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上沙クリスティー編 帰還手紙

 沖縄での長い雨が止み、久しぶりの青空が広がる。

 病院から出ると、大場大尉がクリスティーを待っていた。

 敬礼しようと右腕を上げようとしたら、まだ右腕が戦闘の負傷して上がらない為に、左腕で敬礼する。

「退院して、早速で悪いんだけど、ある手紙を届けてほしいの」

「手紙ですか?参謀本部からの召集命令が出てますけど?」

「そっちは、(こう)ちゃんーじゃなくて大佐から許可を貰ってるから大丈夫よ。それに、()()()しか出来ない任務だから」

 血で染まった手紙二通と軍からの死亡通知書が入った手紙。

「これって・・・・」

 先の戦いで、戦死した兵士のだ。

「本当は、後方勤務部の仕事なんだけど、大佐が、最期を看取った上沙ちゃんがやるべきだって。最期を家族に伝えろって」

「でも、私やった事ないですよ!何て伝えればいいのか・・・・」

 不安顔のクリスティーに、優しく諭すように「貴女の、ありのままの気持ちで話せばいいのよ。家族は最期を知りたいはずだから」

 例えどんな結末だったとしても家族は、知りたいはず、その言葉に、軍人だった父さんの死亡通知書を受け取った、母の姿を思い出す。

 グラウンド・ゼロが発生した際は、行方不明は全員、死亡扱いで扱われて、父さんも死亡認定が下された。

 大量に死亡認定が出た為に、軍は人手不足を理由に郵便配達人が、手紙を持って来た記憶がある。

「わかりました。やってみます」

 手紙(想い)を受け取る。

「上沙ちゃん。彼を故郷に、愛する家族の元に還してあげてね」

「必ず、家族の元に還します!」

 雨期が終わりを告げ、眩しい太陽が二人を照らす。



 大場大尉から輸送機を手配しといたとのことで、軍が使う空港に向かう。

 病院から空港までタクシーなのだが、空港に近づくにつれて、盛んにF35戦闘機が編隊を組んで飛び立って行くのが窓から見えた。

「お嬢ちゃんも、軍人さんかい?」

「えっ!?」

 白髪の男性運転士からの問いに固まる。

「いや、軍人さん相手に商売してると、分かるんだよ。戦場から帰って来た奴等と同じ目をしとる」

「目ですか・・・・?」

「そう目じゃ。心此処に在らずって目をしとる。目に光が無いんだよ」

 半信半疑で運転士の話を聞く。

「生きて戦場から帰っても、まるで死人みたいな目をするんじゃ。悪い事は言わん、早く軍人なんか辞めたほうがええ」

 窓に反射した顔を見る。瞳が濁っていた。

「わしら大人達が始めた戦争に巻き込んでしまって言えた義理ではないがな。ワシも息子を、戦争で亡くしているし」

「その・・・・何て言ったらいいのか」

 言葉に詰まる。お悔やみを言ったところで、この老人の心に、幾ばくかの慰めになるのか。

「気にしなくていいよ、ちゃんと息子は、帰ってきた」

「え?」

 白髪の老人は、ポケットから一枚の写真と手紙を出した。

 軍服姿の男性と家族が、一緒に写って居るところからして、召集前に撮ったと思われる。

「息子の遺体は帰らなかった。だが当時、息子の部下の一人が届けてくれたんだ」

 懐かしむ目で写真を見つめる。

「まだ、お嬢ちゃんと同じくらいの少年だったよ。その子が泣きながら謝るんだ、自分だけ生き残ってごめんなさいって」

「その・・・・何て言ったんです?」

「婆さんが泣きながら、息子を帰してくれてありがとうって言うもんだから、ワシも怒る気になれんかった」

 やがてタクシーが空港前のゲートに着く。

「その・・・・運転手さん。大切な話をありがとう」

「命を粗末にするんじゃないぞ。せっかくの可愛い顔が台無しじゃぞ」

「あははは・・・・努力します」

 タクシーから降りて、警備兵にIDを見せる。

 空港には、民間機もあるが、軍用機の方が圧倒的に多い。

「上沙少尉!こちらです!」

 手を振る男性の元に駆け寄る。

「竹田曹長と言います。大場大尉から言われてお待ちしてました。車があるので輸送機まで送ります」

 車に荷物を積み、走りだす。

 空港内のハンガー前には、多目的ヘリのブラックホークや小型ヘリのリトルバードが数多く駐機している。

 突如サイレンが鳴り響き、放送が入る。

「二番滑走路からスクランブル発進機が出るぞ!民間機は一旦停止しろ!」

 滑走路に大型輸送機が侵入し、ジェットエンジン音を上げていく。

 巨大な怪鳥の如く漆黒に塗装さた機体。

「曹長!あの輸送機は、何処に行くの!」

「分かりません!なんでも極秘の積荷で、参謀本部の輸送機みたいです!」

 ジェットエンジンが煩く、互いに大声を出す。

 スロットルを開けて、巨大な怪鳥が飛び立ち、続けて護衛のF35が飛び立ち、東の空に黒い鳥達は、消えていく。

 森林迷彩塗装された、輸送機が見えてきた。

「申し訳ありませんが、少尉専用にはできませんので悪く思わないでください」

 荷物を受け取り、曹長が「それと、積荷に驚かないで」

 曹長の言ってた事は、すぐに分かった。

 輸送機の中には、気が滅入る程の棺が搬入されている。木製の棺に国旗が掛けられて静かに眠っていた。

 簡易的な挫折に座ると、機長が挨拶してきた。

「ようこそ、ゴーストバードへ。久し振りに生きてる、お客さんを乗せますよ」

「上沙クリスティー少尉です。お世話になります」

 互いに軽い敬礼をする。

「気にしないで、旅客機とはいかないですが、寛いでください。それでは」

 機長はコックピットに戻った。

 鞄の中から、二通の手紙を取り出す。宛名が家族と奥さんの名前が書いてある。

 機内アナウンスで「少尉、離陸しますのでベルトを締めてください」

 機体が揺れ始め、ジェットエンジンの轟音が機内に響き、地から足が離れる感覚に襲われる。

「どんな顔して、渡せばいいんだろう・・・・」

 不安を胸に抱いて、鳥は初夏の空に旅立つ。



 眠りの中、体に衝撃が伝わる。

 自分でも眠っているのが不思議だった。いつもだと、目を閉じると、戦場の砲声や銃声がフラッシュバックして眠れなくなる。

 機内から外を見ると、着陸したみたいだ。しばらくすると機体後方のタラップが下がる。

 タラップを降りると、大勢の人々が待っていた。

 そう、棺の中に眠る彼等の家族だ。

 棺に泣きながら、すがり付く人。まだ現実を受け入れられず立ち尽くす者。

 もしかしたら自分も、あの棺の中の一つになっていたのかも知れない。そう思うと、紙一重で生きているんだと実感する。



 彼の住所は北海道の小樽なので、鉄道を乗り継ぎ向かう。

 北海道も、北部は戦場なのだが、ここにはそんな陰りも無く、のどかな風景が広がる。

「もしかしたら、上沙少尉ですか?」

 不意に声を掛けられて、顔を上げる。

 そこには、小さな子連れの女性が居た。

「そうですけど・・・・」

「失礼しました。私は、旭川戦線で連邦の死神に部隊を壊滅されそうなところを、あなたに助けてもらったんです。」

 旭川戦線と言えば、アレクサンドラことサーシャと戦った事を思いだす。

 女性をよく見ると、左腕が無いのに気づく。

「左腕は無くなりましたけど、あなたのおかげで、主人やこの子の元に帰れました」

「ママ、この人は?」

「このお姉さんはね、ママの命を助けてくれたのよ、あなたもお礼を言って」

 母親の影に隠れながら、恥ずかしそうに「ママをたすけてくれて、おねえちゃんありがとう」

「どういたしまして」

 クリスティーも子供の目線までしゃがんで、返事する。

「もしよかったら、退役軍人会に来てください。女神が来てくれれば、皆が喜びます」

「女神?」

「ご存知ないのですか?私達の間では、あなたを戦場の女神や勝利の女神って言ってるんですよ」

 自分の知らない所で、とんでもないアダ名が付いてるらしい。

「今は任務ーじゃなくて人と会う約束をしてるから、行けたら行くわね」

「わかりました、機会があったら立ち寄ってくださいね」

 軍人時代の癖なのか、そこには無い腕で敬礼しようとし、左腕で敬礼する。

 子供の手を繋ぐ、彼女の後ろ姿を見て「私のやってきた事って無駄じゃないよね・・・・」

 車窓に反射する自分に呟く。

 いつしか風景が牧場風景からレンガ造りの風景に変わる。

 ガラス細工が有名な土地で、町のあちこちに工芸品が飾られ、夜はオレンジ色に彩られ輝く街。

 彼の家は、ガラス工房と聞いていたが、街のあちこちに工房がある。

「・・・・」

 路頭に迷う。

 クリスティーは、生来の方向音痴なのだ。

 士官学校では、地図があるのに森の中で迷い、捜索隊が出た程だ。

「サクラ工房って何処だろう・・・・」

 ベンチに座り、街の名物の虹色アイスを一口食べる。

 虹色の様に七色に彩られたアイスクリーム。

「あの、うちに何かご用ですか?」

 視線を向けると、麦わら帽子を被った女性がいた。

「えっと・・・・」

 女性は帽子を取り、顔を見せる。長い栗色の髪を後ろに結び、ガラス工房の仕事で焼けたのか、小麦色の肌。

「サクラ工房って私のお店なんですよ。よかったら、ご案内しますけど?」

「・・・・お願いします」

 この人が、彼の奥さんなんだ。

 不安に釣られ、鼓動が早くなる。



 小樽運河の一画に、彼女のお店があった。店のガラスケースには、サクラ工房の名前の通り、桜色のガラス細工が並ぶ。

「桜ちゃんお帰りなさい」

 店のレジに年配の女性が座っていた。

「お義母さん、お客さんを連れてきたの、名前はー」

「クリスティー。上沙クリスティー少尉です」

 階級を告げ、軍関係の人間だと分かると、雰囲気が変わる。

「軍の人間って・・・・まさか」

 クリスティーが、鞄から死亡通知書を出す。

 ガラス細工が手から落ち、碎け散る。

「何かの・・・・常談なんでしょ?」

 泣顔の桜に、勇気を振り絞って伝える。

「この度は、お悔やみを申し上げます・・・・ご主人は名誉の戦死を遂げられました・・・・」

 お義母さんは泣き崩れ地面に座り込む。

「嘘だと言ってよ・・・・ねぇ、嘘だと言ってよ!」

 クリスティーの胸を叩きながら、悲痛な思いを吐き出す。

「こちらが・・・・彼の遺品になります・・・・」

 赤く染まった家族と奥さん宛の手紙を差し出そうとした瞬間「出てってよ・・・・早く出てって!」

 桜の泣きながらの叫び、まるで自分が彼を殺した様に見る瞳。

「了解しました。ご遺体は後日、運ばれてきますので」

 必死に平静を装って、敬礼し店を出る。

 夕焼け空を見上げ「おかしいな・・・・何回も練習・・・・したのに・・・・涙が止まらない」

 気付けば自分の瞳からも、涙が溢れている。


 夜の運河沿いのベンチに座る。

 涙は枯れ、目の下は赤くなり、人に見せられる顔じゃない。

「手紙、渡しそびれちゃった・・・・」

 クリスティーの手には、二通の手紙が握りしめられていた。

 母親と奥さん宛の手紙。

「不細工が不細工顔するな、生娘」

「え?」

 顔を上げると、大佐と大場大尉が居た。

「上沙ちゃん、大丈夫だった?」

「大場大尉!」

 思わず走りだし、大場に抱きつく。

「私・・・・わたし・・・・」

「頑張ったわね、上沙ちゃん。」

 泣きじゃくるクリスティーの頭を優しく撫でる。

「どうして大場大尉が此処に?」

「あ~光ちゃんが急に有休取って、小樽旅行に行くって言い出すから」

 ニヤリと笑い、大佐を見る。

「お前が、溜まった有休を取れ取れうるせぇからだろ!」

 顔を明後日の方向に向けて言う。

「私はてっきり、上沙ちゃんの事が気になって、仕方がないのかと」

「は?それじゃまるで俺が好きみたいじゃんかよ」

「あれ違ってた?私はてっきりロリコンかと」

「大場、てめえ」

 クリスティーを置いて、夫婦喧嘩紛いが開戦する。

「あの・・・・私の話を聞いてください!」

 クリスティーの大声で終戦する。

「光ちゃんのせいで、私達の可愛い娘に怒られたじゃない」

「そのいい方やめろ、悪寒がする」

 大佐の顔が蒼白くなる。

 二人に今までの経緯を説明した。

「じゃあ、まだ手紙は渡せてないのね?」

「はい。桜さんに出てって!と言われて・・・・」

 大場は少しも考え込んで「光ちゃん、私達も行くわよ」

「しょうがねぇな」

 頭を掻きながら立ち上がる。

 運河沿いの道を歩く。突然、大場が「昔は、私や光ちゃんも、上沙ちゃんと同じ事をやったのよ」

「二人がですか?」

 意外な話だった、二人も経験者だとは。

「グラウンド・ゼロで大勢亡くなって、駆り出されたのよ。私達の部隊、八咫烏の先代の戦隊長も亡くなったから、家族に知らせに行ったのよ」

「知ってます、ライトニング・Zeroって呼ばれてた人ですよね?」

「そう。fighter Zeroっても呼ばれてたわ。敵から速すぎて弾が当たらないって言われてね。もっと凄いのは、軍内部では、開戦反対派の急先鋒だったの」

「開戦反対派?」

「上沙ちゃんは知らないか、当時の日本は今より物騒で、軍から政府に対して他国に戦争する提案が出されていたの、開戦反対の政治家は軍の暗殺を恐れて黙りを決め込んじゃったけど、当時の国防長官と艦隊指令長官、戦隊長が、開戦の命令書に捺印をしなかったのよ。怒った国防軍の青年将校達が何度も暗殺を仕掛けてきたっけな~」

「なかなか物騒な話しですね・・・・」

「グラウンド・ゼロで軍の強硬派の連中は死んで、結局は開戦はしない代わりに、他国に侵攻されたけどね。あと戦隊長に子供がいたの、今だと高校生で、上沙ちゃんと同い年かな。知らせた時の、あの子の泣顔を今でも忘れないわ・・・・」

「そうだったんですね」

 その時の大場大尉の顔は、薄暗い街灯に照らされ、はっきりとは見えなかったが、瞳にうっすらと涙を浮かべていた。

「着いたぞ」

 大佐が歩みを止める。サクラ工房の前に再びやってきた。

 手足がが震えてくる。

 再び、拒絶されたらと思うと、逃げたしたくなった。

 ふと手紙を握る右手に人の暖かみが伝わる。

「大丈夫よ、私達が付いてるからね」

「はい」

 再び勇気を出し、扉を開ける。



 店の中は、ガラス細工が粉々に散っていた。

 桜は、床に座り込み、血だらけの手で、イルカのガラス細工を握りしめている。

「壊せなかった・・・・」

「え?」

「このイルカ、あの人のお気に入りなの・・・・私が初めて作った作品で、形だって悪いのに・・・・綺麗なイルカだって褒めてくれたの」

 彼女と同じ名前の、サクラ色のイルカ。

「もうすぐ帰還だったの・・・・新婚旅行の最中に、軍から召集命令が出て・・・・」

 次第に涙声になる。

「帰してよ!あの人を帰して!」

 クリスティーにすがり付いて、叶わぬ願いを叫ぶ。

「ごめ・・・・んなさい。わた・・・・わたしが、もっと上手く、戦って・・・・いたら」

 クリスティーは泣きながら言葉に出す。

 大場が桜の手に握られたイルカに手を置き、「思い出を、どうか壊さないでください。そして、彼の気持ちを受け取って欲しいんです」

 上沙に手紙を渡す様に促す。

 想い(手紙)が受け渡る。

 雨や血で滲んだ手紙。

 手紙を開け、桜が涙声で「涙で読めない。お願い、あなたに読んで欲しい」

 桜の願いに困惑したが、大場が頷き、手紙を受け渡る。

「桜、元気にしてますか?こっちは、雨ばかり続いてます。小樽から見る青い空がなつかしいよ。戦場に居ると、全てが遠い存在に思える。海の香り、夜の運河の夜景に君の料理。付き合った初めの頃、君は料理が下手だからって言って、中々手料理を出してくれなかったね。初めての手料理の味は刺激的な味だったよ。あの味が懐かしい。あと沖縄の海は、凄く綺麗だよ、戦争が終わったら、新婚旅行の続きは沖縄でもいいかな?君に見せたいよ、桜、会いたい、ただ会いたい、君の声が懐かしい。・・・・以上です」

 手紙を桜に戻す。

 胸に手紙とイルカを抱き寄せる。

「わたしも、会いたいよ・・・・声が聞きたいよ」

 血塗れの手紙が、涙に濡れる。



 工房を出ると、夜空は星々で輝く。

「上沙、これだけは忘れるな、誰かを殺すという事は、誰かの幸せを奪うんだ。敵味方関係なくな。殺されたから、殺して、結局は怨念返しなんだよ戦争は」

「怨念返しですか・・・・」

 私から父さんを奪った様に、あの金木犀の少女を殺すと、誰かの幸せを奪うのだろうか。

 彼女に復讐したいと思う自分がいる。私や母さんから幸せを奪った、あの悪魔に。

 何が本当に正しいのか、わからない。

「大佐、どうやったら、この戦争を終わらせられるんですかね・・・・」

「敵を皆殺しにするか、話し合いの二者択一だ。もっとも後者は、難しいがな」

 戦争は、始めるよりも終わらせるのが難しい。

 突如、大場の携帯が鳴る。

「光ちゃん、参謀本部からの連絡で、作戦の許可が出たみたいよ」

 大佐がクリスティーを見つめ「この戦争の根源を見る気は、あるか?」

 どうやったら、この戦争を終わらせられるか、まだわからない。だけど、少しでも近づけるなら。

「あります!」

 決意を決め、夜空に流れ星が流れる。



 千歳の空港に戻ると、輸送機の前で、黒い軍服姿の青年が居た。

 参謀本部直属の特殊作戦群、八咫烏にだけ許された漆黒の服。

「遅いですよ、戦隊長!」

 まだ少年のあどけなさが残り、腰には日本刀を帯刀している。狐の様な目しているが、殺気を秘めた瞳。

「馬鹿野郎、他の任務だよ」

「またまた~サボりの名人の癖に、この子が新しい人?」

 青年がクリスティーを指差す。

「あぁ、粗削りだが、素質はある」

「え?」

 珍しく大佐に、誉められた気がした。

「君が大佐のお気に入りか~僕の名前は、村正。一応、軍では小佐なんだよ。よろしくね、上沙ちゃん」

「上沙クリスティー少尉です!よろしくお願いいたします」

「堅いな~、ムラちゃんって読んで欲しいな」

 上沙の手を両手で握る。

「はぁ・・・・」

「うるせぇぞ、ムラムラ」

「戦隊長に言われると、卑猥に聞こえますから止めてもらえます?」

「てめえ!」

 鬼ごっこみたく、追いかけまわす。

 子供が遊んでいるみたいだ。

「面白いでしょ、村正君」

 大場が、二人をニコニコ見る。

「大丈夫なんですか?村正さん、八咫烏の人ってもっと恐い人達かなと思ってました」

「実力は、折り紙つきよ。彼は、唯一あの少女と戦って生き残ってるの」

「え!?」

「本人は、騎士の情けで助かったって言ってるけどね」

 あの少年の様な、青年が?

「二人供!早くしないと置いてくわよ!」

 大場のかけ声でピタッと止り、こちらに歩いて来る。

「病人の癖に元気じゃねぇか・・・・村正」

「戦隊長こそ、病み上がりを走らせるなんて、パワハラで訴えますよ・・・・」

 二人して肩を動かし、呼吸する。

「光ちゃんに村ちゃん、早く乗ってくれる?作戦に遅れるから」

 大場の圧力に、なすすべもなく二人は「はい」


 輸送機の中には、モニターが幾つもあり、北海道や沖縄の勢力図がアップされていた。

 モニターの一つに、山梨の地図が映っている。

「作戦の説明をする。今回の作戦は、時条さなえと言う科学者を捕まえる事だ。及び研究施設を完全破壊する。」

 モニターに時条さなえの顔写真が映る。

「彼女の研究施設は地下八層まである施設だ。警備は民間軍事会社と現地の駐留軍が担当している、だが厄介な事に研究施設は、甲府市の真下にある。おまけに甲府市は要塞都市計画に基づき再開発されている。迎撃システムは陸軍の装備だ」

「大佐、質問をいいですか?」

「なんだ上沙?」

「駐留軍が警備を担当してるって言いましたけど、駐留軍は味方ですよね?」

「違う、敵だ。現地の司令官は、私欲で動いてる、反逆罪で逮捕又は殺害しろ。こちらの動きに対して駐留軍は既に戦闘態勢になっている」

 味方の人間を殺す。相手は同じ軍なのに。

「話しを戻す、時条さなえをブルーと呼称する。因みにオレンジ色の髪をした女の子が確認出来た場合は、八咫烏が対応する、普通の人間じゃ殺されるだけだ」

 オレンジ色の髪をした女の子の顔写真が映る。写真の端に何故か生体兵器と書かれていた。

「更に運が悪い事に、今回の作戦は国防軍主導で、八咫烏はオブザーバー扱いだ。以上で概要説明を終わる、質問は?」

 村正が手を上げる。

「なんだ?」

「他の研究者や非戦闘員はどうします?」

「非戦闘員の無条件発砲も許可されている、研究の痕跡を残すなとの事だ」

「早い話が、皆殺しにしろって事ですね?」

 村正が、ニコニコしながら答えた。

「そうだ。これは()()()()()()()だ」

 烏達は雷鳴轟く空に消える。



 雲海に埋まる甲府市を眺める山中。

 国防軍の作戦本部に大佐達の姿があった。

 森に溶け込む様に森林迷彩のテント。

 幾つもの、大型双眼鏡で甲府市を見る兵士達。

 上空にはおびただしい程の、ひこうき雲。

 現地の司令官が「参謀本部の連中め、鳥達を四羽も寄こすとは、大袈裟だな大佐」

「いやいや、私達は見学ですよ。国防軍の反逆は同じ国防軍に後始末してもらわないと困りますからね」

「貴様ら魔術師は、そこで見ていろ」

 司令官は時計を見て「作戦開始!」

「作戦開始!繰り返す、作戦開始!アタッカーワンからトゥエルブは、対空陣地を破壊せよ!」

 無線士の号令で、上空をF2戦闘機が通過し、対地ミサイルを放つ。

 すると街の方から、幾つもの白い筋が上がり、CIWSの弾幕が放たれる。

 迎撃のミサイルだ。

 迎撃ミサイルが上がると、戦闘機はチャフを撒き散っていく。

 対地ミサイルは撃破され、迎撃ミサイルは次々と飛ぶ鳥を落とす。

「アタッカーワンからトゥエルブ、撃墜されました」

「上空のフォートレスに連絡しろ、気化弾を放て!」

 街の上空に、一発の光が落ちる。

 直後、猛烈な爆風と閃光が襲う。

「馬鹿共が、無茶しやがる」

 大佐が目の前の光景を見て呟く。

 街の表面は焼かれ、蜃気楼が出ている。

「地上部隊に連絡、地表温度が下がり次第、突入せよ。大佐、君達の出番は無さそうだな」

「だと、いいですけどね」

 司令官の嫌味に、不敵な笑みで返す。


(アルファより指令部。現在、六層まで制圧しました)

 地上部隊のガンカメラから、内部の映像がモニターに映しだされる。

 白衣を着た人間に、銃を撃ち、抵抗の意志を捨て手を上げる人間の頭を撃ち抜く。部屋に立て籠った人間には、火炎放射で生きたまま焼き殺す状景。

「酷すぎる・・・・」

 クリスティーは思わず口を手で覆う。

 彼等が同じ人間だと思うと、嫌になる。

(アルファより、指令部。オレンジ色の目標が目の前に)

 ガンカメラにオレンジ色の髪をした女の子が映った。

「撃ち殺せ!」

 司令官の合図で発砲音がスピーカーから流れる。

(弾がー貫通弾が効かないぞ!)

 モニターには、弾が弾かれる映像が出る。あれは、魔術師の結界だ。

 スピーカーからは、隊員達の悲鳴が流れる。

「我々の出番ですかね、司令官?」

 無言の司令官。

「沈黙は許可と受け取ります。大場はここで後方支援、村正と上沙と俺で突入する」

「はい!」


 研究施設の廊下は、死体の海だ。

 血は階段を川の様に下り、自動扉が閉まろうとするが死体に阻まれ、同じ動作を繰り返す。

 人の焼けた匂いが充満する。

「大場、アルファとの連絡は?」

(連絡無し、現在、ブラボーが四層で食い止めてる)

「了解」

 エレベーターがあるが、陸軍にケーブルを爆破され、階段で降りる。

 次第に銃撃の音が大きくなる。

 階段の扉を開けると、隊員が地面に倒れ込んで、少女が鉈を振り上げていた。

 クリスティーは、銃を向け「武器を捨てて!捨てなければ撃つ!」

 少女は表情を変える事なく、鉈を振り下ろそうとし大佐が「馬鹿娘が!」

 拳銃を撃ちながら、接近する。

 弾が結界に弾かれる。鉈が大佐を襲う瞬間に飛び蹴りし、鉈を飛ばす。

 少女の頭に銃を突きつけ「悪く思うなよ」

 銃声と同時に、少女の頭から血が飛び散る。

 大佐が上沙に近づく。

「すみません・・・大佐。まだ、子供だったので」

 上沙の頬を平手打ちした。

「馬鹿娘が!躊躇うな!躊躇ったら、お前が死んでいたんだぞ!」

「す、すみません・・・・」

 赤く腫れた頬を見て、背を向ける「俺や、大場も、お前の死亡通知書を母親に届けるのは御免だ」

 大佐の背を見て「はい」と頷く。

 村正が「感動のお話し中に悪いんだけど、あれ見て」

 村正の視線の方に目を向けると、何人もの少年、少女がいる。

「イカれた科学者共が!」

 大佐が毒を吐く。

 クリスティーがジャッチメントを抜き「ここは、私が」

 無言で大佐が頷く。

 獄剣を天に構え「主よ我に力を与えたまえ、我に災いをもたらす悪魔に裁きを」

 獄剣が黒い渦を巻く。

「神の裁きを、ジャッチメント!」獄剣を振り下ろし、猛烈な衝撃波が少年、少女を襲う。

 天井の照明が破壊され、非常電源に切り替わり、瓦礫の山から村正が出てくる。

「上沙ちゃん、やり過ぎ!僕達まで死んじゃうから!」

 制服に着いた、土埃をはたく。

「す、すみません!これでも加減したんです・・・・」

「嘘でしょ?」

 村正は周りの風景を見る。部屋の壁は破壊され、一つの大部屋になり、天井からは照明が、ぶら下がっている。

「上沙ちゃん、破壊神って呼んでいい?」

「はい・・・・」

 不名誉なアダ名が一つ増えた。

「冗談言ってねぇで、先に進むぞ」

 土埃の中から大佐が現れる。

「戦隊長だけ、制服が汚れてない・・・・」

 村正が大佐の制服を見るなり呟く。

「こいつのバカ力なのは、知っているからな。後方に逃げて、結界張って防いだんだ」

「流石、戦隊長。逃げ足だけは、一人前ですね」

 村正の頭に、思いっきり鉄槌を下す。

「いっ痛っ、上司からの暴力は、立派なパワハラですから、訴えますよ」

 頭をさする村正。

「あ?上官に対する反抗で、軍法会議に出すぞオラ!」

 更に、蹴りをお尻に放つ。

 階段を下り、第六層の扉を開ける。

 中央に通路が有り、左右をガラス張りの壁がある。ガラス張りの向こうの場景に「何なんですか?これ・・・・」クリスティーが呟く。

 ガラスの壁の向こうには、人間がすっぽり入る程の試験管に、先程の少女がいる。正確には、試験管の中で管に繋がれ眠っていた。

「これが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 大佐が、眠る少女を見て言った。

「根源の一つ?」

「そうだ。十年前にイカれた科学者が、考えたんだ。()()()()()()()()()()()()()ってな。魔術師の遺伝子で、作った()()()()()()()()だ」

 生体兵器と呼ばれる少女は、何十体も試験管がある。

「時条さなえは、その時の研究者の娘だ。親子揃って、イカれた科学者だがな」

 小さな試験管には、小さな人間が入っている。

 研究レポートに目を通す。(クローンの生産には成功、但し魂の複製には失敗、精神的な依存が高い精神になる、要経過観察)

(細胞を強制的に成長させてる薬物に拒絶反応有り、症状の一部に激しい頭痛)

(第一次クローンは廃棄処分する。拒絶反応が押さえられない)

(ある情報提供者により、拒絶反応が緩和。但し依然、激しい頭痛症状有り)

 正に悪魔の所業だ。

「当時の研究は東京都心部の研究所で、行われていたと聞いていたがな」

 グラウンド・ゼロの発祥の地。生物が生存を許されない、絶対領域。

「大佐・・・・この研究を主導していたのって・・・・」

 知ってはいけない答え。

「軍だ。大場から聞いただろ。当時、軍から戦争提案が出ていたと。サジタリウス計画の三つの内の一つだ」

 魔術師が量産出来れば、無敵の軍隊だ。

 だが、人として間違っている。

「グラウンド・ゼロで研究は、終わったと思っていたが、研究を引き継いだ奴がいた。それが時条さなえだ」

 空の試験管三つが目に入る。プレートに名前が書いてある。

「ウララとクララ?」

 研究レポートの最後の方に(三体が成功する、名前はウララ、クララ、アウラと名付ける)

 下層フロアの扉が開き、村正が「戦隊長、来てください。凄い惨状ですよ」

 村正に促され、扉を開けると大きな水槽がある。

「うっ・・・・」

 クリスティーが思わず吐いてしまう。

 水槽の中には、おびただしい程の廃棄された少女達が浮いている。

 水面から無数の手足が出ていた。水は赤く濁り、腐敗臭が漂う。

「ひでぇな・・・・」

 流石の大佐も、袖で鼻を覆う。

「あっちには、ガス室と焼却炉がありましたよ。奴ら一人一人処分するのが面倒だから、神経ガスを使ってたみたいです」

 村正がガス缶を地面に投げる。

 人間と言う皮を被った悪魔達だ。

「大佐・・・・私達は正義の味方なんですよね?」

 座り込む上沙は大佐の袖を引っ張る。

「そんなもん、見ようによっちゃ、俺達も悪魔だ」

 そう正しいと思って行動していても、見方によって悪になる。

 最下層の扉を開ける。

 最下層は研究者の居住エリアだ。窓には、人口の街の風景。

「気をつけろよ、まだ生体兵器がいるかもしれないぞ」

 一つ一つドアノブを回して確かめる。

 最後の部屋、時条さなえの部屋だ。

 ドアノブをゆっくり回す。

 部屋の中には、殺風景だ。ベットに、机の上に手紙。壁には、写真が貼られている。時条さなえの親子写真に研究者達の写真。

 一つの写真に目を止める。写真の人物は小さな男の子を抱く、女性の科学者。何より目を疑ったのは、一緒に金木犀色の少女が写っている。写真の日付けは十年前だ。

 写真裏を見る、名前が書いてある「茜博士、結月にジャン?」

「何か見つけたのか?」

「いっいえ」

 大佐の言葉にビックリし、写真をポッケにしまう。

「戦隊長、時条さなえは居ませんね。どうやら嗅ぎ付けたみたいです。恐らくエクスプレスに乗車したみたいで、オークションの招待状がありました」

 村正が机の手紙を大佐に渡す。

「なら心配いらない。そのオークションには、ジュリエットが参加してるからな。駐留軍の司令官は?」

「チャーリーからの連絡で、幹部連中は自決してました」

 突如クローゼットから物音がする。

 ライトと銃をクローゼットに向け、扉を掴む。

 ゆっくりと扉を開けると、二人の少女が隠れていた。

 互いに抱き合い、震えていた。

「処分しますか?」

 村正が刀を抜く。

「待ってください!」

 クリスティーが間に入る。

「上沙ちゃん、何をしてるか分かってる?命令違反で君も斬るよ?」

 村正は本気だ。狐の様な瞳に、躊躇いや慈悲を感じない。

「やめろ、村正。()()()()()()()()()()()()()。いいな?」

 村正の肩を握る。

「分かってますよ、戦隊長。恐い顔をしないでください。ビックリして、病気が再発しちゃいますよ」

 刀を納める。

「あなた達、名前を教えてくれる?私は、クリスティー。上沙クリスティー」

 少女達に手を差し出す。

 少女の一人が、彼女の手を取り「クララ・・・・。この子は、ウララ・・・・」

「クララにウララね。大丈夫よ。私達は、味方だから」

 クリスティーの言葉に安堵したのか、暗いクローゼットから飛び出し、クリスティーに抱きつく。

「怖かったね、もう大丈夫だから」

 やさしく、幼い少女達の頭を撫でる。

(光ちゃん聴こえる?軍の連中が、もうすぐそっちに行くから、脱出して)

 大場からの無線連絡を受け「了解した、第二エレベーターはまだ、無事か?」

(大丈夫。電源は、確保してあるし、軍の見取り図には、載ってないから)

「つー訳だ、脱出するぞ」

「はい」

 五人はエレベーターに急ぎ向かう。


 エレベーターから出ると、眩しい光に目が眩む。

 甲府の盆地を見下ろす丘。

「大場、脱出した。上空のフォートレスと富士の特化大隊に連絡しろ」

(了解)

 突如、上空から光が落ちた。

 巨大なきのこ雲が、上がる。地上の建物は消え去り、クレーターが出来上がった。更におびただしい程の白い矢が、降り注ぎ、花を咲かす。

「大佐・・・・彼処には、まだ味方がいたんですよ・・・・」

「俺は、研究施設を完全破壊すると言ったぞ。こんな研究が表に出てみろ、世紀末の黙示録だ」

 確かに、この研究が、世界に知られれば、第三次魔術大戦だ。

 ウララとクララを見て(研究が表に出なければ、この子達は安全なんだよね)

 百を助ける為に、一を犠牲にする。

 クリスティーは、自分に言い聞かせた。

 目の前の景色を見て「私の信じる正義って何だろう・・・・」

 もう何が何だか、分からない。私は正義の味方なの?それとも悪魔なのか。



 丘を下り、大きい国道に出た。看板には、国道20号と勝沼小学校前と書いてある。

 小学校の校庭に、漆黒に塗装されたオスプレイが羽根を休めていた。

「光ちゃん、遅かったじゃー」

 大場が、ウララとクララを見て、言葉が止まる。

「訳有りだ、暫く保護するぞ」

 大佐の言葉を聞き流し「大変、光ちゃん。私達の娘が・・・・孫を連れてきたわ!」

 目を輝かせ、二人の手を握る。

「そのいい方やめろ、また悪寒が・・・・」

「二人供、お名前は?お姉さんに教えてくれる?」

 ビックリした二人は、クリスティーの後ろに隠れる。

「だいたい、お姉さんって歳じゃなー」

 大佐の頬を銃弾がかすめる。

「何か言った?光ちゃん」

 次は眉間に当てるわよって、ニコニコ顔で銃を向ける。

「いっいや~優しいお姉さんだなって。あはは」

 二人のやり取りを見て、大場大尉には、逆らわないと、村正は決めた。

「大場大尉は、大丈夫よ。優しいお姉さんだから」

 クリスティーに促され、顔を出す。

「私はクララ、この子はウララ」

 もじもじしながら、答えた。

「光ちゃん、衛生兵を呼んでくれる・・・・」

「どっか、怪我したのか!?」

 慌てる大佐に振り返り「違うわ、三人が可愛すぎて、鼻血が止まらないのよ」

 見ると、大場の鼻から血がドバドバと出ている。

「出血多量で、死んどけ・・・・」

 呆れて、機内に乗り込む大佐。

 ターボジェットが過給を始め、回転翼が回り始める。

 上空から、甲府市を見る。街は、隕石が堕ちたみたいに穴が空いていた。

「軍の連中は、かなり怒ってたわよ」

「あいつらの負債を精算してやったんだ。感謝されたいよ。参謀本部の連中にはー」

「分かってる。研究施設並びに研究資料は、完全破壊したと報告書を上げとくわよ」

「助かる。それと二人を医者に診させろ」

「軍病院だと足がつくわよ?街医者レベルじゃ無理だし」

 大佐と大場は、ウララとクララを見つめる。生体兵器として作られた人間は、どんな状態か分からない。

「教会の連中に頼るか・・・・」

「本気で言ってるの?あんな怪しい連中に孫を預けるのは反対ですから!」

「話しがややこしくなるから、その言い方やめろ。確か、先代の戦隊長が教会の連中と交流があっただろ?名前が・・・・」

 頭を掻きながら、必死に思い出す。

「リースと、エリオットって人?」

「それだ!確か、立川で店をやっていると聞いた事がある。それに()()()()が、俺の一存じゃ押さえるのが限界だ、逃げ道を作っておきたい」

「わかった、連絡を取ってみる」

 先代の戦隊長が交流を持っていたのなら、信用は出来る。

 クリスティーが二人を寝かしつけ「大佐。沖縄で参謀本部の積荷を積んだ、大型輸送機がいましたけど、知っています?」

「いや。大場は知っているか?」

「その日の、フライトスケジュールには、無かったはずだけど」

 二人も知らない輸送機。

「参謀本部からの極秘の積荷って言ってましたので、知っているのかなと」

「その輸送機の機種は?どっちに飛んでった?」

「確か、スーパーギャラクシーで、東に飛んで行きましたけど」

「東ね・・・・村正、沖縄の補給ルートから積荷を調べろ。積荷は隠せても、細かい物資は、隠せないはずだ」

「人使い荒いな~」

 村正は、手持ちの端末を開く。

「消えた物資は、大型機関砲の弾薬と、ドローン用バッテリー、近接戦闘用の武器、魔力結晶が・・・・消えてますね」

「光ちゃん、魔力結晶が消えたとなると・・・・」

「クサいな。まさかと思うが」

 景色が八王子の街並みに変わる。

 国防軍の中央機関が、置かれている場所。

 オスプレイがヘリポートに着陸し、タラップが降りる。

 タラップの先に赤い腕章を付けた軍服姿の女性や銃を構えた兵士達が居た。

 赤い腕章は憲兵隊の印だ。

 銀色髪の女性が「大佐。あなたを国家反逆罪の容疑で逮捕します」

 上沙達に風雲、吹き荒れる。













































































































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