銃
僕はそういうと、小石を隠したまま手を挙げ、スズキに近寄った。
そして渡す用な素ぶりをし、彼が格子のこちら側まで手を伸ばした時、僕は彼の右手を思い切り捻った。
そして格子まで彼の体を思い切り引きよせると、その体を左手で抱きしめ、小石をスズキの首元にあてた。
「首に触れてるものがなにかわかるか? 死にたくなければ、僕の神術をとけ」
「お前――」
「安心しろ。化け物は僕が封じてやる。そうしないと、後からお前の責任問題になるぞ」
流石に、スズキはすぐには神術を解いてくれなかった。神術を解放した僕がどうでるか、不安だったのだろう。
スズキの護衛は明らかに動揺していて、猟銃を構えては僕に近寄ろうとした。
「よるな。村長が死ぬぞ」
護衛はその言葉を受けて立ちどまったが、僕は胸をなで下ろせなかった。
護衛は目の前にいる。
幾ら手元に隠しているとはいえ、僕が握っている物がいつ小石だと気づかれ、スズキに命の危機が迫っていないと悟られるか、気が気でなかったのだ。
「早く、神術を解け」
「け、けど」
「早くしろ。死にたいのか」
「わかった、解く、解くぞ」
「あ、村長、そいつが持っているのは――」
護衛がその言葉をだした瞬間、僕の首元からはらりと落ちる物があった。
僕は首筋に手をやって封印が解けたことを確認すると、着物の裾から糸をとりだし、駆け寄ってくる護衛に投げた。
そして護衛ではなく、彼の持っている猟銃に絡まったのをみた僕は、懇親の力をこめて糸をひいた。
上手くいく可能性は低かった。相手は強靭だったし、僕はやせ細っている上に片腕だ。
しかし、運は僕に味方した。
護衛は武器が奪われるという事態を想定していなかったらしく、間の抜けた声と共に銃をあっさりと手放したのだった。
銃を手にした僕は、急いで銃床を肩にかけると、引き金をひいて護衛の腹を撃った。
続けて僕はもう一発、スズキに向けて銃をうった。




