謎の女子
琴音の家にまたギターを背負って練習に向かう途中に女子に話しかけられた。この辺りでは見た事のないボーイッシュな見た目、中性的な顔をしたその女子は男装でもしたら、男の子にでも間違えてもおかしくないように思えた。そう思うのは見た目だけの話ではなく、話し方も女子と言うよりも男らしい話し方をしたというのもあった。
男らしいと言うのもあったが、それより目立つのが、その女子のとにかく偉そうな態度だ。まず第一声が「おい」だ。初めはまさか自分が呼ばれたとは思わなかったが、周りに誰もいなかった事と、次ははっきりと俺を見て「無視すんじゃねえ」と言っていっているその女子を見て、あ、自分の事か、と理解した。
「何ですか?」と答える俺に女子の顔が歪んだ気がした。「悪い、人違いだ」と言って女子は去ろうとする。俺は去ろうとする女子を呼び止めた。誰か探しているなら手伝いましょうか?この町の人を探しているなら力になれるかも。と
それを聞いた女子は微笑んだ。本当に微かに頬の筋肉があがっただけだったが「じゃあ、神代真白ってわかる?」言われた同時に呪いのワンピースを思い出すが、いつものように自分が変態かもしれないという不安にかられるより何より先に、その人と知り合いなのかと聞いた。
女子は驚いた顔をした。「覚えているのか?」、直接は知らない、自分の叔父がその子の名前を出していた。という事を伝えると、女子は顎に手を当て悩み始めた。女子が悩んで話さなくなった時間、女子が覚えているのか?と言った事について疑問を覚えた。知っているのかではなく、覚えているのかって聞くのは普通おかしい。ただの言い間違いかもしれないが。
と考えがまとまる前に女子は顎から手を離した。「まあいいや」とまさかの諦めの言葉。「それなら、頼んだ。あいつを探してやってくれ。運が良けりゃ見つけられるはずだぜ?」
人にものを頼む態度ではない。ほとんど他人事のように話している。
「じゃあ、頑張れよ」と去る女子。道徳やマナーを知らないようだ。礼儀知らずというか、もう人間じゃないんじゃないだろうか?というか、見つけたとして、俺はどうすればいいのだろうか。去ろうとしている女子を呼び止めて連絡先を聞こうと思ったが、あの失礼な女子の手助けをする必要はない気がする。もう、無視して琴音のところに向かい、失礼な女子と逆方向に歩く
「あ、そうだ」と後ろから聞こえるが聞こえないふりをする。「そいつの特徴は」あの態度で何故まだ探してもらえると思っているのだろうか?
「白いワンピース」
………………。
頭をぶん殴られたかのように一瞬の思考に空白が生まれる。振り返るともう、女子の姿はなかった。




