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魔王城の保育園は今日もてんやわんや!~バブ堕ちスキルと100均グッズで、今日も園児を溺愛してます~  作者: サンキュー@よろしく


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第20話 最強の要塞づくり その1

 今日は室内遊びの日だ。外は魔界特有の雷雨だが、室内は魔法のヒーターのおかげでポカポカしている。


 でも、子供たちの姿が見当たらない。

 広い教室内がやけに静かだ。


「あれー? みんなどこに行ったんですかー?」


 私がわざとらしく声を上げながら、机の下を覗き込むと――。


「キャーッ! みつかったー!」

「おしくらまんじゅうだー!」


 机の下の狭いスペースに、魔王の娘アリスちゃん、ドラゴンのリュウくん、スライムのプルちゃん、そして双頭犬のベル&ロス兄弟が、ぎゅうぎゅう詰めになって隠れていた。

 みんなで身を寄せ合って、小さな空間を楽しんでいるようだ。

 子供って、どうしてああいう狭い場所が好きなんだろう。ダンボール箱の中とか、押入れの中とか。それは魔物の子も同じらしい。


「ここはボクらの『あじと』なんだぞ!」

「わるものははいれないの!」


 リュウくんとアリスちゃんが、机の脚を柱に見立てて張り切っている。

 微笑ましい光景だ。

 けれど、流石に全員が入るには狭すぎる。リュウくんの尻尾がはみ出しているし、ベル&ロス兄弟の片方の頭が「グェ……苦しい……」と机の天板に押し付けられている。


(あぁん、もう! ぎゅうぎゅう詰めになってる姿、可愛すぎる! アリスちゃんのほっぺがリュウくんの肩にむぎゅってなってるのとか、プルちゃんが隙間を埋めるように変形してるのとか、全部まとめて写真に撮りたい!)


 でも、これでは窮屈すぎて怪我をしてしまうかもしれない。

 かといって、「出てきなさい」と言うのも無粋だ。彼らにとって、この「囲まれた空間」こそが楽しいのだから。


「それなら、もっと広くて素敵な『秘密基地』を作りましょうか!」


 私の提案に、子供たちが机の下からワッと飛び出してきた。


「ひみつきち!?」

「つくるー! つくりたいー!」


 彼らの目が爛々と輝いている。男の子も女の子も、この響きには弱い。


「ふふふ、任せてください。今日はお部屋の中に、みんなだけのお城を建てますよ!」


 私は保育室の中央を片付けさせると、虚空に手をかざした。


「スキル発動――『100均市場ディメンション・マーケット』!」


 ブォンッ!

 空間が裂け、そこから現れたのは、100円ショップの『DIY・収納用品コーナー』の棚だ。

 私が大量に取り出したのは、以下のアイテムである。


 ・『突っ張り棒(伸縮タイプ・最長120cm)』×20本

 ・『ワイヤーネット(60×40cm)』×20枚

 ・『結束バンド(100本入り)』×2袋

 ・『マルチカーテンクリップ』×20個

 ・『フリークロス(星柄、チェック柄など)』×10枚

 ・『大きめの洗濯バサミ』


 白くて細い棒の山と、金属の網、そしてカラフルな布たち。

 これが今日の建材だ。


「ほう、これは……」


 それを見た園医のスカル先生リッチが、興味深そうに近づいてきた。


「ヒナ先生、この白い棒は……伸縮自在の支柱ですか。空間に合わせて長さを調節し、壁と壁の間で固定するとは、単純ながらも応用範囲の広い道具ですな。そしてこの金属の網……軽量で強度があり、組み合わせ次第で様々な形状を作れる。実に合理的な建材です」


 スカル先生の青い炎の目が、私の手にある『突っ張り棒』を観察している。

 私は一本を手に取り、くるくると回して伸ばしてみせた。


 シュッ、カチッ。

 棒が倍の長さに伸びて固定される。


「見てください先生! この棒、回すだけで固定されるのですな!」

 スカル先生が感心して頷く。


「そして、この結束バンド……! 一度締めると戻らない構造ですか。釘や接着剤を使わずに部材を固定できるとは、子供たちにも扱いやすく、安全ですな」


 子供たちはスカル先生の話を聞いて、さらに興奮した。


「すっげー! てんちゅうだ!」

「これをくみあわせて、ようさいをつくるんだね!」


 アリスちゃんやリュウくんが、それぞれの持ち場につく。

 まずは骨組み作りだ。


「いいですかー、このワイヤーネットと網を、このバンド(結束バンド)で留めますよ」


 私が手本を見せる。バンドの先を穴に通して、引っ張る。

 ジジッ!

 小気味よい音と共に、二つの網がガッチリと固定された。


「おおっ、一度締めると二度と戻らない! これは『隷属の首輪』と同じ術式か!」

 リュウくんが感心して結束バンドを見つめる。ハサミで切らない限り外れない強度に、魔族の本能が刺激されているようだ。


 みんなでジジッ、ジジッと結束バンドを締めていく。

 ワイヤーネットを箱状に組み立てたり、突っ張り棒を柱にして壁際に固定したり。

 100均アイテムは組み合わせ次第で無限の可能性がある。

 あっという間に、部屋の一角に巨大なジャングルジムのような、迷路のような構造体が出来上がっていった。


「ここに布をかけます!」


 私はカーテンクリップを使って、ワイヤーや突っ張り棒にカラフルな布を吊るした。

 星柄、チェック柄、無地。

 様々な布がかけられると、中が見えない「個室」が出現する。


「かんせーい!!」


 子供たちの歓声が上がった。

 名付けて『ひだまり要塞』。

 一見すると継ぎ接ぎだらけのテント小屋だが、中に入れば、そこは大人禁制のワンダーランドだ。


「さあ、入ってみましょう!」


 アリスちゃんを先頭に、子供たちが次々と布をめくって中へと潜り込んでいく。


「わあ……! なか、ひろーい!」

「ここがボクのへやだ!」

「ここは武器庫(おもちゃ入れ)ね!」


 子供たちの声が布の向こうから聞こえてくる。くぐもった楽しげな声。

 この「隔離された感」がたまらないのだ。


「スカル先生も入ってみますか?」


 私が尋ねると、スカル先生はブルブルと首(頭蓋骨)を振った。


「滅相もない! あのような狭い空間は、子供たちだけの聖域です。大人が土足で踏み込むのは野暮というものでしょう」


 そうこうしているうちに、基地の中は大賑わいだ。

 しかし、あまりに完璧な基地が出来てしまったがゆえに、新たな問題が発生しようとしていた。


「この基地は、我々『こども帝国』が占領した!」


 中からリュウくんの野太い(4歳児にしては)声が響いた。

 

「だれもいれなーい!」

「おとなは、はいっちゃダメー!」


 なんと、子供たちが立て籠もってしまったのだ。

 突っ張り棒のバリケードは、予想以上に頑丈らしい。

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