鍵とトビラ
全ては幻想のように儚く、脆い
ソレはヒトとて同じコト──。
この世には三つ『鍵』がある。
一つは『生』の鍵。
『魂』という器が保管されているトビラを開ける。
二つめは『死』の鍵。
『魂』という器を壊し、その魂を常世へと繋ぐトビラを開ける。
そして、三つ目。
三つ目は『この世』の鍵。
『この世の鍵』はどの『世界』にも影響するカギ。
ある言い伝えがある。
『この世のカギが消滅、あるいは悪しきモノに渡った時世界は滅びる』
と。ありきたりだが、コレには深い理由があると一人の女性は考える──。
「『世界』は全てじゃない。自分が分かる範囲が『世界』よ」
『鍵』を管理する女性。『春夏秋冬 皐月』(ヒトトセ サツキ)。
皐月はいつも着物を着ている。柄はいたってシンプルで黒地に白色の蝶。『鍵』はどこに在るかは知らないが、常に自分が持っていると言う。
月の綺麗な晩、皐月は庭に居た。月は何を照らすコトもなくただ輝いている。
「羅陵王。貴方のしようとしているコトは無理なのよ」
静夜に願うコト。
庭に誰かが入って来たようだ。
分からぬモノは永遠に分からない
入って来たのはまだ十歳くらいの幼い少女。少女は白色のワンピースを着ていて髪は肩ぐらいまで伸びている。
少し、足が透けている。
「今晩は。何か用かしら」
「……教エて下サイ」
少女が片言気味に話す。視線は地面を見ていてその瞳は虚ろ。
「何を?」
「自分ハ、どうなったノですカ……?」
皐月は微笑んだ。
「死んだのよ」
「やっぱリ……。どうすレばいいですカ……?」
「私が開いてあげる。逝く処は怖くないから。恐れないで」
「はイ……」
何かが合さるような音がした。
皐月の後ろが光輝き、その輝きは月の光よりも美しかった。
皐月の背後から黒色のトビラが表れた。
そのトビラは音をたてて、開き始めた。
トビラの向こうは見えない。
「──どうぞ」
「有り難うございまシタ」
少女はそれだけ言うと、トビラの向こうへと消えていった。
トビラは消え、輝いているモノは月の光のみだった。
つづく




