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魔王城の保育園は今日もてんやわんや!~バブ堕ちスキルと100均グッズで、今日も園児を溺愛してます~  作者: サンキュー@よろしく


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第14話 首が落ちても大丈夫!? 『強力面ファスナー』でデュラハンくんの悩みを解決! その1

 魔王城の中庭には、今日も不穏な紫色の空の下、静かな寝息が響いている。

 ひだまり保育園。そこは私が守るべき小さなお城だ。

 今はちょうど、お昼寝の時間が終わるところだった。


「はーい、みんな! おきましたかー? おやつの前に、お外で体を動かしますよー」


 私がカーテンを開けて声をかけると、お布団からモゾモゾと小さな魔物たちが起き出してきた。

 スライムのプルちゃん、ドラゴンのリュウくん、魔王の娘アリスちゃん。

 みんな「ふぁぁ……」とあくびをしたり、背伸びをしたりしている。


(きゃーっ! みんなの寝起き姿、可愛すぎる! アリスちゃんの寝癖も、リュウくんのよだれも、全部まとめて愛おしい! このまま二度寝させてあげたいけど、生活リズムも大事だから心を鬼にして起こさなきゃ!)


 けれど、部屋の隅のお布団の上で、一人だけじっと動かない男の子がいた。

 全身を漆黒の騎士鎧に包んだ男の子。

 デュラハン(首無し騎士)族の、デュランくん(5歳)だ。


 彼は上半身だけ起こして座っているのだが、立ち上がろうとはしない。

 そして、本来あるべき首の上に頭はなく、彼は自分の頭を膝の上に置いて、大事そうに撫でている。

 顔立ちは端正な金髪の美少年なのだが、いかんせん、その顔が胴体と離れているのだから、初見の人は腰を抜かす。


「デュランくん、どうしました? みんな行っちゃいますよ?」


 私がしゃがみこんで声をかけると、膝の上に置かれたデュランくんの頭が、悲しげに目を伏せた。


「……先生。ボク、ここでお留守番してる」

「えっ? どこか具合が悪いんですか?」

「ううん。立ち上がって動くと、また……コロコロしちゃうから」


 デュランくんの声は、胴体の胸のあたりから響くのか、それとも抱えている頭から出ているのか不思議な感じだが、そのトーンは沈んでいる。

 彼は、自分の種族特有の悩みを抱えていた。

 寝起きでまだ体がしっかりしていない時に走ったり跳ねたりすると、バランスを崩して頭を落としてしまい、コロコロと転がっていってしまうのだ。

 以前、寝ぼけて頭を落としてしまい、それを他の子がボールと間違えて追いかけそうになったことがトラウマになっているらしい。


「ボクの頭、丸いから……みんながつい蹴りたくなっちゃうんだ」

「そんなことありませんよ! みんなデュランくんの頭だって分かってますから」


 慰める私に、デュランくんは手に持った首を横に振った。


「ダメなんだ。ボク、走るのが怖い。また頭が取れて、どこかに行っちゃったらどうしようって……」


 切実な悩みだ。

 首が繋がっていないというのは、日常生活において大変なハンデである。

 でも、だからといって元気な5歳の男の子が、ずっとお布団の上でジッとしているなんて、保育士として放っておけない。


(うっ……なんて切ない悩み……! 自分の頭を抱えてしょんぼりしてるデュランくん、守ってあげたい! その不安そうな顔を、とびっきりの笑顔に変えてみせるわ!)


「分かりました。それなら、デュランくんが思いっきり走っても大丈夫なように、先生が魔法をかけてあげましょう!」


 私は立ち上がり、自信満々に宣言した。

 デュランくんの頭がパッと顔を上げ、胴体もガタッと反応する。


「まほう……?」

「そうです! 今日はみんなで『ボール遊び』をしようと思ってたんです。デュランくんも絶対にエースになれますよ!」


 私は園庭に子供たちを集めると、いつものように虚空に手をかざした。


「スキル発動――『100均市場ディメンション・マーケット』!」


 ブォンッ!

 空間が裂け、白い光と共に日本の100円ショップの商品が現れる。

 今回取り出したのは、以下のアイテムだ。


 ・『やわらかサッカーボール(スポンジ製)』×3個

 ・『カラーコーン(ミニサイズ)』×4個

 ・『強力・粘着付面ファスナー(10センチ幅)』×1巻


 特に最後のアイテム。通称「マジックテープ」や「ベルクロ」と呼ばれる、あれだ。

 裏面が強力な粘着シールになっていて、バリバリと剥がしたりくっつけたりできる、人類の叡智である。


「ほう、これは……」


 それを見た園医のスカル先生リッチが、興味深そうに近づいてきた。


「ヒナ先生、この黒と白の帯は……表面に無数のフックとループがありますな。これを噛み合わせることで、強力な結合力を生み出すのですか。着脱が容易でありながら、横方向の力には強い……。実に合理的な固定具です」


 スカル先生の青い炎の目が、私の手にある面ファスナーを観察している。


「ええ、とっても便利なんですよ。さあ、デュランくん。ちょっと失礼しますよ」


 私はハサミを取り出し、面ファスナーを適当な長さにカットした。

 そして、デュランくんの鎧の首元の部分(襟の内側)と、彼が持っている頭部の首の断面付近(肌に直接貼るわけにはいかないので、兜の顎紐のようなパーツ)に、それぞれペタリと貼り付けた。


「えっ、なに? なにこれ?」

「これはね、魔法のテープです。さあ、頭を乗せてみて?」


 デュランくんはおずおずと、自分の頭を胴体の上に乗せた。

 カチッ、という音はしないが、フック面とループ面がしっかりと噛み合う感触があったはずだ。


 上から軽く手で押さえる。

 ギュッ、ギュッ。


「よし。これで動いてみてください」


 デュランくんは、恐る恐る首を左右に振ってみた。

 いつもなら、この動作だけでズルリと滑り落ちそうになる頭が、ピタリと胴体に吸い付いている。


「……え?」

「ジャンプしてみて?」


 デュランくんが、その場でぴょんと跳ねた。

 ガシャン! と鎧の音はしたが、頭は微動だにしない。


「落ちない……! ボクの頭、落ちないよ!」


 デュランくんの顔が、驚きと喜びで輝いた。

 彼は信じられないといった様子で、首を前後左右に激しく振ってみた。

 それでも、強力な100均の粘着力と噛み合わせは、がっちりと彼の頭をホールドしている。


「すごーい! くっついてる!」

「デュランくん、ふつうの人みたい!」


 周りで見ていたアリスちゃんやリュウくんも歓声を上げる。


「なるほど、物理的な結合で頭部を安定させるとは。これなら激しい運動にも耐えられそうですな」

 スカル先生も感心して頷いている。


「さあ、これならサッカーができますよ! みんな、チームに分かれて試合開始です!」


 私がボールを蹴り出すと、デュランくんは誰よりも早く駆け出した。

 その目には、もう怯えの色はなかった。

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