第5話 魔王令嬢、雨宿りをする。
宜しくお願いします!
雨が降る直前の臭いがする。
空は薄暗い雲に覆われ、湿度は高くなってきた。
鳥の魔物が地の近くを飛び、猫型の魔物は毛づくろいをしている。
この感じなら、すぐにでも雨が降ってくるだろう。
結界をはり、一時的に凌ぐことはできるが、今の時間は夕方。
どちらにしても、これ以上進むのは危険だろう。
「ララ。雨が降ってきそうだから、洞窟で今夜は過ごしたいのだけど、場所知っていますか?」
ララは、意外とこの森について詳しい。
町に案内してくれるとは言っていたが、この森全体について詳しいとは知らなかった。
嬉しい誤算だった。
だから、こういう時はララに場所を聞くのが一番なのだ。
今回だって、
『知ってるよ〜。
えっとね〜、もう少しまっすぐ進んで右に曲がったところに、あった気がするよ〜。』
ほら、結構具体的に教えてくれた。
ララの情報は、今のところ全てあっている。
前に、どうしてそこまで詳しいのかを聞いてみたが、なんでも各地に散らばっていふスライムと意思疎通できて、聞いているそうだ。
私は自分から話しかけないとできないが、
スライムはその固有スキル。
「分離・吸収・合体」の応用だろう。
スライムは、スライム同士なら合体して1つの大きい個体になれる。
逆に、その個体から合体した数と同じ数に分離できて、その際視覚共有できるそうだ。
まぁ、本人は意識すればなんか別の景色が見れるぐらいにしか感じていないそうなので、自分が何をしているのか理解していないまま、
無意識で行っていると考えられる。
私には関係ないのだが……
おっと、話がずれました。
私が言いたかったのは、スライムは自分の能力の応用で意思疎通視覚共有ができ、様々な情報が得られるということだ。
ララの言うとおり、少し前に進んで右に進んだところに大きな洞窟の入り口が見えた。
今日で旅を始めてから5日目になるが、よくよく考えたら洞窟で寝るのは初めてだ。
やはり、と言うか当たり前だがさすがに洞窟で寝るのは抵抗がある。
嫌というより、ただ単に怖いのだ。
コウモリの魔物に襲われたり、魔物から逃げて 行き止まりに行ってしまったら、危険な状態になるのは間違いない。
だが、それは外でも同じことであり、
雨に濡れるほうが後々大変だと割り切り、
私は今夜を洞窟で過ごすことにした。
「灯火」
これは、レベル1の火属性の魔法だ。
その名の通り、周りを明るく照らす初歩的な魔法。
しかし、その実用性は計り知れない。
「ありがとう、ララ。
無事に雨が降る前に洞窟にたどり着けたわ。
平坦で敵に見つかりにくい場所で過ごしたいから、もう少し奥に進んでみたいのだけど大丈夫?疲れてるなら、取り敢えずここにするけど。」
『大丈夫だよ〜。もう少し行けるよ〜。ただ、ここから先は道分からないからね〜。
後、魔物が来たら守ってね〜。』
ララもいつも通りだ。
これなら、大丈夫だろう。私とララは、襲ってきた魔物を倒しながら、無事条件に見合う最適な場所を見つけることができた。
この前気づいたことなのだが、この森は
"トライアの森"といい、生息する魔物のレベルは低くなっているようだ。
ほとんどの魔物が、Dランクまでで、時々Cランクがいる。
Bランクの魔物など、ほとんど確認されず、あまり心配することはない。
Aランクの魔物なんて、ここ10年ほど見つかっていないそうで、考えなくても大丈夫なレベルだ。
私は、早速夕食と寝る準備を始めた。
料理をする際や寝る準備をに必要な(生活する上で必用になる)魔法は、全て生活魔法に含まれる。旅前はレベル4だったこの生活魔法だが、
今までの何倍も短い間に使ったことにより、
こちらは大きくレベルUPをして、今やレベル8になっていた。
ここまで簡単に上がるものなのかは疑問だが、生活魔法は初歩的な魔法が多いためかもしれない。
しかし、レベルが上がると料理が手際よく美味しくなったり、整理整頓が上手くなったりなどいい事づくしで、物凄い便利だ。
私自身も、レベル8まで上がったことで特に不自由もなく料理が用意でき、そこそこ美味しくなっていた。
ちなみに、今日の夕食は鳥の魔物の肉を
シュレク(トマトもどき)で煮込んだ物だ。
栄養価も高く、体が温まり、魔力も微量だが回復する。
そして、なにより美味しい。
デザートには、この前取ったリアンの身実を食べることにした。
(ララは、食べるというより吸収するといった感じだ。
だが、味は感じるらしい。)
夕食を食べ終え、片付けもし終えた私は、周りに認識阻害の魔法と魔物の気配を感知することだけに特化した結界を展開した。
完全な結界は、寝ながら継続されることが難しく、結界に魔物があったた時、壁にぶつかるような感覚で魔物にこの先に何かあることを認知されてしまい狙われやすいのだ。
だから、この2つの魔法が1番効果が高く、効率がいい割には継続しやすく魔力の消費が少ないのだ。
そして、森の中を歩いたことで汚れた体を軽くだが綺麗にする。(当たり前だが、こんなところにお風呂はないので、風魔法と水魔法を合体させた綺麗な水霧を含む風だ。)
「清風」
私の体を清らかな風が包み込み、服と体についた汚れを落とす。しかし、体の疲れまでは落とすことができず、早くお風呂に入りたい。
それが偽らざる本音だった。
(はぁ。お父様とお母様ったら、一体どれだけ森の奥に私を転移させたのかしら。
早く町について、ふんわりとしたベッドで寝て 綺麗なお風呂で疲れを取りたいですわ。)
そんなことを考えながら、私は眠りにつくのだった。
◇
翌日。
まだ、太陽は登っておらず辺りは薄暗闇に包まれている。
時間にすると4時ぐらいだろうその時間に、ゆっくり静かに、だけど確かに少しづつマリアンヌ達に近づく影があった。
その影に、マリアンヌが気づくのは、
もう少し先の話………
何となく、危険な雰囲気になってきました。
明日から、また学校なのでもう少しお待ちください。(1日2日ですけど。)