林
カワカミとヒサコは怯えていたが、テツコは戦うつもりらしく、脇差に手をかけていた。
「止せ。三体を相手にするのは無理だ」
「師匠」
「逃げろ。俺が囮になる。お前はブンジたちに合流するんだ」
「聞いてください。一つ、考えがあります」
テツコはそういうと、僕の耳元に口を寄せ、素早く話をした。
僕はその考えに同意はしかねたが、他に名案はない。
止む無く、彼女の考えに従うことに決め、カワカミに支持をだした。
僕は糸をとりだすと近くにある木々に絡ませ、化け物たちのいない右方向に向かった。
カワカミもヒサコを抱えると、僕にならって走りだした。
その間、テツコは糸のついた木に駆け寄って、斜面の反対側を脇差で斬るという行為を繰り返していた。
幸いなことに、上方にいた化け物は死体をむさぼることに夢中らしく、テツコには興味を示していなかった。
「師匠! 脇差では長さが足りません! 少しでいいから時間を下さい!」
「わかった!」
僕は大声で返すと、糸を頭上の枝にかけ、カワカミに渡した。
カワカミはそれを握りしめると、木に足を駆けて頭上を登り始めた。
彼が高いところにある枝にしっかりと足をつけたのを見た僕は、引き上げて貰おうとしたが、一体の化け物はその間、ゆっくりと歩いている。
触手で死体を飲みこみながらのためか、動きは酷く緩慢だったが、いつかはこちらに辿りつくだろう。
「間に合うか」
カワカミはヒサコを木の上に引き上げていたが、今ですら顔が赤い。
彼に僕を持ち上げる力があるかは不明だし、そもそも時間が間に合うかすらわからなかった。
僕が自力で登るのは無理だが、カワカミの非力ですんなりと上にあげて貰えるとは思えない。
素早くテツコの方向を向くと、目が合った彼女は大きく頷いた。
タイトルが思いつかなくなってきた。




