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「真白!ミコト!」


 神社についた俺は人の目も気にせず二人の神様の名を叫んでいた。

 しかし、どれだけ叫んでも二人は現れない。


「あら~幸一君、迷子を捜しているの?」


 そこに現れたのは商店街の服屋のお姉さんだった。


「幸一君に会えるなんて、うふふ、少し遊びに来てみるものね~」


 相変わらずマイペースな人だ。


「あ、お姉さん、迷子というか白いワンピースを着た髪の長い女の子か、学校の制服を着たちょっとかっこいい男子を見ませんでした?」


 お姉さんに二人の普段着ている服装の特徴を聞いてみるが、


「んー?制服の男の子は結構いたけど……白いワンピースの女の子って、もしかして幸一君が私のお店で買ったプレゼントの服かしら?」

「覚えているんですか!」

「あたりまえよ~ついこの間の話じゃない、私はそんなお婆さんじゃないよ?」


 お姉さんはじゃああの日の事を覚えている?


「ちゃんと渡せたみたいね」

「え、いや、お姉さん?その日、渡す相手も一緒に買いに来てましたよね?」

「あら~?そうだったかしら?嫌ね~歳かしら?」


 ……お姉さんも真白がいた記憶がなくなっている。真白がいたという記憶だけがなくなっている。事実が事実じゃなくなっている。事実が変わってしまっている。


「ん~ごめんね幸一君、その子の事も分からないし、白いワンピースの子は見てないわ」

「そう…ですか、すいません心配かけて」

「いいのよ幸一君、いつも私の話を聞いてくれるもの、たまには幸一君の助けになりたいって思ったんだけど……力になれなかったわね……」

「いえそんな、気持ちだけで十分嬉しいです」

「ごめんなさいね~私もちょっと捜してみるわ」


 「すいません、お願いします」とお姉さんに頭を下げ、神社を離れた。


 人目の多い所で今までミコトは現れたことがなかった。そうなると神社では会うことが出来ないかもしれない。そうなるとやっぱり、向かうべきは海だろうか?すでに神輿は海まで運ばれ神社に戻って来ている。もう人も少なくなっている頃だろう。……しかし、神輿が海まで運ばれたという事は、祭の設定ではもうミコトは帰った事になる。流石に、きっと真白に何かが起こっているこの状況で真白を残して行く事はしないだろうが、それでも急いだほうがいいだろう。


 海までは屋台の通りを抜けた方が早い。急いで神社の階段を下りる。昨日も今日も言った屋台の通りは相変わらず人でごった返している。それでもかまわず突っ切る。出来るだけ早く、人をかき分けて進む。かき分けていく中で、押しやられ、用もない屋台の中に入ることがあったが気にせず突き進むが、その途中、一つの屋台に押され入った時に


「あれ?昨日のお兄ちゃんじゃないか?」


 と、偶々入った聞いた事のある声の屋台の人に呼び止められた。振り返るとそこには、昨日、真白と来た金魚すくいの屋台のお兄さんがいた。


「あ、どうも」


 急いでいるので軽く会釈だけして通り抜けようとする。


「今日は昨日一緒にいた女の子はいないだなー仲よさそうだったのに……」


 と言う独り言が聞こえてきた……ん?昨日一緒にいた女の子?引っかかるその言葉の意味はすぐにわか

った。通り抜けずにお兄さんに思わず詰め寄ってしまった。


「お兄さん!真白の事を覚えているんですか!?」


 昨日、一緒にいた女の子は真白しかいない。みんな真白のいたと言う記憶が消えていたはずだが、今、お兄さんははっきり一緒にいた女の子と真白の記憶が残っていた。


「急にどうしたのお兄ちゃん?そんなに顔色変えて……えっと、真白ちゃん?ってお兄ちゃんと一緒に金魚救いをしていた、白いワンピースの子?」


 やっぱり、完全にこの人は真白の事を覚えているようだ。服屋のお姉さんや琴音や鈴音、そして楽でさえ忘れていると言うのになぜこの人だけは覚えているんだ?


「そうですけど……えっと、すいませんお兄さん、変なこと聞きますけど何か不思議な力とか持っていたり……しません?」


 あまりにも唐突な質問にお兄さんはポカンとしている。本当に変な質問だと思う。だが、やっぱり不自然過ぎる、昨日会っただけの屋台のお兄さんだけが覚えているというのは。


「……お兄ちゃん、厨二病だったりする人?」

「違います……」


 まあ、妥当な反応だ。何も知らない人からしたらやっぱり余ほどおかしな質問に聞こえるだろう。


「んんー、まあだったら、要するにそういう事なのかなー昨日の事を考えても……」


 とお兄さんは独り言を呟いた。何かに悩んでいようだった。


「うんそうだね……なあ、お兄ちゃん、今、急いでどこに行こうとしてたの?」

「海ですけど」


「それはちょうどいい、僕もちょうど海に行くつもりだったんだ、だからどうせならお兄ちゃんと一緒に行きたいんだけど、いいかな?」

「いやでも……」


「大丈夫だよ、多分、お兄ちゃんが知りたい事も分かると思うよ」

「やっぱり、何か知っているんですか?」


「僕は何も知らない、もしかしたら僕について来たらお兄ちゃんの知りたい事が分かるかもしれない、あくまでかもしれないだから、無理にとは言わないけど」


「いえ、行かせてください」


 せっかく目の前に手がかりがあるのに見逃す手はない。


「じゃあ、ごめん、屋台を閉めるの手伝ってくれるかい?簡単でいいから。ある程度片付けたら僕の知り合いが片付けてくれるから」

「あ、わかりました」


 まあ、確かにこのまま放置するわけにもいかないか。


「ありがとう」

「いえ、御安い御用ですけど……あの、お兄さんは、俺が何を知りたいかわかってるんですか?」


「だから僕には何もわからないよ、もしかしたらっていっただろ?お兄ちゃんが僕と海に来たら、お兄ちゃんの助けになるかもしれないってだけだからさ」


「ずいぶん曖昧に言うんですね」

「ごめんよ、でも、今はまだはっきりと伝える訳にはいかないんだよ」

「何か訳ありみたいですね」

「まあ、そんなとこだね。大した訳でもないけどね」


 その後は、お兄さんの指示を受けながら屋台を片付け始めた。

 そして本当に簡単に荷物をまとめ、屋台をたたんだだけで片付けは終わった。


「本当にこれでいいんですか?」

「大丈夫、あとはやってくれるから」


 その知り合いの人ってどれだけお人よしなのだろう


「手伝ってくれてありがと、それじゃあ行こうか」

「はい」


 このお兄さんが何者なのかはわからない。ただ真白やミコトのように特別な何かなのだろうと口振りからもわかる。何も知らないと言うお兄さんは明らかに何かを知っている。でも、それを教えるのは自分じゃないといっているように思える。じゃあ、一体、海には一体何があるというのだろう。何が俺に真白の事を教えてくれるのだろうか。

 まあそれも全部、海に行けば分かる事だ。本当に何もわからない俺は黙ってついて行くしかなかった。



                     *


「おいおい、二度あることは三度あるっていうけどよーこんなに嫌な三度目はなかなかないぜ」


 お兄さんと海に着いたなりに愚痴を溢し始めるその人は


「あー恥ずかしいなぁ!くそっ!……まあ、もう会っちまったんならしゃあねえけどよ」


 自分と同じ高校の制服を着て、ニヒルな笑みを浮かべているその神は


「またまた会っちまったな幸一!会いたかったぜ!」


 もう会わないと、二度も、しかもつい昨日そう言ったはずのミコトだった。


今回はここまでです。読んでくださいありがとうございました!

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