貝殻探し
三話投稿するといって先週に続き1話だけです。申し訳ない!
来週、大量にあげる予定なのでなにとぞお許しを!
遊び疲れ始めた少し涼しくなった夕方、俺達はこの砂浜の名物である桜貝の貝殻を探していた。
一応、観光客という設定の真白のために一応この町の名物である貝殻をみんなで探そうと言う話になったのだ。
俺はその辺に売っているし、何なら家にたくさんあると言ったのだが琴音が「こういうのは自分であるいは皆で探すことに価値があるのよ」と言っていた。
まあ、そういうものなのだろう。
目にとまった桜貝を手に取る。なんだかデジャブを感じる。
初めて会った日がまだ一昨日のことである。懐かしむほど昔ではないが出会った当初に比べて真白のイメージも変わった。
無口で無表情だが全然クールではない。負けず嫌いだし、結構面白いやつでもある。初めの神々しい雰囲気はどこにいったのだろうか……
ぼーと足元を見ながら歩いている真白を遠くから眺めながらそんなことを考える。
「あんた、ぼけっとしてないで探しなさいよ!」
琴音だ。手に持っている袋には桜貝以外の貝殻もぎっしりつまっていた。
「お前なあ真白もそんなにいらないだろ……」
「わかってるわよ!これは家で使うやつよ」
「あー」
そういえば祭りなどの飾り付けにもこの貝殻は使われているんだった。小さい頃は遊びの一貫として手伝わされていた覚えがある。
「それにしても、よくそんなに綺麗な形の貝殻ばかり見つけられるな」
砂浜に散らばっている貝殻は綺麗なものばかりではない。かけたり、色がくすんでいたりした貝殻もある。というかむしろその方が多いだろう。
「まあね、昔からよく探してたからね……というかあんたもでしょ?」
「俺はそんな真面目に探してなかったからな」
貝殻を探しているはずがいつの間にか蟹を追いかけていた覚えがある。そして捕まえた蟹に指を挟まれ泣いた。以来、蟹が少しトラウマになっている。
あ、綺麗な桜貝。
「それにしても、なんだか懐かしい気がするわね」
「何がだよ?」
「こうして遊ぶ事がよ。小学校の頃はまだこんな風に水鉄砲で遊んでいたけど中学生になってから、あんまり鈴音とか楽ちゃんとか皆で遊ぶことなかったじゃない?さっきの水鉄砲もそうだけど、学校の裏山に秘密基地を作ったりとか、貝殻探したりとかさ」
「女子と遊んだりするのが恥ずかしくなる時期だからな。思春期だったんだろ」
「いや、今も思春期真っ只中でしょあんた……」
呆れた顔をされる。
「まあ確かに今でも真白が来なかったら誘うこともなかっただろうな」
「真白ちゃんね……何だか不思議な子よね、会って間もないのにすぐに馴染んじゃうし」
それは俺も思うところではあった。水鉄砲の動きは初めてのそれではなかったからなあ
「一人で旅行してるくらいだから、慣れてるんだろ?」
「それもそうかしらね……」
観光客っていうのが嘘なのだが……って、お?
「繋がったままの桜貝じゃん!」
思わず興奮して落ちていた桜貝を手に取る。
「わ、ホント!珍しいわね!」
二枚貝の桜貝は薄く脆いため砂浜に打ち上げられた桜貝はほとんどが片割れしか残っていない。実際、町役場に展示してあったのを見たことあるくらいで自分で見つけたことはないくらい珍しいものだ。
「これ真白ちゃんに割れないように加工してプレゼントしましょうよ!いいお土産になりそうじゃない?お祭りが終るまではいるんでしょ?」
「多分な……うん、そうだな、おっさんがそういう加工とかにするのが得意そうだから頼んでみるか」
顔と体格に相変わらず似合わず、小物作りが得意なおっさん、店で使うコースターなんかも手作りだ。
「おい坊主ども!なんかあったのか!」
琴音と騒いでいたら自分の話がでたのを聞いたのかおっさんが絶妙なタイミングで様子をみにきた。
「なあおっさん、頼みがあんだけど」
「?」
貝殻を見せて、琴音と話していたことを伝える。
「はあーこんなのよく見つけたなぁ」
とおっさんは感心している。
「わかった加工してやるよ!そうだな……ペンダントとかがいいか?それなら割れないように周りを……」
なんてぶつぶつ言っている。
「あ!そうだ!ちょうど貝殻が割れないように持ち運べるキットを持ってきてるんだった!」
すぐ取ってくる!そういって自分の車に慌しく走っていくおっさん。別に急がなくても……
しかし用意のいいなあ、どんだけ今日楽しみにしていたんだよ……
「ねえ幸一」
「ん?」
おっさんが道具を取りに行ってすぐ琴音が話しかけてきた。
「二枚の貝殻がくっついた桜貝の伝説みたいなのがあるの知ってる?」
「……?知らないな」
そんなものがあるのか?
「あんなにすぐに割れちゃうのに、波にもまれても、砂浜に打ちつけられても二枚が一緒の桜貝を見つけた男女はずっと二人で何があっても幸せでいられるらしいわ」
「へえーそんな話があったの、か……」
男女二人?……え、いや、何で今そんな話をするんだ?わざわざ二人きりのタイミングで?もしかしてこいつ……いや、でも幼馴染だぜ俺ら、いや俺が気づいてなかっただけで本当は……
「ぷっ、あはははっ」
琴音がいきなり爆笑し始めた。
「??」
わけがわからない
「嘘よ、嘘!そんな話ないわよ!だからそんな動揺しないでよ!」
「し、してねえよ!」
「ふふふ。ま、そういうことにしといてあげるわ」
く、むかつく奴だな!
「まあでも……」
「なんだよ?」
機嫌悪そうに答える俺
「この話が本当なら少しはロマンチックだとは思わない?」
さっきの大笑いと違い薄く微笑むようなその表情に少しドキっとした俺はその問いにすぐに答えられなかった。
「ん?なんの話をしてんだお前ら?」
そして答える前におっさんがきてしまった。
「秘密ですよ、おじさん」
そういってどこかに行ってしまった。
「なんだあいつ?」
不思議そうな顔をするおっさん。
俺は不覚にもまだ少し鼓動が早くなっていた。
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