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「どうやって、鍵をあけたのですか」

「鍵などなくとも、私は人の意識さえあれば入り込めるの。仮に必要であったとしても、私であれば簡単に開錠できるわ」

 先生がそういうと、鍵のまわる音がきこえた。

 みれば、入り口にかけられた南京錠の掛け金がかすかに浮いている。鍵がひらかれているのだった。

「問いに答えないことは気づいているでしょう。そもそも、あなたが口にしたい質問は他にある筈よ」

 先生の静かな声をきき、僕は目を伏せった。

 これがテツコであるなら刀を抜いて先生に飛びかかっている所だが、僕は彼女ほど情熱的ではない。

 そのため僕は、裾から二きれの白い紙をとりだして先生にみせた。

「先生。この二枚の紙はなんなんですか。座敷牢にはいっているのに、どうやって外に持ちだしたのですか。――いや、そもそも今、なぜ座敷牢からでていられるのですか」

「同じ問いを繰り返すのね。本当にききたいことを伏せて」

「質問に答えてください」

「あなたの、本当にききたいことの答えは過去にあるわ。甘くも苦しい記憶に触れさえすれば、すぐに真実に気づくことができる。けれど時間の壁は厚いわ。孤独でなければ触れられないけれど、他の人を連れることはできない」

「先生。答えて下さい」

「すべてを思いだし、真実に気づいたなら私のところに来なさい。それまでは暫しの別れよ」

「先生!」

 僕は船から立ち上がると板を踏んで先生に歩み寄り、彼女の細い肩に手をかけたところ服ではない物を掴んだ。

 それは物置に置かれていた鍬で、錆びついて赤茶けていた。

 我に返った僕は、幻覚をみていたことに呆然とし、立ちくらみを覚えた。

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