Bランクの男
5話ですー
今回はヒゲ視点です
5話 - Bランクの男
俺はボナン。ここアルファミラの街を拠点にしているBランク冒険者だ。
冒険者になるために田舎から出てきてすでに15年。そこまでかかってやっとBランクになれた。
この15年は死に物狂いだった。
なけなしの金をはたいて冒険者登録をし、装備を揃え、英雄と呼ばれることを夢見て討伐依頼ばかりをしてきた。
いまでは亜竜と言われるワイバーン程度なら仲間と共にほとんど怪我なく狩れるほどだ。
今日、俺はBランク魔獣のコカトリスを狩るといった依頼の報酬でギルドで気の合うパーティー仲間と酒をかっくらってた。
酒が入って気分がよくなった俺は受付に歩いていくお嬢様風の子供と後ろを付いてくる執事風の男がいるのを見つけた。
新規登録用のカウンターに向かっていったってことは新規冒険者なんだろう。
けっ。貴族のお遊びかよ。
こちとら命がけでやってるってのによ。
受付が終わるころをいっちょ脅してやろうかと見極めて席を立つ。
ちっこいガキの方に絡んだら帰ってくるのは俺を馬鹿にするような言葉の数々。
後ろにいる仲間たちも俺が馬鹿にされてるのを見て馬鹿笑いしてやがる。
もうぜってぇゆるさねぇ
ガキに訓練所まで来いと告げ、先に行く。
訓練所でいつも使う木製の大斧を手に取ると訓練所の真ん中に陣取る。、
「おい!おまえら!これからここで決闘がある!邪魔にならないようにいったん訓練をやめて端によれ!」
訓練をしている他の冒険者たちへ大声でそう怒鳴る。
そうしているうちにガキが訓練所に来たのを見てみな片付けをはじめ、俺らの周りに集まる。
「おせぇぞ!早く来やがれ!」
「はいはい。そんなに怒鳴ってると禿げますよ。おじいちゃん」
「くっ、この場に来てもまだそういう減らず口を叩くのか!早く獲物選んで真ん中来やがれ!叩きのめしてやる!」
相変わらず口のわりぃガキだ!
とっとと潰して宿屋で一晩泣かせて放り出すか!
気合をいれ大斧を構えるとガキは剣を腰に仕舞うようにしている。
いまさら降参とか言い出してもゆるさねぇぞ。
「剣を構えないでとことんふざけた奴だな。もういい。行くぞ!!!」
「小鳥遊流刀術 浅井。行きます」
「うらぁっ!!!」
前にダッシュしながら斧を勢いよく振り下ろす。
しかしガキは横に動くだけで俺の斧をかわす。
返す斧でそのまま下段からの逆袈裟でガキを追い掛ける。
これも手に持った木剣を滑らせるように当てて斧の力を受け流し向きを変えられる。
「くそっ!」
Bランクのこの俺が!一撃で!しとめられないだと!!
と斧を振り回しさらに追いかけるも一向に斧は標的を捕らえられない。
「んじゃそろそろこっちからも行きますね」
ガキがそう言い放つと途端に俺の視界から一瞬で消えた。
と思えるほどうまく死角をつかれ剣を突きつけられる。
こっちにもBランクとしてのプライドがある!
剣を斧でたたき折ってやるつもりで斧を振り回すが全部避けられたり逸らされたりしてまともに当たらない。
それどころか死角から剣が迫ってきてかわすのに精一杯だ。
ほんとに新人かよ、これ。
そう思った俺は誰にも咎められないだろう。
Bランクだぞ?15年もかけてやっとたどり着いた技術と互角だと!?
ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
その瞬間俺の中なにか殻が割れたような感覚と共にいままで以上の力が溢れてくる。
この感覚はなんだ。
溢れる力で手が。足が。指が震える。
まるで力を無理に押さえつけているかのような感じだ。
身体の中から湧き出る力を押さえつけないように一度身体を自然体にする。
すると力が身体にしっくりなじむ感覚になる。
今まで手こずっていた剣をかわす動作。剣に合わせて斧を振る動作。
ガキを目で追わなくても位置がわかる。次の動作がわかる。
これなら勝てる!
いままでより無茶苦茶に斧を振り回して斧のスピードが違う。威力が違う。
上下左右から襲い掛かるガキの剣をさっきのガキのように軽く捌ける。
小僧の剣戟の回転数がどんどん上がっていくがこんなのじゃまだ甘い。
Bランクを。俺をなめるな。冒険者暦15年はダテじゃねぇんだ。
徐々に斧がガキにかすり始める。
ガキの剣も俺に当たり始める。
当ったところで痛くもなんともない。
このまま押し切る!!
お互いの獲物がお互いを狙う。
ガキの剣は俺の喉に。
俺の斧はガキの肩口に。
そんな一撃すらお互い紙一重で交わし、また次の攻撃へ繋げる。
「ははっ、楽しいなおい。」
そうだ。楽しいんだ。
武器を交えるこの感覚。
致命傷と紙一重のこのやりとり。
プライドとプライドがぶつかり合うこの勝負。
「ひげの癖に強いとかひどいね。お約束的にとっととやられてよ!」
「ふん、ガキになんぞ負けられるか、ばーか。それにお前にはひげしか印象がないのか!」
そんな軽口を叩きあいながら武器を合わせる。
嘘だ。
俺はこいつを認め始めている。
俺と互角に渡り合える技術。
この若さでここまでたどり着いたのは天才だからか。それとも地獄のような研鑽を耐え抜いたか。
「少しは認めてやる。だがそろそろ終わらせるぞ」
「望むところ。とっとと負けて全財産置いてってね」
5mくらい離れたところでお互いが構えを直し相対する。
「おらああああああああああああああああああああああああ!!!」
「はあっ!」
ほとんど一瞬でお互いの間合いに入り斧を振りかざす。
「食らえ!グラビトンスマッシュ!」
「小鳥遊流 参の剣。鷲の一撃」
いままで温存していた斧術のスキルを発動させ斧を地面に叩きつける。
その直後いつものように叩きつけた斧を中心に立ってられないほどの重力場が発生する。
小僧はどうやら上に跳んでいたようで上にいるが重力場からは逃げられまい。
このまま重力が小僧を捕まえれば地面に叩きつけられ身動きも取れなくなるだろう。
勝った。
そう思った途端、頭に衝撃が走った。
目がくらむ。
なにがおこったんだ。
小僧は今、地面に叩きつけられている。
木剣が折れている。
あぁ。殴られたのか。
やっと身に起こったことを理解した俺はそのままふらりと意識を遠ざけ地面に倒れた。
というわけでヒゲ覚醒でした。
いまいち戦闘シーンが苦手です。