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同胞
「なあ、テツコ。この世界でたった一人になって、負けると分かってても戦わなきゃならない時があるとしたら、お前ならどうする?」
「戦うと思います」
「なぜ?」
「それは――人はそういうものだからです。たとえ一人きりになっても、ご飯は食べないといけない。困っている人がいたら助けないといけない。戦わなきゃならないんだったら、つべこべいわずに刀を持つべきです」
「そうか。偉いな」
僕はそういうと、テツコに歩み寄って彼女の首を絞めた。
彼女の残りの人生を思うと、今、ここで殺害せねばならなかった。
ここで命を奪う他になかった。
だから僕は猛烈な嫌悪を覚えながら、彼女の首を絞め続けた。
そして彼女が宙に浮き、顔から少しずつ生気が失われていった後、
「師匠。起きてください」
という声をかけられ、僕は我に返った。




