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魔王城の保育園は今日もてんやわんや!~バブ堕ちスキルと100均グッズで、今日も園児を溺愛してます~  作者: サンキュー@よろしく


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第12話 1月17日「防災とボランティアの日」 『手作り防災頭巾』でサラちゃんを守れ! その1

 1月17日。

 保育室の壁に掛けた100均のカレンダーには、『防災とボランティアの日』と記されている。

 かつて日本で起きた大きな震災をきっかけに定められた、忘れてはならない大切な日だ。


 私は窓の外を見た。

 魔王城の中庭は、今日も平和そのものだ。

 けれど、ここは魔界の最前線。いつ勇者が攻めてくるか分からないし、パパママの夫婦喧嘩で城が半壊することだってあるらしい。

 備えあれば憂いなし。


「よし、今日は避難訓練をしましょう!」


 私が宣言すると、お絵かきをしていた子供たちが顔を上げた。


「ひなんくんれん?」

「なにそれー? おいしいのー?」


 首を傾げているのは、魔王の娘アリスちゃん(5歳)や、ドラゴンのリュウくん(4歳)。

 そして、教室の隅っこで一人、ぽつんと座っている女の子がいた。

 燃えるような赤い髪に、トカゲのような尻尾が生えた女の子。

 火蜥蜴サラマンダー族のサラちゃん(4歳)だ。


 彼女は少し恥ずかしがり屋で、いつもみんなから少し距離を取っている。

 なぜなら、彼女は緊張したり感情が高ぶったりすると、髪の毛が超高温になり、毛先からポッと火が出てしまう体質を持っているからだ。


「……くんれん、こわくない?」


 サラちゃんが不安そうに尻尾を抱きしめている。

 自分の炎で何かを壊してしまうのではないか、いつも心配しているのだ。


(あぁん、もう! なんて健気なの! 自分の力を怖がって、小さくなってるサラちゃん……抱きしめて「大丈夫だよ」って言ってあげたい! その赤い髪も、不安げな瞳も、全部まとめて愛おしい!)


 私は優しく微笑んで、彼女の近くに歩み寄った。


「怖くないですよ。もしもの時に、みんなで助け合う練習です。まずは、大事な道具を作りますよ!」


 私は園庭に子供たちを誘導し、レジャーシートの上に座らせた。

 そして、虚空に手をかざす。


「スキル発動――『100均市場ディメンション・マーケット』!」


 ブォンッ!

 空間が裂け、そこから現れたのは生活雑貨コーナーの棚だ。

 私が取り出したのは、以下のアイテム。

 『アルミ保温シート(大判サイズ)』

 『ふかふかスクエアクッション(座布団)』

 『平ゴム』

 『裁縫セット』


「ほう、これは……」


 それを見た園医のスカル先生リッチが、興味深そうに近づいてきた。


「ヒナ先生、この銀色のシートは……非常に薄いですが、熱を反射する素材のようですな。軽量でありながら断熱性に優れているとは、実に機能的だ。そしてこのクッション……衝撃を吸収する緩衝材として使うのですか。これらを組み合わせれば、簡易的ながらも頭部を守る防具になりそうですな」


 スカル先生の冷静な分析に、私もニッコリと頷く。


「ええ、とっても便利なんですよ。さあ、みんなで作ってみましょう!」


 スカル先生の解説を聞いて、子供たちの目がキラキラと輝き出した。


「かっこいいー!」

「ぼく、それほしい! さいきょうのカブト!」


 リュウくんたちが我先にと手を伸ばす。

 私はザックさんとポル君(用務員のポルターガイスト)に手伝ってもらい、即席の工作タイムだ。

 座布団を二つ折りにして、アルミシートで包み込むように縫い付ける。あご紐としてゴムをつければ……。


「じゃーん! 『手作り防災頭巾』の完成です!」


 銀色に輝く頭巾は、なんだか小さな宇宙飛行士か、未来の兵士みたいで可愛い。

 私は一人ひとりに防災頭巾を配り、被り方を教えた。


「あったかーい!」

「ふかふかするー!」

「みてみて、ぼく、ぎんいろのきし!」


 みんな大喜びだ。アリスちゃんも鏡を見て、「これなら、おしろがこわれてもへいきね!」と頼もしいことを言っている。

 でも、サラちゃんだけは、防災頭巾を受け取ろうとせず、手を後ろに隠してモジモジしている。


「サラちゃん? どうしました?」

「……だって、わたしのカミのケ、あついから。これかぶったら、なかから燃えちゃうかも……」


 サラちゃんは、自分の髪の毛の熱で頭巾の内側を焦がしてしまうのを恐れているようだ。

 サラマンダー族の髪は、感情が高ぶると鉄をも溶かす高熱を帯びる。普通の布なら、被った瞬間にチリチリになってしまうこともあるらしい。

 せっかく先生がくれた「最強の兜」を、自分のせいで台無しにしたくない。そんな優しい気持ちが伝わってくる。


(うっ……なんて優しい子なの! 自分のことより、道具を大事にしようとするなんて……! その心遣い、先生はちゃんと分かってるよ!)


「大丈夫ですよ。サラちゃんの分は『特別仕様』にしますからね」


 私はニッコリ笑って、もう一枚アルミシートを取り出した。

 他の子の頭巾は外側だけアルミで覆っているが、サラちゃんの分だけは、髪の毛が触れる内側にもアルミシートを丁寧に縫い付けた。

 これで外からの衝撃も、中からの髪の熱も防げる完全防備だ。


「はい、どうぞ。これなら内側も銀色だから、サラちゃんの髪の火でも燃えませんよ」


 私が頭巾を被せてあげると、サラちゃんは恐る恐る頭を触った。

 ボッ、と髪の先から小さな火が出たが、内側のアルミシートは銀色の輝きを保ったまま、熱を反射している。


「わあ……! なか、ツルツルしてる! もえない! すごい!」


 サラちゃんの顔がパァッと明るくなった。

 彼女は嬉しそうに頭巾を撫で回し、何度も鏡を覗き込んでいる。


「ありがとう、せんせー! これならわたしも、みんなといっしょにいられる!」


 その笑顔を見て、私も嬉しくなった。

 さあ、装備は完璧だ。

 次はいよいよ、避難訓練の本番である。

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