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魔王城の保育園は今日もてんやわんや!~バブ堕ちスキルと100均グッズで、今日も園児を溺愛してます~  作者: サンキュー@よろしく


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第27話 気分はスパイ!? 『スズランテープ』で挑む、ミッション・イン・ポッシブル その2

「ここからが本番ですよ……!」


 私は教室中に張り巡らされたネオンカラーの『スズランテープ』に、等間隔で『宝来鈴』を結びつけていった。

 100均の手芸コーナーに売っている、直径2センチほどの金色と銀色の鈴だ。

 テープが少しでも揺れれば、「チリン♪」と涼やかな、しかし残酷な失格の合図が鳴り響くことになる。


「ひぇぇ……。そんなの絶対ムリだよ」


 ドラゴンのリュウくんが、テープの壁を見上げて尻尾を巻いた。

 ただでさえ大きな体で苦戦しているのに、今度は振動すら許されないなんて。

 彼のやる気が、風船のようにしぼんでいくのが見えた。


(あぁん、もう! しょんぼりしてるリュウくん、可哀想だけど……うなだれて小さくなってるその背中、抱きしめたい衝動に駆られるわ! でもダメ、ここで諦めさせちゃ男の子のプライドに関わる! 成功体験を作ってあげなきゃ!)


 私はリュウくんの前にしゃがみこみ、彼の目を真っ直ぐに見つめた。


「リュウくん、スパイは一人じゃ戦わないんですよ。チームワークが大切なんです」

「……チームワーク?」

「そうです。リュウくん一人だと、背中や尻尾が見えなくて当たっちゃいますよね? でも、お友達が見ていてくれたらどうですか?」


 私はゴール地点で待機していたアリスちゃんを手招きした。


「アリスちゃん、オペレーターをお願いできますか? リュウくんがぶつかりそうになったら、教えてあげてほしいんです」

「おぺ……? わかった! アリスがしれいとうね!」

 アリスちゃんは胸を張り、「まかせて!」とウィンクした。


 そして私は、もう一つの100均アイテムを取り出した。

 『LEDヘッドライト』だ。頭にバンドで装着するタイプのもの。


「これを着ければ、テープがもっとよく見えますよ。さあ、特製ゴーグルです!」

 リュウくんの額にライトを装着する。なんだか本物の特殊部隊みたいでカッコいい。


「おお……なんか強そうだぞ!」

 リュウくんの表情にやる気が戻った。


「よし、ミッション再開です! ターゲットは奥の宝箱!」


 リュウくんは再びテープのジャングルへと挑んだ。

 チリッ……。

 少し動くだけで、鈴が鳴りそうになる。緊張感が走る。


「ストップ! リュウくん、おしりがあぶないよ!」


 アリスちゃんの指示が飛ぶ。

 リュウくんはピタリと止まり、お尻を慎重に低くした。


「右のつばさ、さげて! そのまま、したくぐって!」

「わ、わかった! こうか!?」


 リュウくんは冷や汗をかきながら、体を不自然にくねらせて進む。

 ドラゴンとしての威厳はどこへやら、今はただの巨大なトカゲのようなへっぴり腰だ。

 でも、その必死な姿こそが、何より尊い!


(がんばれ、リュウくん! 震える手足、食いしばった口元……! そしてアリスちゃんの的確な指示! これよ、この協力プレイが見たかったの!)


「ぷるぅ!」


 テープの粘着地獄から生還したプルちゃんも、ゴール側でプルプルと応援している。

 残る難関は、最後の密集地帯だ。

 床スレスレから天井まで、まるでクモの巣のようにテープが張り巡らされている。


「くっ……ここはどうやっても体が当たるぞ……!」


 リュウくんが絶望する。彼の巨体が通れる隙間がない。

 諦めかけたその時。


「待ってリュウくん、そこは壁を走るのよ!」

「壁ぇ!?」

「ザックさん! ヘルプ!」


 私の合図で、影魔族のザックさんが動いた。

 彼はスッとリュウくんの足元の影に入り込み、影を実体化させて「足場」を作った。

 壁の高い位置、テープの隙間が比較的広いエリアへ続く道だ。


「よし、乗るんだリュウ!」

「うおぉぉっ! 連携プレーだ!」


 リュウくんはザックさんの影の足場を蹴って壁に飛びつき、ヤモリのようにへばりつきながら、最後の難関を突破した。

 スカル先生が「なんと……物理法則と魔力のハイブリッド機動……! これは教科書にはない戦術だ」と感心してメモを取っている。


 そして、ついに。

 リュウくんの手が、宝箱に届いた。


「確保ぉぉッ!!」


 チリーン♪

 勢いあまって、勝利のファンファーレ代わりに鈴が盛大に鳴り響いたが、もう関係ない。

 リュウくんは宝箱を抱きしめて、ゴールラインを転がり抜けた。


「やったー! せいこう!」

「すごかったよリュウくん!」


 アリスちゃんとプルちゃんが駆け寄り、もみくちゃになる。

 私は宝箱の蓋を開けた。

 中に入っていたのは、100均の『金メダルチョコ』と『キラキラ宝石シール』だ。


「ミッションコンプリート! みんな、よく頑張りました!」


 私は一人ひとりの首にメダルチョコをかけ、手作りの「スパイ認定証」を手渡した。


「俺……やればできるんだな……!」


 リュウくんがメダルを握りしめて涙ぐんでいる。

 

「みんなのおかげだ! 俺たち最強のチームだぞ!」


「ふふっ、そうですね。一人じゃ無理でも、みんなならできます」


 スズランテープと鈴で作った100均の罠は、子供たちにかけがえのない「達成感」と「絆」を与えてくれたようだ。


————————


連絡帳リュウくん

ヒナより保護者様へ

今日は室内で「スパイごっこ」をしました。

お部屋全体にスズランテープ(ビニール紐)と鈴を張り巡らせて「触ったらアウト」の障害物コースを作ったのですが、リュウくんは最初は体の大きさが邪魔をして苦戦していました。

でも、すぐに諦めるのではなく、お友達のアリスちゃんの声かけを聞いたり、ザックさんと協力したりして、見事に最後の宝箱までたどり着くことができました!

ゴールした瞬間のリュウくんの誇らしげな顔は、本当にかっこよかったですよ。

獲得した「金メダルチョコ」を、お家で自慢話を聞きながら食べてあげてくださいね。


ミリアより

いつもお世話になっております。

リュウの毛、まるで雷に打たれたようにフワッフワになっていて笑ってしまいました。夫(炎竜将軍)が「新たな雷属性の覚醒か!?」と真顔で驚いておりましたが、ただの静電気と知ってガックリしておりました(笑)。

頂いた金メダルを首にかけたまま、「俺は伝説のスパイだ」と言ってお風呂にも入ろうとするので止めるのが大変でした。

体格のハンデを知恵と仲間との協力で乗り越えたこと、親としても嬉しく思います。

……ただ、家の中でも毛糸を張り巡らせて修行の続きをしようとするのは、正直、掃除の邪魔なのでやめさせてください(笑)。

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