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記憶のない神様3

第二週目の投稿です!感想、意見、批評、お待ちしています!

 背中で寝ている神様を部屋のベッドに仰向けに寝かせる。スースーと寝息をたてている。

 寝ている神様の綺麗な白い髪に手を伸ばし撫でる。サラサラとした手触りが手の平に伝わってくる

 

やっぱり触れる事ができる……

 

正確には触れた実感があるだろうか。さっきまで触れているのにそこには何もない、目を瞑れば本当に誰もいないかのようだったはずの神様が、今は触れた事実がそのまま触感や温もりとして返ってきていた。


 いったい何が起きているのだろうか?神様と会ってまだ間もないと言うのに、理解が追いつかない事ばかりが起こる。 

楽に名前を聞かれて咄嗟に名前をつけた事が関係しているのだろうか?

 

確かに名前をつけた瞬間に神様から触った感覚がするようになった。けれど、何故そうなったかがわからない。

 そもそも本当に関係しているのかどうかもわからない。


 何の神様だったか時間帯によって性別が入れ替わる神様がいたという。それと同じで名前をつけたタイミングにそれと似たような事が起こったのかもしれない。

 何にせよどれも憶測の域は超えないだろう。


 神様について無知だった。まぁしかし、自分のような普通の高校生に神道の詳しい知識があるわけもない。


 琴音と鈴音なら何かわかるのだろうか……


 幼馴染の二人の姉妹を思い出す。神道の事ならば神社の娘である二人なら少なくとも自分よりは詳しいだろう。もし神様が二人の神社の神様ならいま何が起こっていて、いったい誰を待っているのかわかるかもしれない。


「まぁ俺がいま考えても無駄ってことか……」


 無知で無力。偶然出会った神様だけだが、どうにかしてやりたい気持ちはあったが自分にはどうしようもない事実がもどかしかった。

 やるせない気持ちが込み上げ自分の髪を掻く。神様の髪と違いゴワゴワとした触感がする。

 潮風のせいで髪の毛がきしんでしまったようだ。


 そういえば、なぜ神様の髪はサラサラしてきしんでないんだ?


 長く伸びている後ろ髪の端を触る。


 やっぱりすごくサラサラしている。それに足も素足だったと言うのに砂粒一つ付いていないな。


 ずっと海で待っていたと言っていたが服にも体にも何処にも汚れが見当たらない。これも神様の特別な力なのだろうか?

 次から次と……本当に不思議に困らない。


 きしんだ自分の髪をもう一度触る。「スンスン」鼻を押し当て体の臭いを嗅ぐ。


「……風呂に入るか」


 一応、夏の夜に女の子一人分を背負って少し離れた海から家まで帰っている、結構な量の汗をかいていた。

 重さを感じるようになったのだから妹に神様の正体がバレる心配もなくなった訳だから少し放って置いても大丈夫だろう……多分……


 まぁ楽も寝ると言っていたから大丈夫だろう。あれで結構真面目な性格だ。明日の部活に支障があるまで起きている事はないだろう。一応もう少し経ってから入ろうか。

 

 着替えの準備だけ済ませておこうと思い服を入れてあるタンスからガサガサと着替えを取り出していると


「こーいち」


 ベッドから神様の声が聞こえた。見ると神様が目を開けていた。


「あ、ごめん、起こしたか?」


 神様は首を振って大丈夫と伝えたてから、上半身を起こし神様はキョロキョロと部屋を見渡し始めた。


「えーと、ここは俺の家だよ。急に倒れたから連れてきたんだけど……まずかった?」

「いや、いい」

「そっか、よかった」


 それしかないとまで言っていた割には意外とあっさりとしていた。今日はもう諦めていたのかもしれない。


「えっと、大丈夫なのか?」

「ん」


 短い返事だが多分、「うん」と言っているのだろう。それを聞いてとりあえず安心する。


「倒れたことって今まであったのか?」

「ない……はず」


 そうか、この一週間の記憶しかないんだったな。

 答えられてから気づく。神様自身も自分に何が起こっているのか分かっていないのだ。それなら急に重さを感じるようになった理由もわからないかもしれない。


「本当に体調が悪いとかないんだな?」

「ない」


 本人が言うには元気なようだった。いや、あまりにポーカーフェイスなので本当かどうかわからないが。まぁ嘘をつく理由も考えられないので元気なのだろう。


「あ、そうだ神様、神様が寝ている間に勝手に神様の名前つけちゃたんだけど……」


 簡単に玄関で会った出来事を神様に教える。


「かみしろましろ……」


 勝手につけられた名前を神様がつぶやく。そして、三回頷いたかと思うと


「きにいった」


 と何故かやたらと満足そうだった。


 いや、気に入ってもらって何よりですけども……


「じゃあ神様、俺は……」

「ちがう」


 神様が急に話しの腰を折ってきた。風呂に行くと言おうと思ったのだが。何が違うのだろうか?


「かみさまじゃ、ない」

「はい?」


 神様じゃない?神様だという事が嘘だと言っているのだろうか?その事を聞いてみると神様は首を振る。違うらしい。


「わたしは、ましろ」


 あ、そういうことか。


「神様じゃなくて真白って呼べってこと?」


 神様は頷く。正解らしい。いちいち意思疎通に苦労してしまう。確かに神様……じゃなくて真白からすれば、俺が人間だからって「おい人間」と呼ばれているのと同じようなものだ。いい気はしないだろう。

 それとも余程、この名前を気に入ってくれたのか。


「えーと、じゃあ真白?」


 真白は三回頷いた。満足したら多く頷くみたいだった。


「俺は風呂に入るからそのベット使っていいからゆっくり寝ていてくれ」

「わたしも」

「真白も入りたいのか?じゃあ先に入るか?俺は後でいいから」


 さっき見ても触ってもどこも汚れていなかったようだったが……綺麗好きなのだろうか?もしかすると、砂浜で待っていた時もどうにかして風呂に入ったりしていたのだろうか?


 何て考えていると真白は首を振る


「いっしょに」

「ん?な、何だって?」


 な、何だか聞き返すことが多いな、何て言ったのだろう?


「いっしょに、はいる」

「あーなるほど!一緒にね!よし!じゃあ一緒に入ろうか!……ってなると思う?」

「……なぜ?」


 真白は首を傾げた。本気で分かってないらしい。これが神様と人間の価値観の差なのか?人間風情に裸体を見られるくらい何でもないとでも言うのだろうか?


「というか、何で俺と一緒じゃないといけないんだよ?」

「みそぎ」

「禊?」


 コクッと頷く真白。禊って、あまり詳しくないが、自分の穢れを祓うためのものだったか。そんなことをちらっと琴音だったか鈴音が言っていたような気がする。


「俺が必要なのか?」

「ひつよう」


「本当に?」

「ほんとう」


 真偽が読めない。真白は全く表情を崩さずに言う。このポーカーフェイスがまさかこんな形で俺に牙を剥いてくるとは……


「みそいで」

「いや、急いでみたいに言われても……」


 ……流石に今の事は勘繰り過ぎだったかもしれない、無口な真白がそんなギャグめいた事を言うはずないか


「みそがないとしぬ」

「やっぱりわざとだろ!?」


 真白は何のこと?と言わんばかりに首を傾げている。そんな反応を返されると自分の思い違いのように感じてしまう。まぁ、禊ぐと急ぐって音が似てるもんな


「というか、え?死ぬの?」

「しぬ」

「一大事じゃねえか…。」


 え?本当に?駄々をこねている場合じゃないじゃん!まぁ確かに嘘をついてまで俺と一緒に風呂に入ろうとする理由が思いつく訳でもない。死んでもらっても困る。

 覚悟を決めるしかなかった。神命には逆らえない。


「わかったよ真白、一緒に入ろうか」


 コクコクと何度も頷いていた。大満足のようだ。理屈はよくわかないけど、死ぬ事を回避したのだからそりゃ大満足だろな


「じゃあ、準備するからちょっと待ってろ」


 真白が起きて途中になってしまった風呂の準備を真白の分を含めてする。


「こーいち」


 真白が準備している俺に声を掛けてきた。


「みそげ」

「…………」


 やっぱりわざとか!?


 会って数時間、未だに真白の性格をつかめていなかった。


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