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プロローグ

短めですがどうぞー


2015/02/15 改稿版を再投稿しました。

プロローグ

---------


「ところでこいつを見てくれ。どう思う?」


夏休み前のとある教室。

やっとだるい授業もテストも終わって帰り支度を始めている生徒や部活の準備をしている生徒に混ざって帰り支度をしようとしていたところで、後ろ向きに座って椅子の背に組んだ腕を乗せた格好で僕に話しかけてきた一人の生徒がいた。


「その台詞は長いすに座りながら大股開きで堂々とした態度で言うもんだろう。。。」


めんどくさそうに返事をして帰る準備をしながら話の相手をしはじめた。


「まぁまぁ落ち着け友よ。もうすぐ夏休みじゃん?面白いもの見つけたのよ。これ」


と言って差し出してきたものは定期券程度の大きさのプラスチックの様なカード。

色は白というか乳白色で表面になにか文字がかかれている。

それが2枚あるように見える。


「なんとこれ!異世界行きの往復チケットなんだってさ。おまいファンタジー(そういうの)好物だろう?」


ニヤニヤしながら差し出してくるそれ(カード)の内1枚を受け取り渡されたものを見てみる。


確かに好きだけどさ。


表には電車の定期のように行き先や日付を記載する欄があり、名前や判子を押すような枠もある。

裏には何行かの注意書きのような文章がある。そこを読んでみると



・この券は押印欄に使用者の血液を付けキーワードを唱えることで発動します。

・この券は期限が来る、もしくは自らの意思でキーワードを唱えることで帰還できます。

・この券は一度使用した後は他の人間が使うまで同じ使用者の続けての使用はできません。

・行き先の文明レベルに適さない物は持ち込み出来ません。

・行き先ではこの券を肌身離さず持ち歩くようにしてください。



とある。

胡散臭さを感じながらもカードをチェックしている僕を見てニヤニヤした顔からドヤ顔に変わった生徒に向けて視線を向ける。


「で、なんなのよ、これ。つうかどこで手に入れたのよ、こんなの。怪しすぎるだろう」

「いや、な。夏休みに旅行行こうって話してたじゃん。行き先どこがいいかな。ってネットで調べてたらいつの間にか申し込み完了画面になっててな。

 昨日の朝になってそれが届いたのよ。何を言ってるかわからねぇと思うが俺にもわからん!」


このとてつもなく怪しいものを夏休みの旅行にしようと考えている友人を生暖かい目で見る。

しかし仮にこのカードの効果が本物で異世界へ行って戻ってこれるならたしかに夏休みの旅行としては面白いことになりそうであると考える。


ふむ。


「ネタだと思って試してみようにも本物だった場合、なんの準備もなしに異世界に放り込まれるとか自殺行為だよね。。。

 試すにしてもちゃんと準備してからの方がいいか。ちなみにこれがネタだった場合の旅行の行き先は決まってるのかな?」

「お、おう。いつもの通りうちのじーさん家だ。」

「。。。また道場でしごかれるのか。さすがに5年連続は勘弁願いたいなぁ。そもそもそれだと旅行じゃないし。」

「おまいの見た目が変わらないとじーさんからのしごきはなくならないと思うぜ。でもその見た目で強いのは反則だがな」


見た目のことを言われてぐぬぬとしてしまっている僕の名前は浅井(あさい) (しゅん)

誠に残念ながら身長は150cmほどしかない上に腕も体もほとんど肉付きがなく、髪の毛もセミロングくらいの長さがあるためよく女の子に間違われる。


さっきから僕と話しているもう一人の生徒は名前を小鳥遊(たかなし) 神威(かむい)といいこげ茶髪を後ろで縛り170cmほどある体はそこそこがっちりしている。


僕たち二人は5年前ほどから小鳥遊流刀術(実践的な剣術)道場を営んでいる祖父の家へ毎休みごとに訪れ指南を受けている(しごかれている)

イヤなら行かなければいいと思うだろうが神威は半強制、僕自身もファンタジー好きという属性がある為、本物の「刀」に触れる機会も早々ないから半分は自主的に参加している。

まぁ行かなかったら行かなかったでお師匠さんが迎えに来て引きずられていくんだけどね。


また刀術以外にも自然を利用した罠を使った野性動物の捕獲や現代ではあまり使われないサバイバル術などを教えてくれるのもあって表面上は嫌々ながらも実は毎年楽しみにしている行事の一つである。

神威の方が年数としては長く指南を受けているのだがはいまだに僕に模擬戦では勝てない。


「ただどれくらいの帰還に設定するのかはわからんが長い間連絡も取れない状態になるのはさすがにまずくない?」

「それなんだがな、じーちゃんに今年は行けないかも!と連絡をしたら理由を聞かれてな。この事を説明したんだ。

 そしたら『一度顔を出せ。渡すものもあるし家へもわしが口裏合わせておいてやる。』って言ってるんだよ」

「なにそれ親切すぎて怖い。何かたくらんでるんじゃないか。。。?」

「行くってなったら正直手ぶらじゃ何も出来ないだろうしどこにもいけないと思うから武器は借りていくとして口裏あわせしてくれるのは正直助かるんだから別にいいんじゃないか?」

「そうだけどなぁ。。。」


二人が盛り上がっているのは放課後の教室。下校時刻というものもあり見回りに来た先生に教室を追い出されそれぞれ帰宅を開始する。

帰り道で、行くか行かないかを明日までに決めようと話し合い、それぞれの家に向かって別れ、帰宅し自分の部屋のベッドへ倒れこむ。


「異世界かぁ。。。」


半分以上がファンタジー物の本で埋め尽くされている部屋の本棚をぼんやり見ながら頬が緩んでいくのを自覚する。

ファンタジー好きにはたまらない展開であるゆえ仕方ないことではあるが徐々に実感が出てきてこの話自体がネタでないことを心のそこから願うばかりになっている。


「夏休み開始まであと3日で何が出来るか。まずは持っていくものの確認か。あとは今年も家を空けることを言っておかないとな。」


すでに行く気満々になっている僕は神威に「行こう!」とメールをしていた。



--------


終業式も終わり、明日から夏休みになる。

瞬はダッシュで家へ帰り準備をするそうだ。

じーさんの家までは夜行で行くから夜には駅に集合することになるだろう。


俺も家に帰り、親父と一緒にご飯を食べ、持って行くものの再確認を開始する。


下着や着替えは当然のことだが、非常食としての乾パンや水をバッグに詰めていく。

あまり大荷物にしてしまうと動けなくなることを想定して、リュック一つに収まる程度にしておく。


親父に行ってくるとだけ伝えて、駅へ向かうと改札前ではすでに瞬が大荷物を抱えて待っていた。


「はえーって。」

「待ちきれなかったんだよ!」

「子供か!」


遠足に行くようにウキウキしている気分を隠そうともしない瞬を見てほほえましくもなる。

じーさんの家まで行くための夜行の切符を買ってホームで電車を待つ。

電車が到着するまで少しの時間があるので飲み物やちょっとしたお菓子を売店で買っておく。


「おやつは300円までな」

「バナナはおやつに入りますか!」

「バナナはおやつではありません」

「よっしゃ!」


元気よく手を上げながら質問してきたおこさまに少しゆるめの返答を返してやると売店のお菓子を選びに走っていく。


つかバナナなんて売ってなかろうに。


目的の電車がホームに入ってきたので瞬の襟元をつかんで売店から引きはがして電車へ乗り込む。

夜行電車だから席は対面座席だ。


瞬は出発をまだかまだかと待っているがほんと落ち着け。


電車が出発してからもおこさまの暴走は止まらず向こう行ったらなにがしたい、あれがしたい。とほほえましい。

周りに乗っている乗客も生暖かく見てる。

やめて。

俺は関係ない。


さすがに異世界うんぬんというキーワードを言うわけにもいかず、ぼやかしたままで会話をしているが瞬の話が止まらない。

じーさんところにつくまで6時間はかかるんだがまさかこのままずっとか。。。?


電車を分岐駅で乗り換え、山に向かう登山鉄道に。

終点駅からさらにそこから徒歩で1時間。


ちょうど日が昇る朝方にじーさんの家へ到着した。

さすがにこの荷物持ったまま山歩きはきつかった。。。


門の前でじーさんの弟子をやってる人達が掃き掃除をしていたのでじーさんの場所を聞くと道場にいるらしい。

瞬にそれを告げ二人で道場に向かう。


道場に入る前に靴を脱ぎ、扉の隣に置いてある水で足を清める。

水分をちゃんと拭き取り道場へ踏み入れるとそこには正座をして瞑想をしているじーさんがいた。


あいかわらずじーさん、すげぇな。

一瞬そこにいるかどうかわからなくなるくらい気配薄くしてやがる。


「お師匠さま。お久しぶりです。」

瞬がじーさんに対して挨拶をするのに合わせて俺も「じーさん、きたぞ」と挨拶をする。


ゆっくりと目を開け孫と弟子を確認すると、姿勢を正し、俺らを迎えてくれた。


「ようきたな。まずはそこに座って詳しい話を聞かせてくれ。」


俺が手に入れたチケットの話。異世界の話。瞬がものすごい乗り気であるということ。を二人でじーさんに説明をする。

するとじーさんはすっと立ち上がり、道場の裏の部屋へ入っていった。


「どうしたんだろう?」

「なんだべな?」


しばらくしてじーさんは刀を二本持ってきた。


「これが必要になるろう。持っていけ。銘があるような名刀ではないがお前たちには使いやすいだろう」


とそれぞれに一振りづつ。刃渡り80cm程度の平均的な刀より少し長めのものを渡される。心なしか刃幅も太そうだ。

鞘から抜いて刃を見てみると日本刀独特の綺麗な波紋が波打っており少し刃が湿っている気がする。

柄をぐっと握りこんでみるとまるで特注品のように手に吸い付く感じがし、軽く振ってみても刀に振り回される感じは一切しない。

ただ、瞬にはちょうどいいかもしれないが、俺にはちょっと軽いかな。


「ありがとうございます」

「さんきゅー、じいちゃん。でもこんないいものもらっていいのか?」


たしかに武器は借りるつもりだったけどじーさんから渡されると思っていなかった。


「当たり前だ。何があるかわからん以上備えは万全にしておくに越したことはない」


その後はじーさんから戦闘に対する心構えや自分の身を守るためのことなど一通りのおさらいをうけ、心の準備をし、いざ実行の時になる。


荷物を担ぎ券に指先を少し切って出した血をつけると券がうっすらと光り始めるのを見て期待が高まる。


「んじゃじーさん。行ってくる」

「行ってきます」


「んむ。気をつけてな」


二人は目を合わせてうなずくと合わせるようにキーワードを叫ぶ。


「「転移(トリップ)!!」」


その途端まばゆいばかりの光が周りをつつみ、その光が消えるころには二人の姿はなく、神威の祖父のみがたたずんでいた。


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