いざ、神社へ
第三週目です。幼馴染の姉妹がついに登場します!
感想,誤字脱字がありましたらお願いします!
夏は暑い。そんな当たり前の事を当たり前に思わせる程に快晴の今日は、確かに爽やかな日ではあったが、もう少し曇ってくれればと思ってしまう。
こんな日に妹が部活に励んでいることを思うと帰宅部の身として思わず脱帽してしまう。
まあ、暑いのでむしろ今は帽子は被っておくべきだが。
という訳で俺は外に出かけるにあたって真白に家にあった麦藁帽子を被せる。真白の長い黒髪と白いワンピースとで絵になる組み合わせだった。どこかの品のあるお嬢様のようだった。
実際はお嬢様ではなく神様なのだが。
真白も麦藁帽子を被って家の鏡を見ながら何度か頷いてた。気に入ったようだった。
人に被せておいて自分は面倒くさいので帽子は被ってないのだが。
15年間この暑い夏を乗り越えて来ているのだ。小学生の時も中学生の時も帽子なしで駆け回ってきたが暑さにやられたことはない。暑さなど今更な話だ。
しかし、その論理でいくと、ここにおられる真白様は神様だ。
間違いなく俺よりも夏を乗り越えて来ているのだろうから帽子なんて必要ないかもしれなかったが、まあそこは俺の気遣いだ。
杞憂であればそれでいい。
昨日の夜、真白は倒れている。本人は大丈夫と言っているが無表情なので本当か嘘かも分からない。しかも、見た目は白く細い明らかにか弱い少女だ。万が一がある。
だから、本当は家に置いていこうとも考えたが、その間に何かあっても怖い、気休め程度に帽子を被せていると言うわけだ。
まぁ家で偶然見かけた麦藁帽子を似合いそうなので被せたい気持ちもあったが……
他にも、素足だったので楽のサンダルを渡し、夏に必須である虫除けスプレーや楽から勝手に借りた日焼け止め塗るなど至れり尽くせりだった。さらに、水分補給のための麦茶まで持って来ている。
ここまで準備してどこに行くのかといえば、まぁ近所の神社なのだが。歩いてすぐ。
なんなら、昨日散歩に行った砂浜よりも近い。
普段ならこんな用意はしていかないが、念のためだ。
神社へ行くのは真白が自分を神様だというのだから、近所にある神社に行けば何か分かるだろうと、まぁ捻りも何もない考えだとは思う。
しかもその神社には、ちょうど仲のいいというか、腐れ縁というか、まぁ幼馴染の二人がその神社の巫女をしている。二人は姉妹で姉が同じ学年で妹のほうは一つ年下だ。
この二人といつ、何で、仲良くなったのかは全く覚えてはいないが、幼馴染なんてそんなものだろう。物心もついてないほど幼い時から仲がいいのが幼馴染というものだ。
少なくとも俺の場合は。
ともかく。
俺たちは準備をして二人に会いにその神社に向かっているわけだ。
一つも連絡してないからいるかわからないが。
まぁいなければ待っていればいいだけだ。
さっきも言ったがその神社かなり近所だ。歩いて十分もかからないくらいの道なのだが……道中がかなりしんどかった。
夏の猛暑がではない。
真白との会話がだ。
無口な真白は話しかけても「うん」「わからない」とか首の動きくらいしかコミュニケーションをとらない。
今までは何か片手間で真白と会話していたのであまり気にならなかったが、いざこうしてただ会話してみると、気まずいこと限りなかった。
もうすぐ神社につく頃にはもう「いい天気だな」とか「暑いな~」などの気候の話を一定間隔でリピートしていた。
奥の手の「しりとりする?」を言う前に神社の鳥居の前に着いたことが不幸中の幸いだった。
不幸は言い過ぎか。無理に話す必要もない事はわかっているのだが……
鳥居の奥には階段が伸びていた。この階段を登った先に目的の神社がある。
この暑さの中これを上るのはしんどいが、回り道をして坂を登るのも面倒ではあった。
少々憂鬱だが登るしかない。
鳥居の前で一礼する。小さな時からこうするものと教えられたので鳥居をくぐる時はいつもしていた。
横を見ると真白もマネをして一礼していた。
「帽子は脱ぐものだぞ」と言おうと思ったが、真白は神様だ。何ならこの神社の神様かもしれない真白がそもそも一礼する必要もないので言うのを辞めた。
真白の顔が上がるのを見て
「じゃあ、行くか」
真白は頷く。そして俺たちはその階段を登り始めた。
まぁ、そこまで大仰に言うほど長い階段ではないのだけれど。多少、足腰にくるくらい。
百段もないと思う。数えた事はないけど。
それでも、ジャンケンで勝った方が階段を登るゲームを真白として、途中で飽きて辞めるくらいには長かった。
グリコにおまけくらい付ければよかったかもしれない。
まぁ、何にせよ少し息切れしながらも階段を登りきった。
一方、真白はというと汗一つかいていなかった。体力は俺よりあるようだ。
階段の先には広い境内とまぁまぁ立派な本殿が見えた。
そしてそこに一人、手に竹箒を持って参道の掃除をしている人影を見つけ声をかける。
「おーい、鈴音!」
後ろに垂らした一本の三つ編を揺らしながら振り返った。
「おー幸兄い」
俺を幸兄いと呼ぶのは、この神社の娘で幼馴染の姉妹の妹の方の篠宮鈴音だ。
鈴音の服装は神社の娘らしく巫女服などではなく、楽と同じ中学校の指定されたジャージ姿だ。
「どうしたんすか?」
幼馴染のくせに敬語を使う変なやつだった。俺が高校に入学してすぐに使い始め「やっぱり、後輩キャラって必要っすからね」なんてよくわからない事を言っていた。
もう夏にもなるが未だに慣れなかった。
「なあ、その敬語直らないのか?」
「無理っすね」
即答された。キャラ付けか……思春期なのだろうか。自分の特別が欲しい、アイデンティティを確立したいってことなんだろうか。
「それを言うなら幸兄い、私はそのクールなフリやめて欲しいっす」
「…………」
二人で思春期だった。まぁ一つしか歳が変わらないので当たり前だろうか。
「昔は全裸で校内を走り回ってスカートめくりしていた幸にいはどこへ行ったんすかね」
「そんな破天荒じゃなかっただろ!?」
「あ、全裸で走り回ってただけでしたね?」
「せめてスカートめくりにしてくれませんかね!?」
いや、スカートめくりもしてないけど……
「くくっ、やっぱ幸兄いはそうやって声を荒げているほうがらしいっすよ」
鈴音は言いながら笑っていた。なんだかすごく恥ずかしい。
「でっ、今日はどうしたんすか?その横に連れている美少女と関係あるんすか?」
「あーそうだった……」
いきなり無駄話だった。
「えっと実はな……」
本当のことは言わずに妹と同じ説明をした。
「真白さんっすか。わざわざこんな田舎に旅行に来たっすね」
真白は頷く。ちゃんと合わせてくれるらしい。
「そう。まぁだから今日はこの神社を観光しに来たってわけだ」
「なるほど理解したっす!……って言っても私この神社に詳しくないっすよ?」
「何でだよ?」
「いや~そういうのはお姉が覚えてるっすからね」
「あー」
納得だった。鈴音が言う、お姉はそのまま幼馴染の姉妹の姉の篠宮琴音のことだ。
「お姉は頭いいっすけど、私は全然っすからね、あんまり家の事は知らないんすよ」
「そうだったな」
残念ながら
「まぁ本当に全然ってわけじゃないっすけど、お姉に聞いたほうが確かだとは思うっすよ」
「その肝心のお姉はどこにいるんだ?」
「部活行ってるっすよ」
「部活って……」
琴音は軽音部なのだが、人数が揃わず活動をしていなかったはずなのだが……
「いつ帰ってくるかわかるか?」
「午前にちょっと行って帰って来るって言ってたっすから、もう帰ってくるはずっすけど」
「じゃあ、琴音が帰って来るまでここで待っててもいいか?」
「もちろんいいっすよ。私はまだ家の手伝いがあるっすから勝手に部屋で待っててくださいっす」
「ありがと、真白もそれでいいか?」
「いい」
「じゃあ、先入っててください。後でお菓子とお茶でも持って行くんで……あっ真白さん好きなお菓子あるっすか?」
「あめ」
「飴っすね!いっぱい持っていくっす!じゃあこちらからどうぞ」
俺と真白の二人は鈴音に案内されて神社にお邪魔した。