表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/88

「ここは、どこだ」

「自分で考えろ」

「水の流れる音がどこかから聞こえるから、川から離れてはいない筈だ」

「師匠。ここは、一体どこなんですか?」

 僕たちはそんな会話を交わしながら、荒れた道を歩いた。

 僕たちはこの村で生まれ育ったし、三年前からはこの場所の隅々まで頭に入れていた。そのためどこにいるか、大体の見当はつく。

 だというのに、なぜか誰一人として浜辺に続く道を思いだすことができず、僕たちは迷い続けた。

 そして気づくと、僕たちは小高い崖にでた。

「どこだ、ここは」

「わかりません」

 テツコがうろたえるのは、無理もなかった。

 霧がうっすらとかかっていた上、日は完全に沈んでいる。それでも海には小島がみえ、ここが僕たちの過ごした海であることはわかった。

 だが僕は、生まれてこの方こんな場所にでたことがない。

「一体、ここはどこだ?」

「さあ……」

 ブンジが困惑し、テツコは年頃の女の子らしく怯え僕の側に寄ってきた。

 その際に気づいたが、霧のなかではぐれたらしくカワカミの姿がない。お蔭で提灯がなく、他に明かりもないため辺りの様子が殆ど観察できない。

 そのため新しい情報を得ようとして周囲に視線を配っていた僕は、地面に落ちて風に揺られていた紙に気づいた。

 白い紙片に、筆で文字が描かれている。紙が破れているため全体像はみえなかったが、僕はわずかに残った字を読んだだけで、背筋が張るのがわかった。

「先生……!」

『さえあればすべては解決できる。自身の心の闇に向きあえば道はひらけるもの。前述の信号を使って目覚めさせなさい』

 なんらかの文章の後半部分らしきその文面は、明らかに先生の筆によるものだった。

 だが、なぜ?

 先生は三年間というもの、一度として座敷牢からでていない。だがこの紙は明らかに、つい最近に書かれたものだ。

 僕はこの紙の前半部分を探したが、それらしいものはなかった。テツコとブンジに手伝ってもらったが、やはりどこにもない。

 場所が崖のすぐ側だから、海に落ちたのだろうか。だとすれば、もう回収は不可能だろう。

 先生に事情をきこうにも、答えてくれるとは思えない。

 そう思って下唇を噛んでいると、あることに気づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ