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篠宮琴音現る

 同級生の女子の部屋に入る事に対して俺も一人の男子高校生として夢見ている。


 しかし、なれとは怖いもので、今その男子高校生のちょっとした夢である同級生の女子の部屋にお邪魔しているのだが、特別何も感じることはなかった。

 

 子供の頃から遊びにくる度この部屋にあげられていたので今更感じることは何もなかった。つまり、幼少期から俺は男子高校生の夢を叶えてしまっていた。


 夢を叶えてしまうとその夢が持つ憧れや期待によってキラキラしているように感じていたものも叶えるのと同時に消えてしまう。それを人は儚いというのだろうか。


 結局、夢は夢であるべきなんだと俺は思うわけで、男子高校生の夢という名の妄想は妄想している時が一番楽しく感じるわけで


 まあ、何が言いたいかと言うと、こいつの部屋に入ることに慣れていなかったら、この暇な時間もワクワク過ごす事ができたのだろうかという事だ。


 そう思うのも、鈴音に部屋に招かれてかれこれ一時間ほど経つが未だに琴音は帰ってこず、鈴音も未だに家の手伝いで戻って来ない。真白も相変わらず無口なので暇なのだ。


 鈴音が持ってきてくれたお菓子も残りは大量の飴だけしか残っておらず、真白がそれをころころ口の中で舐め回していた。べっこう飴が好きなのか、特に減っていた。


「これが好きなのか?」


 べっこう飴を指して聞くと真白は頷いていた。


「もらってもいいか」

「うん」


 一つだけもらい口に入れる。小学生くらいの時までは口に何か入れていないと落ち着かなかったためよく飴を持ち歩いていたことを思い出す。

 べっこう飴もよく持ち歩いていたと思う。


 一つの飴なんてさっさと舐め終わってしまった。また手持ち無沙汰になってしまう。


 ………………。


「しりとりするか?」

「いい」


 奥の手を一瞬で封じられる。


「んー」


 これだけはしたくはなかったが暇なので仕方がない。


「……どれ」

「どれじゃないわよ馬鹿!」

「いたい!?」


 後頭部に強い衝撃が走る。


「あんた何、人のベットの下を覗こうとしてんのよ!」


 狙ったかのようなタイミングで登場して、人の頭を殴りつけ怒っているのは幼馴染の姉妹の姉、俺と同級生の篠宮琴音だった。


「おっす琴音」


 学校の制服姿の琴音に何もなかったかのように軽く挨拶をする。


「おっすじゃないわよ!何であんた私のベットの下覗こうとしてんのって言ってんの?何?変態?」


 何事もないようにしても何もなかった事にはさせてくれなかった。


「いや、暇だったからベットの下にエロ本でも隠してないかなと思って」

「隠してないし、それ男子同士でやるノリでしょ……幼馴染だからって女子の部屋を漁るなんてありえないんだからね」


 まぁ、割といつもの事なのでそれほど琴音は怒ってないように見えた。


「で、あんたその女誰よ?」

「彼氏の浮気現場を発見した時みたいに問い詰めるのやめろ。鈴音から聞いてんだろ?」

「直接は聞いてないわ。連絡をちらっと見ただけだから詳しくは知らないの」


「そうなのか?じゃあまぁ簡潔に……」

「十字以内でよろしく」

「神代真白旅行客観光中」

「おー」


「急に無茶を振ってくるなよ……」

「ま、だいたい鈴音からの連絡と一緒かしらね」

「十字以内ならしょうがねえだろ」

「よろしく!真白ちゃん」


 無視……。


 よろしくと言われた真白は小さく頷いていた。


「観光中なのに待たせて悪かったわね」

「大丈夫」

「他に行きたい所とか行った場所とかある?」

「…………」


 真白は首を傾げている。


「あーえーと、琴音、そいつ口下手だからあんまり質問しないでやってくれるか?」

「あらそうなの?あんたそういう事をさっき言いなさいよ!ごめんね真白ちゃん」

「だから十字以内じゃ無理だって……」


「あんたもそこそこ人見知りなのによく話せたわね?ほとんど私ら以外と全然話さないのに……私の知らないとこで本当はナンパとかしてんの?」

「してねえよ……困っていた感じだから見過ごせなかっただけだよ」


 嘘だが。


「ふーん、で昨日の夜あんたの家に泊めたと……」

「そういうことだな」

「変な事してないでしょうね?」

「ばか!するわけな……」


 昨日の一緒に風呂に入ったことを思い出して言葉に詰まる。


「え!あんた本気でやったの!真白ちゃんが無口なのをいい事にあんなことやこんなことを……最低ね!女の敵!死ね!」

「何もしてねえよ!断じて!いやらしい事は!つうか酷いなお前!」


 そう、いやらしい事はない。何故ならあれは禊だから……やらしくない、やらしくない、やらしくない!


「そうなの?真白ちゃん?」


 真白は少し首を傾げてから頷いた。


「なっ、ないだろ?」

「うーん、口止めしている線もありえるわね」

「お前の中の俺そんだけ屑なんだよ……」

「ま、へたれのあんたに限ってそれはないかしらね」

「お、おう……」


 疑いは晴れたがいまいち納得がいかない。いや、へたれですけども、へたれなんですけれどね!


「で、今日この神社に観光に来たんだけど詳しい話はお姉にって鈴音に言われたんだけど」

「その辺りは何となく鈴音の連絡からわかってるわ」

「じゃあ、よろしく頼むわ」

「わかったわ。あ、真白ちゃんはいつまでここにいるの?」


 真白は首を傾げる。


「い、いま、夏休みだから気が済むまでいるっていってたぜ!」

「じゃあ、今度、祭りがちょうどあるからそれまでいたらいいと思うわ、まあ、ちょっと先だけどね」


 あーそういえば祭りの時期だったな……


「じゃあ、その祭りと絡めてうちの神社の話をしていくわ」


 そうして、琴音は神社について話し始めた。


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