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逃亡

 僕たちは固まって移動すると、死地に向って移動した。

 村をある程度まで歩くと、軽い傾斜になる。

 そんな場所を上っていたのだった。

 だが、残念なことに僕たちが屋敷で時間を過ごしている内に化け物たちが先回りをしていたようで、踏み鳴らされた道には死体が転がり、大量出血の痕があった。

「師匠、どうしますか」

「直進は無理だ。森を突き抜けよう」

「方向を見失いませんか」

「昔は先生とよく遊んだ。間違える筈がない」

 僕はそういうと、テツコやカワカミを連れて森のなかを進んだ。

 木々は高く、どれも僕の身長の五倍はある。幹は太く、僕が両手を広げても半分ほどしか抱えることができないだろう。

 そのため木材としては理想的で、僕たちは村で家を建てる時や、化け物の侵入を防ぐための資材を手に入れる時は、これらの木々を伐採していた。

 すぐ側に海に続く川が流れているため、運搬が簡単なことも関係しているのだった。

 僕たちは傾斜のある道なき道を歩いていたが、ふとテツコが足を止めた。

「師匠」

「わかってる」

「ど、どうしたんだ」

 僕は口元に人差し指をたてて、カワカミを黙らせた。

 川の流れると音に紛れて、気が揺れる不穏な音がきこえるのだった。

 その音は、残念ながら僕の聞き間違いではなかったらしい。

 枝葉からさしこむ光に照らされて、一体の化け物がこちらに近づいているのだった。

 眼下の化け物たちは直進して木々に体をぶつけては、巨木を揺らしていた。

 そして傾斜を上っては、僕たちに向って近づいているのだった。

「逃げるぞ」

 僕がそういって後ろを向くと、勉強会の参加者が宙を舞っていた。

 僕たちからやや距離をとっていた彼は、一体の化け物の触手の餌食となっていたのだ。

 そこにいた化け物は、一体だけではなかった。

 もう一体の化け物がそこにはおり、人を飲みこんでいる触手に自分の触手を伸ばしては、食料を奪おうとしていたのだった。

僕たちが七年をかけ、死力を尽くしてようやく倒した化け物が、三体いるのだった。

「逃げろ! 勝ち目はない!」

 僕は絶叫して傾斜を上ろうとしたが、化け物の内の一匹が先回りをしようと歩きだした。

 化け物の方が上にいるため、かなりの遠回りをしないと上にはいけないだろう。かといって、通り越しても触手に捕えられるかもしれない。

「下だ! 下に逃げろ!」

 勉強会の参加者は総叫ぶと傾斜を駆け下りたが、僕が予想した通りに、化け物の餌食となっていた。

 僕はその様をみながらテツコ、カワカミ、ヒサコを連れて右手に逃げた。

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