表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/68

フラグと殿下も折りました

苦しむ殿下を放置して、私はさっさと儀式の間を出る。


やってしまった。

フラグを折るつもりが、殿下を二つ折りにしてしまった。

とてもきれいな二つ折りで、銅像でも作ってあげたいくらい。


それにしても、もっとスマートな婚約解消はできなかったのか?

まぁ、やってしまったことはどうにもならないから今後のことを考えよう。


平穏な日々にはもう戻れないけれど、驚くほどスッキリしていた。


「ヴィアラ嬢?おや、殿下は?」


扉の外にいたノア様が、驚いて私を凝視している。


「殴っちゃった!婦女暴行を働こうとするから、正当防衛よ!殿下は中で倒れてるわ」


「殴った!?」


ノア様は一つに結んだ銀髪が飛び跳ねるほど、すごい勢いで駆け寄ってきた。


「手を浄化しましょう!」


殿下を汚物扱い!

私は両手をノア様に取られ、なぜか聖属性の浄化魔法をかけられる。


「ノア様、殿下のことを死なないけれど動けないギリギリ程度に回復して欲しいのです。私はすぐに街を出ますから、その時間稼ぎをお願いしてもよろしいですか?」


私の言葉に、ノア様のきれいな顔が悲壮に歪む。

昔からそう。ノア様は私に甘いというか心配性というか、優しい人なのだ。

そしてメンタルが不安定である。


「はわわわわ……なんという悲劇!!教会内で婦女暴行未遂が発生するなんて、私の落ち度でございます!お詫びとしてこの魂を」


怖い!なぜ第三者の方が取り乱しているの!?


「いえ、不要です。悪いのは王子なので」


「だとしても!責任は神官長である私にございます。このノア、この先は何があってもヴィアラ嬢の味方であるとお約束します!」


「わぁ、うれしい!それじゃ、時間稼ぎお願いね!もうこの国にはいられないから、隣国にでも逃げるわ」


「えええ!?」


狼狽えまくるノア様は震える手つきで自分の長い袖の中を探り、白い宝石を取り出して私に握らせた。


「これはきっとあなたのお役に立ちます。持っていてください」


え、何これ、異世界版の詫び石?

よくわからないけれど、役に立つというならもらっておこう。


私はもう一度お礼を言って、ノア様から離れた。


「ありがとう、ノア様!」


「どうかご無事で……!」


ノア様は涙ぐみつつも、バロック殿下の治療をするべく儀式の間に入っていった。


私は淑女らしからぬ猛ダッシュで教会の中を駆け抜け、外で待っていたシドに向かって突進する。


ーーバタンッ!


「シド!」


「お嬢!?」


走ってくる私を見て、シドは目を丸くする。


「終わったわ!あまりに腹が立ったから思いきり殴ってやった!!」


彼の胸に飛び込むとちょっと驚いて足を引いたのがわかったけれど、すぐに抱き留めてくれた。

腕に包み込まれて最高に幸せな気分だ。


「お嬢!?殴ったってどういうことですか!?何されたんです!?」


「どういうことも何も、『一度くらい抱いてやろう』とか言われたから殴ったのよ!」


「はぁ!?あいつ……!!」


私はどさくさに紛れてシドの胸に頬ずりをしてから、パッと顔を上げる。


そして、今にも教会に乗りこんでバロック殿下をぶちのめそうと前のめりなシドをぎゅっと捕まえた。


「ダメ!早く逃げなきゃ!」


「大丈夫です、すぐに終わりますから!」


終わるってそれ、殿下の命が終わるよね。

ダメだから。さすがに殺したらダメだから。


せっかくノア様が時間を稼いでくれているのに、シドがトドメを刺すのはダメだ。


「それより早く!ノア様が時間を稼いでいるうちに、いったん家に戻るの!すぐに隣国へ逃げるから!」


「隣国へ逃げる!?」


私はシドと侍女を馬車に押し込んで、マーカス公爵邸へと急いで戻った。







本作は「第2回異世界転生・転移マンガ原作コンテスト」大賞受賞作品で、

2021年7月15日に書籍版が刊行です!


挿絵(By みてみん)

(ISBN:978-4047364998)

著:柊一葉

イラスト:iyutani先生

キャラクター原案:じろあるば先生


アニメイトさんをはじめ、全国の書店、ネット書店などで発売中です。

応援よろしくお願いいたします♪


※書籍化にともない大幅改稿・両片想いのドキドキ大増量につき、書籍版とWeb版は内容が異なります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ