燃焼
僕たちがチョウゾウのところにいくと、人が集まっていた。屋敷の使用人ばかりか、騒ぎをききつけたらしい、隣近所の人までがいる。
先生の周囲よりも人が多いのは、自殺を唆される可能性がないためだろう。
それでも人が死んだ場所というのは気持ちが悪い物なのか、彼らはひそひそと話をするだけで、部屋に入ろうとしない。
部屋からは肉の焦げたひどい臭いが漂っていて、なかを覗くと人の形をした消し炭があり、その側には焼け焦げた布団が捨てられていた。
鼻を抑えながら部屋にはいったが、他に燃えた物はない。
入り口に濡れた桶が二つあるが、井戸から水を汲んですぐに火を消したのだろう。
僕は遺体をじっとみつめた。
背の高さはチョウゾウと同じくらいだったし、ブンジが燃える様を目撃している。
だからこれは明らかに、つい先ほどまで僕たちと話をしていたチョウゾウだった。
ブンジやカワカミによれば周囲には蝋燭や花火といった火元になりそうなものはなく、チョウゾウは自然に燃え上がったらしい。
その直前に
「悪い。先にいく」
と無表情で告げたという。そのことを合わせて考えると、チョウゾウは神術を使って自分の体を焼いたのだろう。
これが先生の仕業かはわからない。チョウゾウは死ぬ際、先生について一言も触れなかったためだ。
仮に自分の意思で死んだのだとしたら、半身不随になって足をひっぱることに絶望したのかもしれないし、他の理由で生きることが嫌になったのかもしれない。
体に火をまとって死んで、苦痛はなかったのだろうか。焼身自殺は数ある自殺のなかで、最も苦しい死に方だという。
起き上がれないのだから他の方法で死ぬのは難しいのかもしれないが、それでもスズキ辺りに説明して毒をくるなどの方法はある筈だ。
いや、スズキは兄のことを好いているから自殺の助けはしないだろう。
そう思っていると、僕はふと気づいた。
周囲の人ごみに、スズキの姿がない。先生のところにいっているのだろうか。
「どうしました?」
僕が訝っていると、テツコが近づいてきた。
先生にやり込められた上、目の前に死体があるためか元気がなかった。調子を尋ねられたのは僕だが、本来は逆の筈だ。
「スズキの奴はどこかと思って」
「そういえば」




