真相
すいません……また遅れました……今度は3週間も……1週間から2週間、そして3週間へとって完全にエタるやつの典型な気がしますが、物語も終盤に差し掛かってきました、来月までには何とか完結できるように仕上げていこうと思ってます。最後までお付き合いください!
今回は本当にすいませんでした。
「ミコト……」
「どうした?驚いたか幸一?」
「いや、流石に昨日の今日はないだろ……」
「うるせえよ!恥ずかしいって言ってんだから触れんじゃねえよ!」
顔を真っ赤にして怒っている。いや、やっぱり恥ずかしがっているのか。
「何だ二人とも知り合いだったのかい?」
「こっちの台詞だぜ、何でお前と幸一が一緒にいんだよ?」
俺の台詞でもあるのだが……
「このお兄ちゃん……えっと、幸一君?が僕の店に来てくれたんだよ」
「まあそんなとこだろうな、俺と幸一の事情はちょっと複雑だからまた話しながらでいいだろ?」
「構わないよ、幸一君、わけありみたいだし」
なんだか纏ったみたいだな
「なあ、二人はどんな関係なんだ?」
二人の会話に割ってはいる。
「僕たちかい?簡単に言えば恋人というか恋神なのかな?」
「あーやっぱり、お兄さんも神様なんです……ってはああ!?」
ミコトの方を見る。視線をそらすミコト。
「いやいや、いや!お前、浮気……というか、え?相手、お、男?」
「何!?浮気してたのか俺という神がいながら!」
「あー!うるせえぞお前ら!全部説明してやるから黙れ!!」
ミコトの怒号が響く。
「流石に黙ってられねえだろこんなこと!」
「いいから静かにしろ、ギャグパートはもう終わりだ」
ギャグって……一切、笑えるとこねえよ
「つっても何から言えばいいのやらって感じだが……」
「まず、関係を教えてくれる?それを聞かねえとどの話も頭に入ってこないよ?」
何を教えてくれるのかは知らないが、そこだけは、はっきりさせて欲しい。
「そうだな、じゃあ結論から言うぞ……俺は……女なんだ」
何の冗談だ?ギャグパートは終わったんじゃなかったのだろうか?
「おいおい、ミコト、全然面白くないぜ?」
「まあ、そう言うと思ったぜ……おい、幸一手を貸せ」
「?」
言われた通り手を差し出すと、ミコト俺の手を掴み、自分の制服の下に俺の手を入れ胸に押し当てた。
そこにはシャツの硬い生地とほんのり柔らかな感触が伝わってきた。
「っ!」
驚き、慌てて手を振り解く。
「何だ、以外と可愛い反応じゃねえか幸一、ういやつめ。触ったのは初めてか?」
ミコトは愉快そうに笑う。手に残る感触が生々しい。
「どうだ?これで俺が女だって、わかったか?何なら他のところも触ってみるか?」
「いや……いい」
「そっ残念」
とケラケラと笑うミコト。
いいとは言ったがまだ信じる事が出来たわけじゃなかった。しかし、確かに柔らかく、細身のミコトでは女ではない限り無理がある。
「おいおい、そんなに必死で俺の胸の感触を思い出そうとしないでくれよ?」
「なあ、ミコト……」
いつもの軽口は無視して質問をする。
「何でそんな噓をついた?」
いや、それよりも
「あんたは何者なんだよ?」
ミコトが男の神様じゃないとしたら、一体、じゃあ何者だと言うのだ?
「……俺の正体はお前も知ってるよ。ちょっと考えてみればわかるはずさ、女神で、そこの男と恋人で、今日この日に会っている、そして美形って言えば分かるよな?」
「……!いや、でも!」
「でもはねえよ幸一、今お前が想像した事で会ってるよ……そう、そこのお前の幼馴染の神に奉られている本当の神様は真白じゃねえ…………俺なんだよ」
それなら、もしそうだとするなら
「じゃ、じゃあ、それなら、それならだぜミコト、真白があの神社の神様じゃなかったら、あ、あいつこそ一体、何者だっていうんだよ?神様じゃなかったっていうのかよ?」
「いや、あいつは神様だよ、忘れられたね」
「忘れられた?」
「そう、あいつは名もないくらいに小さな祠の神様なんだよ。神様として生まれたのも最近、まあ最近つってもお前が生まれるずーーと前だけどな。俺からしたら子供みたいなもんだ」
「祠?そんなのどこにあったんだよ?」
「この砂浜のどこかだよ、お前が真白と会った場所の近くにでもあるんじゃねえか?」
「この浜辺に?そんな祠、俺は一度も見たことないぞ」
それこそ何度も行った海だ。俺が知らない事があるのか?
「言っただろ?忘れられたって、もう祠かどうかもわかんねえくらいに朽ち果てちまってんだよ。どこにあるのかも、どんな理由で何故そこに作られたかも、もう知っているやつはいないくらい、あいつは忘れ去られちまったんだよ……お前を含めてな」
俺を含めて?
「どういうことだ?」
「まあ、お前が忘れるのは仕方のないことなんだが……はっきり言うぞ幸一、お前は昔、その祠を見たこともあるし、それに……あいつにも会った事があるんだよ」
「は?」
俺が昔、真白と会った事があるだと……?
「6,7年前の話だ、忘れられて朽ち果てた祠を、偶々、お前が見つけたんだろうよ」
「だろうよって」
「俺も全部知っているわけじゃねえ。気づいたら、お前とあいつが遊んでいたんだよ、神社の娘達やお前の妹と一緒にな」
琴音や楽も真白と会っている……いや、でも
「そんな記憶……俺には……ない」
6,7年前は小学生でさらに低学年か?いや、そのくらい前なら忘れている可能性もあるだろうが、会った事があると言われても、その記憶のかけらすらも思い出すことができない。
「別にお前に責任がある訳じゃない、そういうもんなんだよ、俺らとお前達の関係はな……今、お前以外の人間があいつの事を忘れちまってるだろ?そん時も今と同じような事が起こってたんだよ。その時はお前も忘れたみたいだけどな」
「だから、その起こっていることを説明してくれよ」
「順を追って説明するから静かに聴け……偉そうにしてるけど、俺達はお前らがいるから存在してんだよ。信仰されるから存在できる。俺達は自分を自分で自分として成り立たせることができねえんだ。だから、人間に忘れ去られちまえば、存在できなくなんだよ。忘れられれば忘れられるほど、存在が薄まっていく。そして存在が薄まれば同時に記憶からも薄れて、最後に存在と記憶ごと消えてくんだよ。あいつと会っていた事を忘れたり、あいつの記憶がなくなっているのはそのせいなんだよ」
「でも、それって矛盾しないか?記憶があるって事は完全に忘れられたわけじゃないだろ?それなのに、存在が薄くなるのは変だろ?」
「何も変じゃねえよ。言っただろ?信仰されるから存在できるって、お前らはあいつを神じゃなく、ただ一人の友達として遊んでいただけだ。今も昔の時も。まあ、うちの旦那みたいに、日本中で人間の知り合いを作る事で存在を成り立たせているようなやつもいるが、こいつはそういう伝承された神だからそれでもいいが、あいつはそういった類の神じゃねえから、それじゃ駄目だ。しっかり神様として、願われて、敬われて、礼をつくされて、崇められないといけねえ、形だけでもな」
そういえば、真白が家に来た時、初めて要求してきたのが禊だった。あれは、ミコトが言うように、神様として扱われて存在を保たせるためのものだったという事だったのか。禊をしないと死ぬと言われて半信半疑だったが、まさか本当にやらなければ危険な状況とは本気で思わなかった。
「まだよくわからねえけど、真白の記憶が消えたのは、あいつが存在できなくなったからだったからなんだな?」
「まあ、そういうことだ」
「じゃあ、何で俺の記憶は残っているんだ?」
当然の質問だ。人間の記憶から完全に消えると言っているくせに、俺には真白の記憶がはっきり残っている。この質問にミコトは
「わからん」
「いや、わからんって、あんたがわからなかったら誰がわかんだよ?」
「仕方ねえだろ、俺もこんな話聞いたことねえよ。消えていく神は今まで何度もいたし、関わった記憶をなくす人間も見てきたが、お前みたいに、神の存在が消えたのに、記憶が残るケースなんて長い間生きてきて一度もないんだよ」
一度もない?ミコトがどれほど昔から存在しているのかは知らないが、相当歴史のある神社のはずだ。そんなミコトが一度も経験してないなんて事があるのか?
「今回は色々と特殊過ぎる。俺を持っても理解ができねえ領域なんだよ」
「神様のくせにか?」
「神は全能でも全知でもねえ。神なだけだ」
神なだけってまたよくわからない事をいいやがる。
「それで、その特殊な事って何なんだ?」
「まず過去にお前らと会った時、消えそうだったあいつが何故か今まで存在出来てたって事、まあ、これは、たまにあるケース何だが……まあこれについては、お前らが祠で何か願い事でもしたって考えたら、全然説明がつくけどな。本当に特殊なのは過去より今だ。あいつが記憶を亡くすまで存在していた事とか、ほぼ人間に近い存在になった事とか、正直、そんなアニメみたいな事なんて起こらねえと思ってたぜ」
ほぼ人間に近い存在?つうか、アニメみたいな事ってあんたが言うか?俺にとっちゃあんたの存在は十分アニメの中のものだ。突っ込みたかったがミコトは話を続ける。
「神が記憶を亡くしてまで存在しようなんて普通は思わないもんなんだよ。存在が消えるって事は、忘れられたって事だろ?そんな神は、もう諦めて消える事が多いんだよ。そりゃ。誰にも忘れられてこの世に留まろうって気にはなれねえだろうしな。でも、あいつは違った。何を犠牲にしてでも、存在を保とうとしていた。記憶を亡くしても、その存在が消えるギリギリまで、何かを為そうとしていた」
為そうとしていた何か、思い当たるものは一つしかない、真白はずっと誰か待っていた。そして多分その誰かとは……
「そんで、これが正直、一番特殊、人間に近い存在になってしまった事。あいつに名前、付けたのってお前だよな幸一」
「そうだ」
「たぶん、それが、あいつの存在が消えてもお前の記憶が残っている理由じゃねえかと俺は睨んでいる」
「どういうことだ?というか、人間に近い存在って何だよ?」
「お前、あいつに会った時にあいつに触れたか?」
ミコトは質問に答えないで逆に質問を返してくる。
「あ、ああ」
「何も触った感覚がなかっただろ?」
「ああ」
浜辺で気を失った時に抱え込んだ時の衝撃は今でも覚えている。
「存在が消えそうな神は、どの神をそうなるんだが、あいつはそれにプラスして記憶もない状態だった。そして、お前はそんなあいつに、人間としての名前を付けた。普通はありえねぇ事だが、神として存在がその名前一つで人間としての存在に傾いちまったんだよ。まあ、要するに、お前はあいつに、人間としての存在を与えちまったって事だよ。まあ、一時的な事に過ぎなかったみたいだが」
存在を与えたって、名前を付けただけでか?名前を付けたあの時、急に触れた感覚がし始めたのはそう
いう事だったのか?人間としての存在が与えられたからって事なのか?
「それでだ、そんな、特殊に特別な事が重なって偶然をお前が起こしちまった訳だが、そのせいで、お前だけ例から外れたんじゃねえかっていうのが俺の推察だ。神を人にした人間、どう聞いても普通には聞こえねえだろ?」
しょうもない厨二病設定のような話だが、実際にしているとなれば話は変わる。
「そんな難しく考えないでもミコトとか真白とか、神様と関わりを持ち過ぎたからたかじゃないのか?」
「その可能性も考えたけど、俺とお前の関係を結んだのはあいつだ。だから本当はあいつの記憶が消えた時点で俺の事の記憶も一緒に亡くなるはずなんだよ。あいつを忘れて俺だけ覚えているようにはならない。あいつが関係してない所で出会っていたらまた話は別だろうけど……俺がもう会うことはないって言い続けていたのはそういうことだ。あいつの存在が消えればどうせ俺の記憶も消えんだから会うことはもうないって思ってたんだけどな……どうやら俺とお前の縁は切れないのかもな」
苦笑しながら言うミコト。
「俺はまた会えると思ってたよ。というか、初めてミコトと会った時っていうか、今もだけど、なんで男の格好なんてしてきたんだ?」
というか、そのせいで余計に紛らわしい事になった事は明らかじゃないだろうか?
「まあ、口調は元々こんな感じなんだけどな。お前とあいつが会った時、最初は見ているだけにしようと思ってたんだけど、限界が来て苦しそうなあいつを放っとけなかったんだよ。とりあえず、楽にしてやろうと思ったんだが、急に知らない女が押しかけても不審だろ?だから、お前、神社の娘に俺と旦那の話を聞いた時、あいつを女神の俺と勘違いしてたのは知ってたから、それに乗じようと思ったってことだよ。男子の制服だったのはわかりやすい男の格好だったからだよ」
確かに完全に勘違いしていた。あの時、一つも疑いもせずに真白を渡してしまった。それに、俺よりもミコトの方が真白を救えると思ったからだ。
「結局、手遅れだよ、お前と会おうが会うまいが、どっちにしろ消えることには変わりなかった。俺に出来たのは少しの延命だけだ。あいつの最後の我侭を聞くためのな」
「その我侭って……」
「そ、昨日のお前と祭を一緒に回るってやつ。お前に本当の事を言わなかったのは変に気負って欲しくなかったからと、どうせ忘れるならあいつを楽しませてやって欲しかったからだよ」
真白もミコトも何も言わなかったのはそういう事だったのか……
「俺と別れたあと真白はどうしたんだ?」
「自分がいるべき場所に戻ったよ。あんたと会ったあの浜辺にね」
「……そうか」
俺はミコトの横を通り過ぎていく。
「どこ行くんだ?」
「真白のとこだよ」
「無駄かもしれないぜ?お前以外の人間の記憶がなくなってるって事はもうあいつも消えているかもしれないって事だぜ?」
「でも、俺は覚えている。忘れてないって事はまだ真白は存在してるかもしれないってことだろ?」
信仰があれば神様として存在できるって言っていたはずだ。それなら祠を見つけ出して、お供えでも、賽銭でも、お百度参りでも何でもしてやる。
「まあ、その可能性はなくはないだろうな。でも、かなり低い確率だと思うぜ?」
「構わねえよ。やっと、あいつのために何か出来るチャンスなんだからよ」
もう、何も出来ないのは嫌だ。
「そうかよ……ふん、確かにあいつを救えるのはお前だけだろうな。俺たち神には無理だし、お前以外の人間はあいつを忘れちまっているからな。まあ説明はした、後は幸一、お前の好きにしてくれ」
「ああ、そうするよ、色々、ありがとミコト、悪かったな年に一度の夫婦水入らずを邪魔して」
「気にすんな、関わっちまったもんはしょうがねえよ」
「またなミコト」
「またな幸一」
もうミコトは会うことはないとは言わなかった。懲りたのだろう。そして俺は真白と会った砂浜の方へ歩く。真白は別れる前に「また会える」と言った。どれだけ、可能性が低くても関係がない。あいつが会えると言ったのなら会える。諦める道理は俺にはなかった。
「なあ、お兄ちゃん」
数歩歩いたところで、今まで黙って話を聞いていたお兄さんに呼び止められる。
「その、真白って子の事、まだ思い出せるかい?」
さっきから覚えているって話をしていたはずなのだが、何故そんなことを聞いてくるのだろうか?
「はい、覚えてますけど」
「いや、覚えているのはわかった。僕が聞いてるのは思い出せるかだよ。その子の、顔を思い出せるかい?髪の長さは?身長は?性格は?口癖とか口調とか、その子の事まだ思い出せるかい?」
お兄さんの優しく笑っているように見えるが、目つきは鋭くみえた。
「……思い出せます」
「そ、じゃあいいんだけど」
そう言うとまた柔らかな目つきに戻る。
「急に何を聞いてんだよテメエ?」
口の悪い嫁だ。ミコトって琴音の話じゃ、別れた後に波の音を聞いて苦しくて泣いていたんじゃなかったっけ?
「何でもないよ、じゃあ頑張ってねお兄ちゃん」
二人にお辞儀してから再び歩く。しばらく歩いて振り向くと二人の姿はなかった。どこかにいったようだった。
目的の場所へ向かう途中、お兄さんの質問が頭によぎる。真白の事を思い出せるかね……、無表情で無口で、甘いもの好き、長髪だし飴が好物、等など
大丈夫思い出せる。
何でこんな事を聞いたのだろうか?
不思議に思いながらもあまり深く考えないでおいた。そして、真白の顔を思い出そうとすると実は少し靄がかかったかのようにぼやけたような気がした事も深く考えなかった。