琴音なりに
非常に遅れましたがやっと続きを書きました!
また、一週間3話投稿を目指して行く意向です!
「あんた、いつまでそんなうじうじしてんのよ!」
琴音が寝ている俺を叩き起こす。
これが漫画のでよくある幼馴染が朝起こしに来てくれるシーンか……あまりいいものではないな
しかも今は朝ではなく昼だし……
真白をミコトが連れ帰って数日間、俺は何もやる気が起きず、ほぼ一日中部屋で寝ているようになった。
「そんなに真白ちゃんが急に帰った事が残念なわけ?いやそりゃ、私も残念だけど……」
琴音の言うとおり真白は旅行から帰った事になっていた。警察から盗まれた真白の所持品が返ってきてそのまますぐに帰ったという事にした。
「別に……」
素気ない返事をする。正直、鬱陶しい。もう真白の話はしたくない……俺にはどうしようもなかった事なのだから。
真白は帰ったと伝えた楽は哀しそうにしていた。なんで何も言わずに帰ったのか、少しくらい待っていてくれてもよかったのに、友達じゃなかったのかよ……と、そこにはいない真白に対して呟いていた。俺はそれをきいて「ごめん」としか言うことが出来なかった。
それから、あんなに賑やかだった家の中は静かになり、楽との会話も必要最低限の事しかしなかった。
「いつまでも暗い顔してないでよね、鬱陶しいから」
鬱陶しいはこっちのセリフだ。
「うるさいな、いいから帰ってくれよ」
「何よそれ!忙しい中できてやったっていうのに!」
えらく恩着せがましい言い方だった。
「ならなおさら帰れよ」
「えーえー帰りますよ。そうさせていただきますよ!」
機嫌悪そうに俺の部屋から出て行った。
「何しにきたんだよ……」
昼間に人の家に来て、怒って帰っていくって……怒らせたのは俺の態度のせいなのだが
本当は悪いとは思っているのだが。誰かと話している余裕が今なかった。もちろん真白の事が気になってだ。……恋愛的な意味とかではなく。
真白が無事だったかどうかも、何故あんなに弱っていたのか、何よりミコトが俺と出会わなかったら真白が苦しむ事もなかったと言った事が気になった。
結局、何一つ分からないまま真白は俺の前からいなくなってしまった。
真白が弱った原因をミコトは連れ回した事ではなく、もっと根本的なものと言っていたが、根本的なものとは一体なんの事だろうか?
というかそもそも真白は出会った時から記憶をなくすほど弱っていたはずだ。
この事にも俺が関わっているとでもいうのだろうか?
モヤモヤする。もう会えないと思うとなおさらに。
また会いたい。無口で無表情の神様に……
「ましろ……」
心の言葉がこぼれたかのように自然と名前を呟いてしまう。
「こういちー!!」
「うおお!?」
扉を勢いよく開けて入ってきたのはまたもや琴音だった。
「言いにきた事忘れて帰るとこだったわ!あんたちゃんと祭の日に神輿を担ぎにいきなさいよ!ちゃんと約束したんだからね!」
「え、あー」
そういえば、真白と一緒に神社にいった時そんな約束したな。半ば無理やりだったし、男神と会えるかもしれないと思ったからだ。もう、意味のない事だ。
「悪い琴音……」
「今更断れないわよ?もうあんたが担ぐって決まっちゃってるんだから」
じゃあ、もう当日仮病使うか……
「仮病も使わせないからね。ちゃんと楽ちゃんに確認するからね!」
先回りされた。楽に確認するというならどうにでもなりそうなものだが……
「いいから来いってことよ!いつまでも部屋に引き篭もってないで外に出てきなさい。いつまでも一人の女の子の事でうじうじしてんじゃないってことよ!」
「そ、そんなんじゃねえよ!」
「私という可愛い幼馴染がいるんだから」
「…………」
「なによその反応は!」
「いや、自分で言うんだなあと思って……」
「う、うるさいわね……」
琴音は顔を赤くしていた。
「じゃ、じゃあもう伝えたい事は伝えたから私帰るからね!」
赤面したまま扉を出て行こうとする。
「琴音」
出て行こうとする琴音を呼び止める。
「何よ?」
振り返る琴音
「ありがとな」
「……うっさいわよ」
そして「またね」と言って笑って手を振って出て行った。
本当に心配させてしまっていたみたいだな……祭りの件が本命だったのかもしれないが琴音なりに励ましてくれたようだった。
確かに琴音の言うとおりなのだろう。いつまでも真白の事でしょぼくれている訳にもいかないか……
ミコトが言うように忘れる事は出来ないだろうが、もう自分にどうすることもできないことで悩む必要もないだろう。
そう、どうすることもできない、俺が関わることができない世界の話だったのだ。
よく考えれば神様たち問題をただの高校生の俺が何とかできる訳がないじゃないか。
しょうがない事だったのだ。なにもできなかったのは。
だからもう悩むのは辞めよう。
夏のほんの少しの間に起こった不思議な出来事として、思い出として、今回の話は幕を閉じよう。
数秒だけ目を閉じ、開けると同時にベッドから起き上がる。
そして
「昼飯でも作るか」
不思議なことなど何もない日常に俺は戻った。