 絡めた腕、しっかり、逃がしませんよ。

「店長さん、今、わたし、傷心、結婚して、結婚しか癒せない!」

「うわ、そう来たか!」

 そう、この草食男子は「代わり身の術」を使います。

 できるかぎり、しっかり、がっしりつかまえているんです。

 おお、店長さん、逃げ出せないようです、「身代わりの術」も発動できないみたい。

「さぁ、まず、キスからですよ、ほらほら、目を閉じる」

「たすけてー!」

「なにが『たすけてー』ですか、なにが!」

「結婚を迫る、キスを強要するタヌキが! タスケテ!」

「あきらめてキスしろー!」

「こ・わーい!」

「なにが『こ・わーい』ですか!」

 って、シロちゃんが面倒くさそうな顔で近付いて来ます。

「強姦は罪でありますが、ポンちゃんはタヌキで人間の法律はスルーであります」

「だったらシロちゃん協力して、わたし、店長さんと今ここでゴール・イン」

「本官も店長さん狙いでありますよ、協力しないであります」

 シロちゃん、わたしのウエディングドレスに手をかけると、思い切り引きちぎるの!

 ウエディングドレス、簡単に破れました。

 わたし、体操服姿になっちゃいます。

「シロちゃん、なんて事を」

「なんで体操服か考えなかったでありますか」

「?」

 シロちゃん、ポン太に目をやります。

 目と目で会話するシロちゃんとポン太。

 って、ポン太の頭上に裸電球が光りました。

 そしてポン太、コンちゃんに目をやると、

「コン姉、ごめんなさい、お色直し!」

「は! わらわ、別に……」

 ポン太が印を結ぶと、コンちゃんの体が輝くの。

 そして、光りが収まると、女子プロレスルックになってるの。

「おお、ポン太、なかなかやるのう!」

 ポン太、わたしをビシッと指差して、

「コン姉、ポン姉が店長さんを襲ってます、やっつけないと!」

「むう、そうじゃの、最近のポンはわらわをダメ女のように思っておるようじゃ、ここらでわらわが神なのを叩き込んでやるかの」

「ああん、いつもポヤンとしてリアルダメ女・女狐ですよね」

「わらわは神、気まぐれなのじゃ」

「よーし、コンちゃんを倒して、店長さんとゴールです」

「ほほう、ポンにわらわを倒せるかの?」

 レッド、どこからともなく「ゴング」持って来ました。

 千代ちゃんがニコニコしながらゴングを鳴らすんです。

 会場は一気にヒートアップ。

 わたし、ダッシュでコンちゃんにタックル。

 長い髪を引っ張ってやるんです。

「えいえい!」

「痛い、何をするのじゃ」

「痛いようにしてるんですよ、えいえい!」

「お返しじゃ!」

 コンちゃんも髪を引っ張ってきました、痛い!


 女子プロレス、久しぶりです。

 どっちが勝ったかですって?

 それはみなさんの想像におまか……わたしが勝ったに決まってるでしょ!

 そして店長さんと結婚したんだからモウ!


「これを売って欲しいって」

「はぁ」

「ヒヨコ釣りなんて、今さら流行らないよ」

「そうですか?」

「だってニワトリ、飼うの面倒くさいし」


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