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魔王城の保育園は今日もてんやわんや!~バブ堕ちスキルと100均グッズで、今日も園児を溺愛してます~  作者: サンキュー@よろしく


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第17話 1月19日「カラオケの日」 みんなで響け、ひだまりの歌! その2

「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 ララちゃんが泣き叫ぶたびに、衝撃波のような魔力が拡散する。

 ガラス窓がビリビリと震え、眠りかけていた子供たちが驚いて目を覚まし、泣き出した。


「うわぁぁん! あたまがいたいよぉ!」

「ララちゃん、こわいー!」


 お友達の悲鳴を聞いて、ララちゃんはさらに絶望した。

 しかし、彼女が心を閉ざそうとしたその時、私はステージに駆け上がった。

 暴れる魔力の嵐の中を突っ切り、うずくまるララちゃんの前に立つ。


「ララちゃん!!」


 私は大きく息を吸い込んだ。

 ララちゃんが、自分の才能を呪って、心を閉ざしてしまうなんて絶対にダメだ。

 私は両手の拳を腰に当て、頬を限界までプクーッと膨らませた。

 悲劇のヒロインになろうとしている彼女を、全力で引き止める。


(もうっ! ララちゃん、自分を責めないで! あなたの歌声は素晴らしいのよ! ただちょっと、パワーが溢れすぎちゃっただけ。その才能、私が絶対に守ってみせる!)


「もう! 自分の素敵な歌声を、そんなふうに嫌っちゃ、【めっだよ!】」


 スキル発動――【絶対規律《めっだよ!》】。


 キィィィィィン……パァァァンッ!!


 ピンク色の衝撃波が、ララちゃんの放つ暴走魔力と衝突し、それを優しく弾き飛ばした。

 ハウリングが止み、静寂が戻る。


「……せん、せい?」


 ララちゃんが涙目で顔を上げる。

 私は頬の空気を抜き、しゃがみこんで彼女の肩を掴んだ。


「ララちゃんの歌は、とっても素敵でしたよ。ただ、ちょっとパワーが強すぎただけです」

「でも……みんなを、こわがらせちゃった……」

「それは、ララちゃんが一人で全部背負おうとしたからです」


 私は園庭に散らばっていた100均アイテムを指差した。

 『光るタンバリン』と『マラカス』だ。


「歌はね、一人じゃなくて、みんなで作るものなんですよ。みんなの音と混ざれば、ララちゃんの魔力も『楽しい音楽』に変わります!」


 私は子供たちに呼びかけた。


「さあみんな! ララちゃんのバックバンドになりますよ! 楽器を持って!」


 私の声に、アリスちゃんやリュウくんが顔を上げた。

 最初は怖がっていたけれど、私の「大丈夫」という顔を見て、勇気を出して楽器を手に取った。


「わたし、タンバリンやる!」

「ボク、マラカス!」

「ぼくは、このバケツをたたく!」


 子供たちがステージの周りに集まってくる。

 ザックさんも復活して、へろへろになりながらもマラカスを握った。


「ララちゃん、もう一回。今度はみんなと一緒に歌って!」


 私が落としていたエコーマイクを拾って渡すと、ララちゃんは震える手でそれを受け取った。

 周りには、楽器を構えたお友達がいる。

 みんな笑ってる。待ってくれている。


「……うん!」


 ララちゃんがマイクを握り直した。

 私が手拍子を始める。


「さん、はい!」


 シャンシャンシャン! シャカシャカ! ドンドコドン!

 タンバリンの明るい音、マラカスの陽気なリズム、バケツ太鼓の力強い音。

 ガチャガチャとした賑やかな音が中庭に響く。


 そこに、ララちゃんの歌声が乗った。


「ラァァァァァ――♪」


 さっきと同じ、力強い歌声。

 でも今度は違う。

 彼女の歌から放たれる強力な魔力は、周りのガチャガチャした音の波にぶつかって砕け、キラキラした粒になって拡散していく。

 「魅了」や「睡眠」の呪いは、「興奮」や「歓喜」のエネルギーへと変換されたのだ。


「すごい! 体が勝手に動き出す!」

 スカル先生が、骨をカクカクさせて踊りだした。

「ふむ、複数の音源が干渉し合い、魔力の波長を相殺しているのですな。これなら精神への負荷もなく、純粋に音楽として楽しめます!」


 子供たちも、演奏しながらピョンピョン飛び跳ねている。

 ララちゃんも、もう目を閉じていない。

 みんなの楽しそうな顔を見て、満面の笑みで歌っている。


 『みんなー、いっしょにー!(ワンワンワン……)』


 エコーマイクのチープな響きと、子供たちの大合奏、そしてセイレーンの美声。

 それは世界一ちぐはぐで、世界一楽しいオーケストラだった。


(きゃーっ! ララちゃん、輝いてる! みんなと一緒なら、こんなに素敵な笑顔になれるのね! そのキラキラした瞳、一生忘れないわ!)


 ひとしきり歌って踊った後、ララちゃんは肩で息をしながら、でも満足そうに笑った。


「せんせー! うたうの、たのしい!」


 そのキラキラした瞳を見て、私は心から頷いた。

 歌は呪いなんかじゃない。いつだって、誰かと繋がるための魔法なのだ。


————————


連絡帳ララちゃん

ヒナより保護者様へ

今日は「カラオケの日」ということで、みんなでのど自慢大会をしました。

ララちゃんは最初、自分の歌の力でお友達に迷惑をかけてしまうことをとても気にしていましたが、おもちゃのマイクを使い、お友達みんなで楽器を演奏して一緒に盛り上がることで、とても楽しく歌うことができました。

ララちゃんの歌声は本当に素敵で、聞いている私たちまで元気をもらいましたよ。

お友達の伴奏に合わせて歌うララちゃんは、本物のアイドルみたいに輝いていました。

「みんなとうたうと、こわくないよ」と本人も喜んでいましたので、ぜひお家でも、ご家族みんなで賑やかに歌ってあげてください。


セイレーン・クイーンより

いつも娘がお世話になっております。

連絡帳を読んで、涙が止まりません。あの子の歌の力は強すぎて、私自身、歌うことを禁じるしか守る方法がないと思っていました。

でも、「みんなで歌えば怖くない」のですね。独唱ソロではなく、合唱アンサンブルこそが、あの子の力を制御する鍵だったとは……。

帰宅したララが、頂いたピンク色のマイクを握りしめて、「ママ、いっしょにうたおう!」と誘ってくれました。

今夜は久しぶりに、城が揺れない程度の声で、親子で歌ってみようと思います。

先生、あの子に歌う喜びを取り戻してくださり、本当にありがとうございました。

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