頭に血が上る?
もう一度はないよな?
こんなことを思ったのは、ここまで一緒にいた同僚がふと漏らした一言からだ。
「俺って、なんでこんななのかなあ、ここまでとは……」
正直なんのことだかさっぱり分からない。
見当をつけようにも、思い当たることさえなかった。
まさか、あんなことが実際に起こるとは。
で、その時が来た。
その時なんて、「来ないと判らない」ものなんだ。と、自覚できる程に。
しかも、それはあっという間に過ぎていく。あれっ? と思う間もない。
そして、「おいっ!?」と突っ込む隙もなかった。
「何してくれたんだよ、違う。なんで何も出来ないんだよ」
そこまで、何もしてなかったってわけでもないのに。
「分からんもんだ」なんて生易しい一言で済めば、こんなの簡単なんだろうな。
でも、現実はそうはいかない。
「おい、これでどうして、ここまで放っておけた?」
そんな言葉さえ空を切っていく。
当の本人は、他人からの忠告など耳に届く余裕など、微塵も見られない。
パニックとか一般的な言葉では物足りない程に、平常心とは反対側にいる。
自分を見失っていると、はっきりと判る。
そんなミスをどう片付けるかだが、今がこっちの腕の見せ所なのだろう。
なのに、この好期に、はてさてどうしたものか、ミスした本人同様こっちも相当焦っている。
正直「どうにかしてくれ」か、「代わってくれよ」と言いたいんだ。
チャンスどころか、とんだとばっちりだ。
これを顔に出すなんて、とてもじゃないが、できる状況じゃない。
冷や汗? 違うこの状況で、冷や汗とは言えない。
実際に汗が額から噴出し、背中も流れてるよ、滝のようにな。手はぐっしょりだ。
こんな時できるのは、非常に限られてるだろうな。
もちろん、浅い知恵しか持ち合わせていない自分にはだが。
とにかく、この場はなんとか乗り切った。
いや違う、誤魔化した。
先方には、ひたすら頭を下げまくった。
頭に血が上ったのか下がったのか。
今できるのはこれしかなかったから、うん? 思いつかなかったからだ。
その帰り道、一行目の思いと。途方にくれた同僚と自分がいた。
勘弁してくれ!
まさかこんな思いをしたよ。なんてはいないかもしれない。でも、焦った経験の一つはあるはず。と思います。
人に迷惑を掛けるような失敗は、できるだけ少なくしたいものですね。