#1-61:連なる罠
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【前話のあらすじ:要塞「封心」。そこには、平地に陣取る三万と城壁上の一万の守備兵。志文は、中央に葉旋の七千を据え、両翼に、志文の一万四千と杜箭の一万七千を配し、凹型の陣形で、魯国軍に突撃する。志文は馬を疾駆させながら、嫌な「予感」を感じ取っていた……】
その光景は、戦の常識を根底から覆すものだった。
激突の瞬間、衛国軍 三万八千の先頭を駆ける志文と杜箭は、眼前の魯国軍 三万が発する凄まじい「殺気の壁」に全身を強張らせていた。
大地を叩く数万の蹄の音、金属の擦れる不快な鳴動。
誰もが「鉄と鉄の正面衝突」を覚悟し、歯を食いしばった、その時だった。
「……なにっ!?」
杜箭の驚愕の声は、砂塵に掻き消された。
志文・杜箭の両翼の視界の先、まさに刃を交えようとしたその刹那、正面の魯国軍が、まるで海が割れたかのように、左右へと鮮やかに「分かれた」のだ。
それは退却でも敗走でもない。
極めて高度に練り上げられた、一糸乱れぬ「開門」であった。
「止まれ! 罠だ、踏み止まれッ!」
志文は反射的に手綱を引いた。
だが、背後からは勝利を信じて突進する一万四千の将兵が、凄まじい慣性となって押し寄せていた。
「志文、無理よ! 後続の勢いが強すぎるわ!」
白麗が悲鳴に近い声を上げる。
先行する志文、杜箭の部隊は、目の前に出現した「無の大穴」へと吸い込まれるように突っ込んでしまった。
しかし、その正面には敵がおらず、ただ平原が広がっていた。
速度を緩めようにも、後ろから押し寄せる味方の波がそれを許さない。
両翼の志文軍・杜箭軍の戦列は、まさにゴムのように、前へ前へと引き伸ばされていった。
対して、葉旋の軍だけは、敵の堅固な堅陣に阻まれ、後方に留まっていた。
すなわち、凹型の陣形は、今やV型の陣形へと、様変わりしていたのである。
「いかん、戻せ! 陣を収束させろ!」
杜箭が咆哮し、馬を反転させようとした時には、すでに手遅れであった。
伸び切ったゴムが限界を迎えるように、志文・杜箭の軍と、後方に控えていた葉旋軍との間に、致命的な「隙間」が生まれていた。
左右に割れていた魯国軍の精鋭たちが、間髪入れずにその「隙間」へと雪崩れ込む。
「盾を連ねよ! 楔を打ち込め!」
敵将の鋭い号令が響く。
志文たちの背後、ちょうど葉旋が率いる中央七千の両脇に、瞬く間に鉄壁の盾の壁が構築された。
各軍分断であった。
突出した志文軍と杜箭軍の両翼は、敵陣の深奥で完全に孤立したのである。
そして彼らの背後には、厚い盾を並べ、長槍を突き出した魯国軍の堅陣が「蓋」をするように立ち塞がっていた。
各軍がお互いを助けに行こうとも、この「蓋」に阻まれ、身動きが取れなくなっていた。
「……ちっ、武威城の将は、維寿将軍のもとに行ったはず。つまり、新手の難敵か」
志文は、滴る汗を拭うこともせず、周囲を包囲しつつある敵の群れを睨み据えた。
戦列は間延びし、指揮系統は分断され、兵たちの間には「取り残された」という恐怖が急速に伝播していく。
そして、間髪を入れずに、「封心」の城壁から、空を黒く染めるほどの矢の雨が降り注ぎ始めた。
「ぎゃあぁっ!」 「盾だ! 盾を構えろ! 足を止めるな!」
矢は、孤立した志文たちの頭上へと、正確に死を運んできた。
「殿! このままでは中央が各個撃破されます。葉旋殿の首が飛ぶのも時間の問題です!」 羅清が愛馬を寄せ、必死の形相で叫ぶ。
志文は、この窮地を脱する手立てが、ただ一つだけだということをわかっていた。
敵が作った「蓋」の外側に出ることである。
「……姜雷!」
「ここに!!」
「……殿。ようやく、暴れていいんですか?」
姜雷の不敵な笑みを浮かべている。
「死ぬなよ」 志文は、姜雷をじっと見つめた。
「――委細承知ィ!! てめぇら、行くぞぉッ!!」
その瞬間、戦場に人ならぬ獣の咆哮が、地響きを伴って轟いた。
姜雷が吠えたのだ。
その気圧に、近くにいた魯軍の馬たちが怯えて立ち上がる。
「道を開けろォ! 雑兵どもッ!!」
姜雷は、巨大な薙刀を、まるで藁を振るうかのように軽々と旋回させると、単騎で背後の盾の壁へと突っ込んだ。
魯国軍の精鋭たちが盾を重ね、槍を突き出すが、姜雷にとっては枯れ木の柵も同然のようであった。
「フンッ!!」
薙刀の一振りが、重装歩兵の厚い盾を紙細工のように粉砕し、十人の兵をまとめて十歩先まで吹き飛ばしていく。
「はははっ! これだ! この手応えだ!」
豪快な笑い声を上げながら、姜雷は血の飛沫の中を、暴風となって爆進していく。
姜雷の配下もまた、姜雷の背を必死に追っていた。
魯国軍の「鉄の蓋」が、明確な「亀裂」を見せていた。
「……羅清、左翼の収束を頼む。林業、宋燕、衛射、芳蘭! そなたたちも羅清に従え。潰れ役を担い、敵の注意を引きつけつつ、兵を掻き集めろ!」
志文の命で、羅清が素早く、林業の隊を前線に送る。
林業は薙刀を構えると、配下と共に、砂塵に紛れて敵の十人長、百人長へと肉薄し、精密かつ無慈悲な一撃で次々と討ち取っていった。
林業に続くように、衛射の軍が連なり、城壁の守備兵へと弓を放っていた。
「ふむ……ここまで飛んでくるとはな……衛射という男は、やはり化け物のようだな……だが、林業、あれが最も面倒だな……」
城壁の隅で男は、そう呟いた。
「……羅清、任せたぞ。生きて戻れ、必ずだ!」
「お任せを。……ご武運を!」
志文は、右翼に視線を飛ばした。
「夜叉、朱炎、白麗……行くぞ。ここから右翼へ、横断する。右翼で孤立している杜箭将軍と合流し、蓋の外に、楔を創り、城壁の矢が届かぬところで、左右から挟撃する。行くぞ!」
志文を先頭とした一団は、敵軍がひしめき、鉄と血が混じり合う平原の中央部へと、横殴りの嵐のように突っ込んだ。
「邪魔だッ! どけェ!!」
志文の薙刀が、立ち塞がる魯国軍の兵士を兜ごと断ち割る。
右には朱炎が、舞うような双剣の捌きで、敵の頸動脈や関節を正確に突き、瞬時に無力化していく。
左には白麗が、敵の密集陣を押し広げていた。
そして志文のすぐ傍らでは、夜叉が双剣を閃かせていた。
一切の無駄なく、流れるような円運動の中で敵の命を摘み取っていく。
「杜箭将軍の旗が見えた! 踏ん張れッ! 突っ切るのだ!!」
志文の鼓舞が、混乱と絶望の中にある杜箭軍へと届く。
「志文の救援だ。立て直すぞ。踏ん張るのだッ!」
敵の堅陣を横から食い破り、志文の一団が右翼へと到達しようとしていた。
要塞「封心」の高くそびえる城壁の上。
そこから、眼下で繰り広げられる地獄の絵巻を、冷徹な瞳で見下ろす一人の男がいた。
男は、激震する平原の中で、一際鮮やかな軌跡を描いて戦場を強引に横断する志文の姿に、薄い唇を冷酷に歪めた。
「……あれが、伯志文か」 男の声は低く、周囲の将校たちに凍りつくような緊張感を与えていた。
「哀れだな。貴様を葬るためだけに、いや、魯国軍のすべてが動いているのだ。この盤面から、易々と出られると思うなよ……」
男が手を軽く挙げると、巨大な法螺貝が、腹に響くような音を鳴り響かせた。
それは、「第二の策」の合図であった。
「伯志文……貴様の死こそが、この戦の真の終わりなのだからな」
志文の行く手には、さらなる厚い鉄の壁が立ち塞がろうとしていた。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、「第二の罠」です!!
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そっと一言:「城壁の男が林業と衛射を名指しで評価しましたが、実は魯国の諜報網にはすでに志文軍の主要な将たちのリストが回っているんです。志文を葬るために国を挙げて準備してきた魯国の執念……恐ろしいですね……今後ともよろしくお願いいたします~」
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